国内の希少・難治性疾患 新薬要望率1位はシェーグレン症候群 医師2万人調査
公開日時 2021/07/14 04:52
医師2万人に84の希少・難治性疾患を挙げて「新薬の登場を望むか」を聞いたところ、新薬要望率1位は自己免疫疾患のシェーグレン症候群となった。医師の2.96%が新薬を求めた。2位も自己免疫疾患の全身性エリテマトーデス(SLE)で、医師の2.39%が新薬の登場を期待した。この2疾患が要望率2%以上の疾患だった。次に新薬要望率が高かった上位10疾患について、当該疾患の患者を1人以上診察している「診療医師」に限定して新薬要望率を算出すると、1位はミトコンドリア病(診療医師数327人、新薬要望率58.4%)、2位は進行性核上性麻痺(同674人、50.9%)――となった。診察医師の過半数が新薬を要望した希少・難治性疾患はこの2疾患だった。
この調査・分析は、ヘルスケア領域専門の調査会社である社会情報サービス(通称SSRI)とエムスリーが実施したもの。両社は毎年2万人以上の医師の協力を得て、約400疾患の診療の有無や診療患者数を調査した大規模データベース「PatientsMap」をまとめている。2020年度日本版の調査は20年5月20日~8月28日に実施。エムスリーの会員医師のうち2万196人が調査に協力した。
全回答医師による新薬要望率1位のシェーグレン症候群は、主として中年女性に好発する涙腺と唾液腺を標的とする臓器特異的自己免疫疾患で、全身性の臓器病変を伴う全身性の自己免疫疾患でもある。2位のSLEは関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ炎症性の自己免疫結合組織疾患。
診察医師に限定した新薬要望率1位のミトコンドリア病は、全身の細胞の中にあってエネルギーを産生する働きを持つミトコンドリアが体内でうまく機能しないことで発生する遺伝性代謝疾患の総称。ミトコンドリアのはたらきが低下すると、細胞の活動が低下する。例えば脳の神経細胞であれば、見たり、聞いたり、物事を理解したりすることが障害され、心臓の細胞であれば血液を全身に送ることができなくなる。
2位の進行性核上性麻痺は、脳の中の大脳 基底核、脳幹、小脳といった部位の神経細胞が減少し、転びやすくなったり、下方を見ることがしにくい、しゃべりにくい、飲み込みにくいといった症状がみられる疾患。有病率は人口10万人あたり10~20人程度と推測されている。
なお、全回答医師による新薬要望率上位10疾患は、1位シェーグレン症候群、2位SLE、3位ベーチェット病(1.71%)、4位進行性核上性麻痺(1.70%)、5位筋ジストロフィー(1.64%)、6位IgA腎症(1.60%)、7位アミロイドーシス(1.29%)、8位ループス腎炎(1.02%)、9位顕微鏡的多発性血管炎(0.97%)、10位ミトコンドリア病(0.95%)――。
これら10疾患について、それぞれの「診察医師」に限定して新薬要望率を算出すると、1位ミトコンドリア病、2位進行性核上性麻痺、3位筋ジストロフィー(診察医師724人、新薬要望率45.9%)、4位アミロイドーシス(577人、45.1%)、5位ループス腎炎(621人、33.3%)、6位ベーチェット病(1108人、31.2%)、7位顕微鏡的多発性血管炎(645人、30.2%)、8位全身性エリテマトーデス(1679人、28.8%)、9位シェーグレン症候群(2219人、26.9%)、10位IgA腎症(1354人、23.9%)――となった。