アトピー性皮膚炎に伴うそう痒治療薬ミチーガなど4製品の承認了承 薬食審・第二部会
公開日時 2022/03/03 23:00
厚生労働省の薬食審医薬品第二部会は3月3日、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒治療薬・ミチーガ皮下注用(一般名:ネモリズマブ、マルホ)や、遺伝性血管性浮腫(HAE)の急性発作抑制薬・タクザイロ皮下注(ラナデルマブ、武田薬品)など4製品の承認を了承した。
2月17日の部会開催案内時には、審議議題に含まれていた重症喘息治療薬・テゼスパイア皮下注(テゼペルマブ、アストラゼネカ)の審議は行われなかった。理由について同省は「議題を公表した後に企業から新たな情報が提供され、その内容を詳細に確認する必要があったことから、この部会への上程を見送ることとした」と説明した。
報告品目の4製品に異論は出ず、承認が了承された。この中には、抗PD-1抗体・オプジーボの尿路上皮がん術後補助療法の追加や、HER2陽性結腸・直腸がんに対する抗HER2抗体・パージェタおよびハーセプチンの併用療法の追加などが含まれる。
この日の部会を通過した全製品が3月中に正式承認される見通し。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ミチーガ皮下注用60mgシリンジ(ネモリズマブ(遺伝子組換え)、マルホ):「アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
そう痒誘発性サイトカインのIL-31とそのレセプターの結合を競合的に阻害するヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体。アトピー性皮膚炎(AD) に伴うそう痒に対する初の生物製剤となる。
用法・用量は「通常、成人及び13 歳以上の小児には1 回60 mgを4 週間の間隔で皮下投与する」。
▽タクザイロ皮下注300mgシリンジ(ラナデルマブ(遺伝子組換え)、武田薬品):「遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
完全ヒト型抗ヒト血漿カリクレインモノクローナル抗体。HAEは腹部、顔面、足、性器、手、喉など、身体のさまざまな場所に繰り返し浮腫発作を引き起こす希少な遺伝性疾患で、国内患者数は約2500 人、実際にHAE と診断されている患者は約450 人と推定されている。
武田薬品は21年3月の承認申請時のニュースリリースで、プレフィルドシリンジ(充填済み注射器)として日本の患者に供給する予定であり、医療専門家によるトレーニングを受けたうえで、患者自身または介護者による投与も可能としている。
用法・用量は「通常、成人及び12 歳以上の小児には、2週間に1 回300 mg を皮下注射する。なお、症状安定後には、4 週間に1 回300mg を皮下注射することができる」。
既に欧米で発売しており、武田薬品の決算資料によると、20年度には867億円を売り上げ、21年度はさらに20~30%の伸長を予想している。
▽ユニタルク胸膜腔内注入用懸濁剤4g(タルク、ノーベルファーマ):「外科手術による治療が困難な続発性難治性気胸」を効能・効果とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
「悪性胸水の再貯留抑制」に続く効能追加。粒子径を調整し、小さい粒子径を除いた滅菌調整タルクであり、胸膜腔内に注入されると胸膜の上皮を構成する中皮細胞を傷害し、細胞の剥離、離脱による炎症状態を惹起させ、胸膜を癒着させると推測されている。
国内の続発性難治性気胸患者数は、2017年度のDPC の情報からは2277人、厚労省17年度患者調査からは252人と推定されている。
▽セムブリックス錠20mg、同40mg(アシミニブ塩酸塩、ノバルティスファーマ):「前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
STAMP(ABLミリストイルポケット)阻害剤。BCR-ABL 融合遺伝子により産生され、CML(慢性骨髄性白血病) 細胞の増殖等に関与している融合タンパク(BCR-ABL)のABL に結合し、ABL のリン酸化を阻害すること等により、BCR-ABL 融合遺伝子を有するCML 細胞の増殖を抑制すると考えられている。
2剤以上のチロシンキナーゼ阻害剤(分子標的薬)による前治療に抵抗性又は不耐容の患者に使用する。用法・用量は「通常、成人には1 回40 mg を1 日2 回、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同120mg、同240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「尿路上皮がんにおける術後補助療法」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間はなし。
ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。根治切除後の再発リスクが高い筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法として、オプジーボ単剤療法をプラセボと比較した国際共同第3相CheckMate-274(ONO-4538-33)試験結果に基づき、有効性・安全性が評価された。国内で同効能を持つがん免疫療法薬はない。
▽パージェタ点滴静注420mg/14mL(ペルツズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬)
▽ハーセプチン注射用60、同150(トラスツズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬)
:いずれも「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間はなし。
抗HER2ヒト化モノクローナル抗体。HER2 レセプターの異なる部位を標的とし、単剤で投与するよりもHERシグナル伝達系をより広範囲に遮断する。2017年患者調査(厚労省)によると、国内の結腸・直腸がん患者数は28万8000人と報告され、結腸・直腸がんに占めるHER2 陽性の割合は5%未満と報告されていることから、HER2 陽性の結腸・直腸がん患者数は、約1万4400人未満と推測される。
▽フィブリノゲンHT静注用1g「JB」(乾燥人フィブリノゲン、日本血液製剤機構):「産科危機的出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲンの補充」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。再審査期間はなし。
フィブリノゲンは血液凝固因子の1 つであり、出血の際にトロンビンの作用を受けてフィブリンとなることで止血機能を発揮する。国内で製造販売される唯一のフィブリノゲン製剤。21年9月の第二部会において事前評価済みで、保険適用になっている。