FIRM・畠会長 遺伝子治療推進へ海外との連携に力 エコシステム構築でアカデミアとの早期連携目指す
公開日時 2021/07/12 04:50
再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)の畠賢一郎代表理事会長は、遺伝子治療の推進を課題にあげた。研究開発環境の整備に加え、先行する欧米との開発連携を模索するなど、「海外との連携」の重要性を強調した。また、創薬企業だけでなく、物流などを担うサポーティングインダストリーも含めた「エコシステムが重要だ」と述べ、アカデミアとの早期連携を構築する重要性を強調した。このほか、議論がスタートした2022年度薬価制度改革については、「多様性がもたらす価値をベースにした、薬価算定をお願いしたい」と述べ、まずは議論する場の設定を改めて求めた。
畠会長は、今後の活動方針として、「遺伝子治療の推進」や「海外との連携」を柱の一つにあげた。国内ではiPS細胞などの研究は進んでいるが、遺伝子治療は米欧州、中国に遅れをとっている状況にある。実際、遺伝子治療製品の開発品数は米国で251件、欧州で103件、中国で39件と次ぎ、日本は19件にとどまっている(2020年1月時点)。畠会長は、「FIRMとしても海外の成功したモダリティに対して日本でもきちっと対応することが喫緊の課題だ。細胞治療、遺伝子治療さらに言えば、それと海外というキーワードが非常に重要になっている」と述べた。FIRMでは企業のグローバル展開を活用し、欧米との開発連携も模索する。また、アジア再生医療団体連携会議(APCRM)の枠組みも積極的に活用する考えだ。
◎廣瀬副会長「日本発の再生医療等製品を海外へ」
こうしたなかで、海外を見据えて今期から新たに、
廣瀬徹氏(ノバルティスファーマ取締役・グローバル医薬品開発本部長)が副会長に就任した。廣瀬氏は、「我々のような外資系企業は、海外では求められないが日本で追加しなければならに資料やデータがあることを実際に経験している。日本がなかなか治験に入れないこともあり、何とか改善できないか、などの情報共有ができる」と述べた。一方で、もう一つの目標として、「日本発の再生医療等製品を海外に出していく」ことに意欲を見せた。グローバル治験における、日本と海外との運用の違いは、「日本発のグローバル治験を行う際にも課題になるのではないか。そういった時に日本の企業がグローバル治験を行う時に、日本が入れないということも起こり得る。そういったことが、将来的に起こらないよう、貢献できれば」と意欲をみせた。
◎エコシステム構築へ「出口戦略見据えた早期の産学連携を」
また、エコシステム構築の重要性が高まるなかで、「(製品化・実用化など)出口戦略を見据えた早期の産学連携が必要だ」と畠会長は強調した。早期からの連携で生産コストを下げることが想定されると説明。また、デリバリー管理で産業側の果たす役割の重要性を強調。「例えば輸送を適正想定したような製品開発は非常に重要で、まさに産業側の出番ではないか」と述べた。最終製品を見据えた管理プロセスを産業側が行うメリットを強調。企業とアカデミアとの「スクラムということが我が国の強みかもしれない」とも述べた。今後を見据えて、非競争領域での連携の重要性も強調した。
◎22年度薬価制度改革で再生医療等製品は「多様な価値をベースとした算定を」
2022年度薬価制度改革に向けては、改正医薬品医療機器等法(改正薬機法)で再生医療等製品が定義づけられたことを引き合いに、「医薬品、医療機器と違うカテゴリーで議論ができるようになった」と述べ、新たなカテゴリーとして議論する必要性を強調した。医療保険の持続可能性の観点から、高額であることも課題として指摘されることもあるが、「再生医療等製品は、かなり長期間の効果が期待できるものがある。再生医療等製品の価値は多様であるがゆえに考えづらい。多様性がもたらす価値をベースにした、薬価算定をお願いしたい」と強調した。特に、長期にわたりQOLを向上するなどをどう評価するかは、「おそらく再生医療の最大の課題だ」と述べた。こうした議論を行うためにも、「まずは、議論するフレームワークを作っていただきたい」と要望した。