厚労省 流通改善ガイドライン改訂案でパブコメ開始 入札談合問題の顛末明記、川上・川下で新設項目多数
公開日時 2021/09/27 04:52
厚生労働省医政局経済課流通指導室は9月24日、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の改訂案を公表し、パブリックコメントを求めた。改訂案では、医薬品卸・製薬企業間の“川上取引”について、「割戻し・アローアンスのうち仕切価に反映可能なものは仕切価へ反映した上で、整理・縮小を行うこと」と明記した。一方、医薬品卸と医療機関・薬局間の“川下取引”については、「仕切価に安定供給に必要なコストを踏まえた適切な価格設定を行うとともに、その根拠と妥当性を説明するなどにより、価格交渉を進めること」とした。後発品などで相次ぐ自主回収への対応にも触れ、経費負担について「当事者間で十分協議する」ことを盛り込んだ。改訂案施行は22年1月1日。パブコメの受付締切りは10月8日としている。
改訂案では、「策定の経緯及び目的等」の項目に「改訂について」を新設し、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)での医薬品購入をめぐる入札談合問題について、独禁法違反で当該卸売業者が有罪判決を受けたことをあえて記述した。さらに一部の製薬企業のコンプライアンス違反等の事情で「医薬品の需給が逼迫している」との実態を明記、さらに21年度から実施した薬価中間年改定などをあげ、「医療用医薬品の取引環境に大きな変化が生じ、⾧年の商慣行の改善に向けた取り組みの必要性が増してきていることを踏まえた改訂である」との基本的な考えを改訂案に刻んだ。
◎割戻し・アローアンス 反映可能なものは仕切価に反映「整理・縮小」を
改訂案では川上取引について、「割戻し(リベート)は卸機能の適切な評価に基づくものとし、割戻し・アローアンスのうち仕切価に反映可能なものについては仕切価へ反映した上で、整理・縮小を行うとともに、契約により運用基準を明確化すること」との表現に改める。さらに、「仕切価・割戻し・アローアンスについては、メーカーと卸売業者との間で十分に協議の上、なるべく早期に設定を行うこと」との文言を新たに追記した。
◎少なくとも前年度より単品単価交渉の範囲を拡大すること
一方で川下取引については、「早期妥結と単品単価契約の推進」との項目を「早期妥結と単品単価交渉に基づく単品単価契約の推進」に改めた。その上で、原則として全ての品目について単品単価契約とするとし、「契約に当たっては、単品ごとの価格を明示した覚書を利用する等」により行う。さらに、「少なくとも前年度より単品単価交渉の範囲を拡大すること」との文言も追記した。
◎「不当廉売の禁止」を項目に明記
医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉に加えて「不当廉売の禁止」を項目に記した。安定供給に必要な流通コストを考慮しない値引き交渉を行うことは、一次売差マイナスの一因となり、医薬品の安定供給や卸売業者の経営に影響を及ぼしかねないとの見解を改訂案に盛り込んでいる。また、「卸売業者は、個々の医薬品の仕切価に安定供給に必要なコストを踏まえた適切な価格設定を行うとともに、保険医療機関・保険薬局にその根拠と妥当性を説明するなどにより、価格交渉を進める」と新たに追記したほか、「正当な理由がないのに、医薬品をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することにより、他の卸売業者の事業活動を困難にさせるおそれがある場合には、独占禁止法上の不当廉売に該当する可能性があることに留意する」との文言も新たに加えた。
◎回収等に伴い生じる経費負担は「当事者間で十分協議」
流通当事者間で共通して留意する事項として「回収の扱い」が新たに項目として新設された。具体的には、製薬メーカーに対しては、自主回収など供給不足が発生した場合の対応として、「保険医療機関・保険薬局、卸売業者及び関係団体に対して早急に必要な情報提供を行う」としたほか、「回収等に伴い生じる経費負担については、当事者間で十分に協議する」との方針を明示した。
医薬品の安定供給についても新たに盛り込まれた。サプライチェーンの安定性確保のため、過剰な在庫確保や不必要な急配を控えるとともに、実際に供給不安が生じた際には、「医療用医薬品の供給不足が生じる場合の対応スキーム」を実施するなど、安定供給の確保のための取組を行う。また、安定確保医薬品については、医療上の重要性を踏まえ、特に安定供給の確保に配慮するとの見解を示した。
◎モデル契約書の改訂 契約不適合の条件に係る条項を追加
このほか「モデル契約書の改訂」も行った。民法改正(20年4月施行)を踏まえた見直しで、「瑕疵担保責任」から「契約不適合担保責任」への改正として、契約不適合の条件に係る条項を追加する。連帯保証人に関する改正では、連帯保証人への情報提供義務に係る条項を追加する。取引実態を踏まえた見直しでは、代金の支払いに係る条項について、現在の一般的な決済手段等を踏まえた修正を行うとした。このほか秘密保持、反社会的勢力の排除に係る条項を追加した。