日本ケミファ・山口社長 アルカリ化療法剤で初のがん適応、25年頃の承認申請を期待
公開日時 2021/07/02 04:50
日本ケミファの山口一城社長は7月1日にオンラインで開いた記者懇談会で、アルカリ化療法剤に位置付けられるがん微小環境改善薬「DFP-17729」(開発コード)について、2025年を目途に承認申請し、25~26年頃からの収益貢献を期待していると述べた。末期のすい臓がんを対象に、化学療法との併用効果を検証中。開発に成功すれば、がん治療に用いる初のアルカリ化療法剤となる可能性がある。
DFP-17729はベンチャー企業のDelta-Fly Pharma(本社:徳島県徳島市、以下DFP社)の創製品で、アルカリ化療法剤に強みを持つ日本ケミファとライセンス契約している。開発はDFP社主導で行っており、日本ケミファはアルカリ化療法剤に関するノウハウを提供するなどして開発に加わっている。日本ケミファが国内の独占的な販売・製造権を持つ。
◎酸性となっている腫瘍周囲の環境をアルカリ化
DFP-17729は、がん細胞が増殖するためにがん細胞外に放出する酸性物質により酸性となっている腫瘍周囲の環境をアルカリ化するもの。これにより腫瘍周囲の微小環境を改善する。DFP社は、「アルカリ化で中和することで、転移の抑制や治療の効率化に効果がある」とみており、難治がんのひとつの末期すい臓がんを対象に治験を実施している。
山口社長によると、末期すい臓がんを対象とした第2相臨床試験が22年秋に終了する予定。試験デザインの詳細は非開示としたが、化学療法剤にDFP-17729を併用した群と、化学療法剤単独群で延命効果をみているという。山川富雄常務執行役員(開発企画部担当兼創薬研究所長)はDFP-17729の第1相試験で「副作用はほとんどないと明確に証明されてきている」と説明。「DFP社の考えは、明らかな有意差が出ると期待して、厳しいすい臓がんでの試験をまず実施しているということと理解している」と話した。
山口社長は、第2相試験の結果次第と強調した上で、「2020年半ばに承認申請し、最初の収益貢献は25~26年となる見込み。(試験で)良い手応えが得られれば、かなり長い期間、大きな収益貢献があると期待している」と話した。すい臓がん以外のがん種への展開への期待感も示した。
◎品質問題の臨時社内調査で「問題は認められなかった」
このほか山口社長は、小林化工や日医工の品質問題の発生を受けて実施した臨時社内調査の結果、「問題は認められなかった」との認識を示した。調査は、日本ケミファ子会社の日本薬品工業の3工場で特に、▽原料の取り違えの可能性▽承認書に記載のない作業を行う手順書の存在の有無▽試験検査で異常値が出た時の上長への連絡体制――をチェックしたと説明した。