多発性骨髄腫で初のADC・ブーレンレップなど新薬2製品が承認へ 薬事審第二部会が了承
公開日時 2025/04/22 04:50
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は4月21日、グラクソ・スミスクライン(GSK)の再発・難治性多発性骨髄腫(MM)に対する国内初の抗体薬物複合体(ADC)・ブーレンレップ点滴静注用(一般名:ベランタマブ マホドチン)など新薬2製品の承認の可否を審議し、承認を了承した。この中には、モデルナ・ジャパンのRSVワクチン・エムレスビア筋注が含まれ、新型コロナ以外の疾患に対する国内初のmRNAワクチンとなる。
報告品目は、ノバルティス ファーマのセムブリックス錠の慢性骨髄性白血病(CML)1次治療の追加など5製品。いずれも5月中の正式承認が見込まれる。ブーレンレップの薬価収載は7月になる見通し。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽エムレスビア筋注シリンジ(RSウイルスの融合前安定化F糖タンパク質をコードするmRNA、モデルナ・ジャパン):「RSウイルスによる感染症の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
mRNAワクチン。モデルナにとっては、新型コロナに対するmRNAワクチン・スパイクバックスに続く2つ目の承認取得製品となる。
エムレスビアの用法・用量は「60歳以上の者に、1回0.5mLを筋肉内に接種する」。なお、国内では、RSVワクチンとして、既にGSKのアレックスビー、ファイザーのアブリスボが承認されており、いずれも60歳以上の者に対する適応を持っている。
海外でエムレスビアは、24年12月時点で、60歳以上の成人を接種対象とした適応について、米国及び欧州を含む5つの国又は地域において承認されている。
▽ブーレンレップ点滴静注用100mg(ベランタマブマホドチン(遺伝子組換え)、グラクソ・スミスクライン):「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
抗体薬物複合体(ADC)。非切断型のリンカーを介して、抗BCMA抗体に細胞傷害性薬剤であるアウリスタチンFが結合している。再発・難治性の多発性骨髄腫(MM)に対する国内初のADCとなる。
承認申請は、2次治療以降におけるブーレンレップ併用療法を抗CD38抗体・ダラツムマブ併用療法と比較した第3相DREAMM-7試験(ともに併用薬はボルテゾミブとデキサメタゾン)及び、ボルテゾミブ併用療法と比較した第3相DREAMM-8試験(ともに併用薬はポマリドミドとデキサメタゾン)の結果に基づく。
この結果、ブーレンレップの用法・用量は「ボルテゾミブ及びデキサメタゾン併用投与」と「ポマリドミド及びデキサメタゾン併用投与」の2通りが設定されている。
GSKは24年12月の第66回米国血液学会で、DREAMM-7試験における中間解析の結果、全生存期間(OS)について統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長効果が得られたことを発表している。
海外では、25年2月時点において、再発又は難治性の多発性骨髄腫に対する効能・効果で承認されている国又は地域はない。欧EMA、米FDAで審査中。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽タグリッソ錠40mg、同錠80mg(オシメルチニブメシル酸塩、アストラゼネカ):「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法」を効能・効果とする新効能医薬品。
第3世代EGFR阻害剤。承認申請は、白金製剤ベースの根治的化学放射線療法後に病勢が進行しなかった、切除不能なステージ3のEGFR変異陽性患者を対象とした国際共同第3相LAURA試験の結果に基づく。
海外では、25年1月時点において、EGFR変異陽性の切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法に係る効能・効果で6つの国又は地域で承認されている。
▽スパイクバックス筋注(SARS-CoV-2のスパイクタンパク質をコードするmRNA、モデルナ・ジャパン):「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。再審査期間は残余(令和11年5月20日まで)。
mRNAワクチン。生後6カ月以上4歳以下の者に対する追加免疫として「1回0.25mLを筋肉内に接種する」との用量を追加する。
▽キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」を効能・効果とする新効能医薬品。
抗PD-1抗体。承認申請は、海外第2/3相KEYNOTE-483試験および国内第1b相KEYNOTE-A17試験の結果に基づく。1次治療において白金製剤とペメトレキセドと併用する。
悪性中皮腫は胸部、腹部、心臓、精巣など体の特定の部位を覆う膜に発生するがん。肺あるいは胸腔を覆う膜に発生する悪性胸膜中皮腫は、悪性中皮腫の中で最も多く、80~90%弱を占める。悪性中皮腫発生の主な原因としてはアスベスト(石綿)の曝露が知られている。
なお、国内で同じ抗PD-1抗体のオプジーボは、「切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」および「悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)」の適応を持っている。
海外でキイトルーダは、25年1月時点で、切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に係る効能・効果で5つの国又は地域で承認されている。
▽セムブリックス錠20mg、同錠40mg(アシミニブ塩酸塩、ノバルティスファーマ):「慢性骨髄性白血病」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(令和14年3月27日まで)。
ABLミリストイルポケット結合型阻害剤。現在の効能・効果は「前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病(CML)」で、3次治療での使用となっている。今回、未治療の患者に1次治療から使用できるようになる。
今回、セムブリックスの用法・用量は「通常、成人には1回80(現在40)mgを1日1(現在2)回、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」に変更される。
現在、国内では、CMLの1次治療でイマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブのいずれかが選択されている。
海外でセムブリックスは、25年1月時点において、初発の慢性骨髄性白血病に係る効能・効果で8つの国又は地域で承認されている。
▽ライブリバント点滴静注350mg(アミバンタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余(令和14年9月23日まで)。
EGFR及びMETを標的とする二重特異性抗体。EGFR遺伝子変異陽性の患者に関して既治療患者に対する用量を追加する。承認申請は第3相MARIPOSA-2試験の結果に基づく。同試験では、オシメルチニブによる治療中又は治療後に病勢進行した局所進行性又は転移性のEGFR変異陽性患者を対象に、化学療法(カルボプラチン、ペメトレキセド)と併用した。
ライブリバントにとって、「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(化学療法と併用での1次治療)」、「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(ラゼルチニブと併用での1次治療)」に続く3つ目の適応となる。