ミクス編集部が製薬企業70社の国内フェーズ2以降の開発品を集計したところ、2021年12月15日時点で申請中のプロジェクト数(以下、品目数)は97品目となった。内訳は新有効成分含有医薬品が39品目、適応追加等が58品目だった。日本の通常審査品目の審査期間は中央値で約10カ月のため、現在申請中の品目の多くが22年中に承認されるとみられる。
ミクスは年2回、製薬各社の公表資料やアンケート調査結果、厚労省資料をもとに国内P2以降の開発品を集計している。最新の「
ミクス パイプラインリスト22年1月版」は、申請品目は21年12月15日までの情報を収集し、申請品以外は21年11月末までの情報をもとにした。
国内P2以降の疾患別の開発品数は756品目あった(共同開発品は1品目とカウント)。P3以降の後期開発品は498品目、うち申請中は97品目だった。近年は、がん、免疫系疾患、精神・神経系疾患の開発品が多くを占める傾向が続いている。
申請品のうち最多はがん領域の23品目で、新有効成分は7品目、適応追加等は16品目あった。新有効成分は、▽抵抗性/不耐容の慢性骨髄性白血病を対象疾患とするアロステリック阻害薬
アシミニブ(ノバルティスファーマ)、▽KRAS G12C変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)を対象疾患とするKRAS G12C阻害薬
ソトラシブ(アムジェン)、▽再発・難治性の末梢性T細胞リンパ腫を対象疾患とする、抗腫瘍活性を有する有機ヒ素化合物
ダリナパルシン(ソレイジア・ファーマ)、▽消化管間質腫瘍を対象疾患とするHSP90阻害薬
ピミテスピブ(大鵬薬品)、▽多発性骨髄腫を対象疾患とするCAR-T細胞製品
イデカブタゲン ビクルユーセル(ブリストル マイヤーズ スクイブ)、▽多発性骨髄腫を対象疾患とするCAR-T細胞製品
ciltacabtagene autoleucel(ヤンセンファーマ)、▽抗がん剤投与に伴う悪心・嘔吐を対象疾患とするNK1受容体アンタゴニストの
ホスネツピタント(大鵬薬品)――となる。
このうち、ソトラシブは初のKRAS G12C変異を有するNSCLC治療薬。NSCLCのドライバー変異のひとつのKRAS G12Cを標的とした薬剤はなく、現在はドセタキセルなどが使用されるが転帰は不良だ。ソトラシブは第1/2臨床試験でKRAS G12C変異のある進行NSCLC患者の全生存期間中央値で12.5カ月を示すなどし、申請に至った。既に薬食審の医薬品部会を通過しており、1月中に承認されるとみられる。
適応追加等の16の申請品のうち10はペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブの免疫療法薬関係だった。このうちペムブロリズマブは子宮頸がんの適応追加を申請中で、承認されれば子宮頸がんに対する初の免疫療法として関心を集めそうだ。臨床試験では標準治療に同剤を上乗せすることで、全生存期間と無増悪生存期間で有意な改善が確認された。予防ワクチンの積極的勧奨が4月から再開することもあり、22年は子宮頸がんの克服に日本も動き出す年になる。
◎抗精神病薬の副作用「遅発性ジスキネジア」の新薬も
がん以外にも注目の申請品は多い。そのひとつが遅発性ジスキネジアを対象疾患とする小胞モノアミントランスポーター2阻害薬
バルベナジンで、田辺三菱製薬が21年4月に申請した。この疾患は抗精神病薬などを長期に服用することで起こる不随意運動で、症状は舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせるなど顔面に主に現れ、四肢や体幹部でも認められる。嚥下障害などを起こして重篤な状態になる場合もある。バルベナジンで遅発性ジスキネジアをコントールし、患者QOLの改善や抗精神病薬の継続、これによる患者の社会参加の後押しが期待される。
眼科領域初のバイスペシフィック抗体
ファリシマブも注目の新薬のひとつだ。中外製薬が21年6月に、視力低下や失明につながる糖尿病黄斑浮腫と加齢黄斑変性を対象疾患に申請した。視力低下の原因のひとつのアンジオポエチン-2と血管内皮増殖因子-Aは、血管構造の不安定化により、漏出を引き起こす血管を新たに形成し、炎症を起こす。ファリシマブはこの2つの経路を標的とし、別々に遮断して血管を安定化させる。この作用で患者の視力をより良く、より長く保つとされる。最長16週の投与間隔で用いるため、患者・家族の通院負担の軽減も見込まれる。
このほか、治療薬がない難治性慢性咳嗽を対象疾患とするP2X3受容体拮抗薬
ゲーファピキサント(MSD)も話題になりそう。薬食審医薬品部会を通過しており、1月承認、4月薬価収載が有力だ。糖尿病や心筋梗塞などに加え、がんや認知症とも関連が指摘される「肥満症」に対し、GLP-1受容体作動薬
セマグルチド週1回皮下注製剤(ノボ ノルディスクファーマ)も申請中で、効果や投与対象に関心が集まりそうだ。
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