【速報】武田薬品 アリナミンやベンザなど一般消費者向け子会社の全株式をBlackstoneグループに譲渡
公開日時 2020/08/24 18:28
武田薬品は8月24日、武田コンシューマーヘルスケア(TCHC社)の全株式を、米大手投資ファンドのThe Blackstone Group Inc.と買収目的会社 Oscar A-Coに譲渡すると発表した。TCHC社は武田薬品の連結子会社から除外される。記者会見に臨んだクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOは、「日本のコンシューマーヘルスケア事業の売上比はタケダ全体の約2%に留まっている。武田薬品の本体が医療用医薬品で5つの主要ビジネスエリアにフォーカスしており、このレベルで(コンシューマー事業に)投資することが難しくなってきた」と強調。その上で、「様々な戦略的オプションを考えた結果、(TCHC社は)事業譲渡によって将来の成長に必要な投資を継続できる」と判断したことを明らかにした。なお、譲渡会社はタケダの名前を冠しない。
◎株式譲渡に伴う売却益(税引前)は約1400億円見込む
今回の売却の企業価値は2420億円。武田薬品は本株式譲渡により約1400億円の株式売却益(税引前)を見込む。親会社の所有者に帰属する当期利益に対する増益影響は約1050億円。なお、TCHCの2020年度3月期決算は、売上高608億9700万円、営業利益128億1900万円、当期純利益86億5400万円。
TCHC社は、ビタミンB1製剤であるアリナミンや総合感冒薬であるベンザなどの提供を主事業とするコンシューマーヘルス事業に注力してきた。2017年には同事業の更なる成長を見込み、武田薬品から分社化(100%連結子会社)してTCHC社を設立。ただ、コンシューマーヘルスケア市場における競争が激化するなど、さらに機動的なビジネスモデルを構築することで市場への即応性を高めていくことが必要となっていた。一方で武田薬品はシャイアー社との統合以降、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー、ニューロサイエンスの主要な5つのビジネスエリアにフォーカスし、革新的な医薬品の創出に注力している。なお、Blackstoneは現在のTCHC社の経営陣と従業員の雇用を継続する意向。
◎ウェバー代表取締役社長CEO Blackstoneとのパートナーシップに期待
記者会見に臨んだクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOは、「コンシューマー事業は投資レベルやマーケットの理解など、違うマージンを創出しなければならない」と指摘。シャイアーとの統合を踏まえ、「革新的な医療用医薬品の創出にむけて5つのビジネスエリアにフォーカスしている」としながら、同じレベルでの投資が難しくなってきたとの認識を表明した。その上で、TCHC社については、単独ビジネス、パートナリング、事業譲渡-などの戦略的オプションを検討してきたことを明らかにしながら、将来の成長に投資を継続できるBlackstoneグループへの株式譲渡を判断したと述べた。
◎TCHC・古田会長 資金面だけでなく戦略面のバックアップに期待
TCHC社の古田未来乃取締役会長も記者会見に臨み、Blackstoneグループへの株式譲渡により成長の機会を見出せると強調。資金面だけでなく、チャネルマネジメントやeコマース、ブランド戦略などで全面的なバックアップが得られるとした。また新会社名については、「これから検討する」としながらも、「タケダからの独立体となるため、タケダは冠しない」と述べた。