厚労省 新薬11製品を承認 尿路上皮がん治療薬パドセブ、アトピー適応のPDE4阻害薬モイゼルトなど
公開日時 2021/09/28 04:53
厚生労働省は9月27日、新有効成分含有医薬品11製品を承認した。がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がんに使用する抗体薬物複合体(ADC)で、優先審査の対象になったパドセブ点滴静注用(一般名:エンホルツマブ ベドチン、アステラス製薬)や、PDE4阻害薬として初のアトピー性皮膚炎治療薬となったモイゼルト軟膏(ジファミラスト、大塚製薬)が含まれる。
一方で、FXa阻害薬の抗凝固作用を中和するための治療薬・オンデキサ静注用200mg(アンデキサネット アルファ(遺伝子組換え、アレクシオンファーマ)は今回、承認されなかった。
厚労省によると、同剤は8月30日の薬食審・医薬品第一部会で承認が了承されたものの、その後、申請企業のアレクシオンファーマから「臨床試験の一部データの取り扱いが不適切だった可能性がある」との報告があり、PMDAで事実関係を確認中となった。同剤は現在、承認が留保されている状況で、改めて同部会で該当データなどが確認された後、正式承認の手続きに進む。
承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。薬効分類別に記載。
▽ビンマックカプセル61mg(タファミジス、ファイザー):「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間はビンダケルカプセル20mgのATTR-CMに対する残余(2029年3月25日まで)。薬効分類129。
1日1回1カプセルの経口投与で用いる。既承認のトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬ビンダケルカプセル(一般名:タファミジスメグルミン)は1日1回4カプセル服用する必要がある。患者の負担経験の観点から、1カプセルの服用で済むビンマックが開発された。
▽モイゼルト軟膏0.3%、同1%(ジファミラスト、大塚製薬):「アトピー性皮膚炎」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類269。
ホスホジエステラーゼIV(PDE4)阻害薬。PDE4阻害薬として初のアトピー性皮膚炎の適応を持つ薬剤となった。成人、小児ともに1日2回、適量を患部に塗布して用いる。
PDE4は免疫細胞に広く分布しており、アトピー性皮膚炎患者の末梢白血球ではPDE活性が亢進し、細胞内cAMP濃度が減少していることが報告されていることから、PDE4はアトピー性皮膚炎などの慢性炎症性疾患の病態に関与すると考えられている。同剤によりPDE4を阻害することで、細胞の炎症反応を抑制し、アトピー性皮膚炎に対し効果を発揮すると考えられる。
▽メグルダーゼ静注用1000(グルカルピダーゼ(遺伝子組み換え)、大原薬品):「メトトレキサート・ロイコボリン救援療法によるメトトレキサート排泄遅延時の解毒」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類392。
メトトレキサート(MTX) のカルボキシ末端のグルタミン酸残基を加水分解する遺伝子組換えタンパクであり、MTXを加水分解することにより、血中の MTX 濃度を低下させると考えられている。
MTX・ロイコボリン(LV)救援療法の適応となる疾患((1)急性リンパ芽球性白血病(2)骨肉腫などの肉腫(3)マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫などの悪性リンパ腫(4)髄芽腫などの脳腫瘍―など)のうち、MTX排泄遅延が認められた患者が投与対象となる。
▽ネクスビアザイム点滴静注用100mg(アバルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組み換え)、サノフィ):「ポンペ病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類395。
酵素補充療法製剤。ポンペ病がもたらす重大な症状である呼吸機能、筋力・身体機能の低下を阻止することが期待されている。ポンペ病は、ライソゾーム酵素のひとつである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の欠損または活性低下が原因で生じ、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積することで生じる疾患。
▽サフネロー点滴静注300mg(アニフロルマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類399。
I型インターフェロン(IFN)α受容体のサブユニット1に結合するヒトIgG1κモノクローナル抗体で、Ⅰ型IFNシグナル伝達を阻害する。全身性エリテマトーデス(SLE)患者の大部分ではⅠ型IFNシグナル伝達が制御されず、Ⅰ型IFN誘導遺伝子発現(IFNGS)の亢進が認められ、その亢進はSLEの疾患活動性及び重症度と相関するとされている。
▽タブネオスカプセル10mg(アバコパン、キッセイ薬品):「顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類399。
経口投与可能な低分子の選択的補体C5a受容体拮抗薬であり、C5aの作用を阻害する。補体カスケードを標的とした初の顕微鏡的多発血管炎(MPA)及び多発血管炎性肉芽腫症(GPA)治療薬となる。
▽レットヴィモカプセル40mg、同80mg(セルペルカチニブ、日本イーライリリー):「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
初のRETキナーゼ阻害薬。RET融合遺伝子又はRET遺伝子変異は、RETを介したシグナル伝達経路を亢進させることにより、腫瘍の生存や増殖に大きく寄与することが報告されている。同剤はRETのキナーゼ活性を阻害し、RETを介したシグナル伝達を阻害することで腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。
RET融合遺伝子陽性NSCLCの患者数は約4390人と推測されている。同剤はコンパニオン診断薬を使用して用いる。
▽ライアットMIBG-I131静注(3-ヨードベンジルグアニジン(131I)、富士フイルム富山化学):「MIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。薬効429。
副腎髄質ホルモンのノルアドレナリン(NA)に類似した構造を有する 3-ヨードベンジルグアニジン(MIBG)のヨウ素原子を放射性同位体(131I)に置換した 131I-MIBG を有効成分とする放射性医薬品。主にNAトランスポーターを介した再摂取機構(uptake-1)により腫瘍細胞内に取り込まれ、131I から放出されるβ線により細胞を傷害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。
▽パドセブ点滴静注30mg(エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組み換え)、アステラス製薬):「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。優先審査品目。薬効分類4291。
ADCであり、ネクチン-4 に対する IgG1サブクラスのヒト型モノクローナル抗体と微小管重合阻害作用を有するモノメチルアウリスタチンE(MMAE)が、リンカーを介して共有結合している。腫瘍細胞の細胞膜上に発現するネクチン-4 に結合し、細胞内に取り込まれた後にプロテアーゼによりリンカーが加水分解され、遊離した MMAE がアポトーシスを誘導することなどにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。
用法・用量は「通常、成人には1回1.25mg/kg(体重)を30 分以上かけて点滴静注し、週1回投与を3週連続し、4週目は休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。ただし、1回量として125 mgを超えないこと。なお、患者の状態により適宜減量する」。
なお、1次治療における有効性及び安全性は確立していない。
▽サイバインコ錠50mg、同錠100mg、同錠200mg(アブロシチニブ、ファイザー):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類449。
ヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリー(JAK1、JAK2、JAK3及びTyk2)のうち、主にJAK1を阻害する低分子化合物。アトピー性皮膚炎(AD)の適応を持つ経口JAK阻害薬としては、オルミエント錠(バリシチニブ)、リンヴォック錠(ウパダシチニブ水和物)に続く3剤目だが、12 歳以上の小児適応を有するのは、リンヴォックに続き2剤目。
AD適応に関して、サイバインコの用法・用量は「通常、成人及び12歳以上の小児には、100mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて200 mgを1日1回経口投与することができる」。
対して、リンヴォックの用法・用量は「通常、成人には15mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて30mgを1日1回投与することができる。通常、12歳以上かつ体重30kg以上の小児には15mgを1日1回経口投与する」となっている。
▽ステルイズ水性懸濁筋注60万単位シリンジ、同240万単位シリンジ(ベンジルペニシリンベンザチン水和物、ファイザー):「梅毒(神経梅毒を除く)」を効能・効果とする新投与経路医薬品。適応菌種は梅毒トレポネーマ。再審査期間はなし。未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。薬効分類6111。
ペニシリン製剤。細菌細胞壁のペプチドグリカンの合成を阻害することで抗菌活性を示すと考えられている。有効成分のベンジルペニシリンベンザチン水和物は溶解性が低く、投与部位から緩徐に放出される特徴から、同剤は1回の筋肉内投与で有効濃度が持続する。このため成人及び13歳以上の小児の早期梅毒に対しては、ベンジルペニシリンとして240万単位を単回、筋肉内注射して用いる。
日本感染症教育研究会から同剤の筋注製剤の成人及び小児における梅毒(神経梅毒を除く)に対する使用について開発要望が提出され、厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議の評価を経て、開発要請がなされた。