薬食審・第一部会 5製品の承認了承 抗血小板薬エフィエントの虚血性脳血管障害後の再発抑制の効能追加も
公開日時 2021/11/26 19:30
厚生労働省の薬食審医薬品第一部会は11月26日、5製品の承認を了承した。11月5日の同部会で継続審議となり、再審議された第一三共の抗血小板薬エフィエント錠の虚血性脳血管障害後の再発抑制の効能追加も了承された。
◎エフィエント 投与対象を大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞を伴う虚血性脳血管障害後に限定
厚労省によると、エフィエントの審議は、抗血小板薬としてクロピドグレルやアスピリンなどがあるなかで、投与対象となる患者像が論点の一つとなっていた。出血リスクを伴うことから、いかに医療現場に情報提供するかも論点となっていた。
今回の部会で、投与対象を大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞を伴う虚血性脳血管障害後に限定し、脳梗塞発症リスクが高い場合に限った治療選択肢にすることを説明した。臨床試験で検証できたことと、できなかったことなどをしっかり医療現場に提供すると説明し、委員の了承が得られたとしている。
◎陽進堂のダルベポエチンアルファBS 製造上の問題発覚で議題から取り下げ
このほか、11月12日時点で同部会の議題にあがっていた陽進堂の腎性貧血薬ダルベポエチンアルファBS注は、製造上の問題が発覚したとして議題から取り下げられた。製造上の問題の詳細は不明。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽エフィエント錠2.5mg、同3.75mg(プラスグレル塩酸塩、第一三共):「虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。
新効能の用法・用量は「通常、成人にはプラスグレルとして3.75mgを1日1回経口投与する」。海外では21年7月現在、虚血性脳血管障害に関連する効能・効果で承認されている国・地域はない。
▽ラピフォートワイプ2.5%(グリコピロニウムトシル酸塩水和物、マルホ):「原発性腋窩多汗症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
同剤はグリコピロニウム臭化物の塩違いで、ムスカリン受容体に親和性を示し、抗コリン作用を有する。用法・用量は、「1日1回、1包に封入されている不織布1枚を用いて薬液を両腋窩に塗布する」。ワイプ剤は初めて。原発性腋窩多汗症治療薬にはエクロックゲルがあるが、こちらはゲル剤となる。重度の原発性腋窩多汗症に対してはボトックス筋注がある。
海外では21年9月現在、ラピフォートワイプと同一の有効成分を含有する医薬品が米国で承認されているが、同一処方の医薬品は海外では承認されていない。
▽エヌジェンラ皮下注24mgペン、同皮下注60mgペン(ソムアトロゴン(遺伝子組換え)、ファイザー):「骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
ヒト成長ホルモンにヒト絨毛性ゴナドトロピンに由来するアミノ酸配列を付加することにより、生体内半減期を延長した新規の長時間作用型ヒト成長ホルモン製剤。1週間に1回の皮下投与で用いる。
▽ピヴラッツ点滴静注液150mg(クラゾセンタンナトリウム、イドルシアファーマシューティカルズジャパン):「脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮、及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
エンドセリン受容体拮抗薬。エンドセリンA受容体を阻害することで、くも膜下出血により増加したエンドセリン-1との関連が示唆される脳血管収縮を抑制し、脳血管攣縮の発症を抑制すると考えられている。同剤は、くも膜下出血術後早期に投与を開始し、くも膜下出血発症15日目まで投与して用いる。
動脈瘤性くも膜下出血(aSAH)は、くも膜下腔に生じる生命を脅かす出血状態のことで、動脈瘤の破裂で起こる。出血を止めるためには緊急の外科的修復(血管内コイル塞栓術または顕微鏡下クリッピング術)が必要となる。
出血及び周辺の血管内皮からの血管収縮物質のエンドセリンの放出は、aSAH後4~14日の間に生じる脳血管攣縮を引き起こす。これにより脳への血流が低下し、患者の約3分の1は神経学的症状の悪化に至る。aSAHの有病率は世界で10万人あたり6~9人と推定され、日本では世界に比べておよそ2倍の発症率とされる。
海外では21年8月時点で、承認されている国・地域はない。
▽ウィフガート点滴静注400mg(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)、アルジェニクスジャパン):「全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
疾患を引き起こす原因である免疫グロブリンG(IgG)抗体を減らし、IgGのリサイクルを阻害するよう設計された抗体フラグメント医薬品。IgG抗体の分解を妨げる上で中心的な役割を担っている胎児性Fc受容体(FcRn)に結合し、FcRnを遮断することで、IgG抗体値が減少する。このため、疾患を引き起こす IgG抗体によって生じるいくつかの自己免疫疾患に対する論理的な治療法となる可能性がある。
重症筋無力症は、IgG抗体が神経・筋肉間の情報伝達を妨害し、生命を脅かす可能性のある消耗性の筋力低下を引き起こす希少慢性自己免疫疾患。患者の85%以上が18か月以内に全身型重症筋無力症に進行し、症状が全身の筋肉に及んで極度の疲労をきたし、話したり、飲み込んだり、動いたりすることが困難となる。呼吸を司る筋肉に影響を及ぼすこともある。
同剤は、1回10mg/kgを1週間間隔で4回1時間かけて点滴静注し、これを1サイクルとして投与を繰り返す。海外では21年9月現在、承認されている国・地域はない。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽レルミナ錠40mg(レルゴリクス、あすか製薬):「子宮内膜症に基づく疼痛の改善」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余期間(2027年1月7日まで)。
GnRHアンタゴニスト。現在は子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善で承認されている。新効能の用法・用量は、既承認の効能の用法・用量と同じ。海外では子宮内膜症に係る効能・効果で承認されている国・地域はない。