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厚労省「安定確保検討会」 骨子案大筋了承 供給不安時の報告ルール化へ “薬価だけ”の対応に否定的な意見次ぐ

公開日時 2020/08/03 06:00
厚労省の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」は7月31日、取りまとめの骨子案を大筋で了承した。骨子案では、医療上必要不可欠で汎用され安定確保が求められる医薬品を“安定確保医薬品(仮称)”と位置づけ、供給不安時の国への報告など、国が一歩踏み込んだ施策を行う必要性を指摘した。安定供給医薬品の在庫状況の報告を製造販売業者に求め、供給不安の理由によってはペナルティを課すこともできる仕組みなどを検討する。この日の検討会では、供給不安を予防するための方策の一つにあげられた薬価をめぐり、議論が集中。宮川政昭委員(日本医師会常任理事)が「薬価を安定供給のなかに盛り込むことはいかばかりか。焦点がずれている」と述べるなど、薬価による施策で安定供給が確保できることに否定的な意見が大勢を占めた。厚労省は、薬価の記載の変更を含めて骨子案を修正し、次回会合に提示する。

◎国の関与の必要性明記

骨子案では、新型コロナの拡大などで露わになった課題を踏まえ、「単に民間企業に安定確保の責務を委ねるのではなく、とりわけ、医療現場で重要な役割を担う医薬品については、民間企業の取り組みに対し、国としてもより踏み込んだ関与が必要」と指摘した。そのうえで、安定確保医薬品について「供給不安を予防するための取り組み」と、「供給不安の兆候をいち早く補足し、早期対応につなげるための取り組み」にわけて論点を記載した。

◎日医・宮川委員「薬価は安定供給のマターではない」

この日の検討会では供給不安を予防する一策として記載された薬価をめぐり、議論が集中した。安部好弘委員(日本薬剤師会副会長)は、「全てを薬価でやろうというのは無理がある。製造原価だけではなく設備投資からある。リストを分析する中で解決するためには薬価が妥当かそうでないのかは議論しないといけない。薬価でやるのであれば中医協で各号が理解して納得するような理由付けが必要だ」と指摘した。

一條武委員(日本医薬品卸売業連合会副会長)は医薬品卸として医薬品の価値を重視し、単品単価に取り組んでいると説明。そのうえで、医療は“チーム”との考えを示し、「新型コロナで医療機関の経営は影響を受けている。薬価を上げるよりも診療報酬をあげていただき、何とかそこをチームとして見ていただきたい」と述べた。宮川委員は、「薬価は安定供給のマターではない。中医協や厚労省、財務省のマターだ。安定供給の中で語るのは無理がある」と強調した。

◎GE薬協・寺島委員「後発品メーカーは総価で取り引き」


こうしたなか、最後に発言した日本ジェネリック製薬協会薬制委員会副委員長の寺島徹委員(沢井製薬)は、「薬価は当然、本来的には安定確保になじまないということは賛成だ。ただし、後発品メーカーの場合は総価で取引されることが多い。それに引きずられている実態がある。すべて薬価で解決するということは思わないが、採算が割れた限られた品目については、薬価や流通の方法で採算性が取れるラインをご考慮いただきたいというのが、ジェネリック業界としてのお願いだ」と述べた。

これに対し、宮川委員は「流改懇の話だ。こちらで皆も頷いているが、議論する場所が違う」と指摘。「薬価の書きぶりは安定供給のために大きな問題点をはらんでいると書くべきで、(安定供給ができない)原因が薬価であるような書きぶりをすることは一切行ってはいけない」と断じた。寺島委員は、「理解している。ありがとうございました」と応じた。

問題の発端となった、抗菌薬・セファゾリンの供給不安をめぐっても、薬価差を武器に面を拡げる営業が影響していると指摘する声がある。骨子案でも、薬価については、「製造販売業者・卸売業者は、安定確保医薬品が不採算に陥ることのないように努める」、「特に、安定確保医薬品が不当に値引きされないよう、国、製造販売業者及び卸売販売業者は、“医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン”の普及及び徹底を行う」とされている。寺島委員の発言は、ジェネリックメーカー自ら、薬価差を引き下げて面を拡大するビジネスモデルそのものが安定供給を妨げていることを認めた、との見方も関係者間では広がっており、波紋を呼びそうだ。

◎供給不安の製薬企業の情報提供「時間の無駄」も メディナビの活用示唆

供給不安時の対応策については、安定確保医薬品以外も含め、製造販売業者から国に報告を求めるための明確なルールを定める方針を盛り込んだ。安定確保医薬品の製造販売業者には、在庫量について年に1~2回程度報告を求めるほか、供給不安が発生した理由次第では、ペナルティを課すことも検討する。

供給不安時の医療従事者との情報共有も重要になる。安部委員(日本薬剤師会副会長)は、「企業のMRや卸のMSが来る場合など様々だが、これは企業の規模や体力によっても対応が違う。医療機関、薬局の規模やどのような薬を使っているかでも違ってくる。日薬連が情報提供についてしっかり対応するように加盟社に通知を発出していることも承知しているが、具体的な事例についてはバラつきがあるのは事実」と指摘。そのうえで、医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)の活用することを提案。「メディナビで供給すると情報提供の質や時間の格差がなくなる。薬がないという情報提供して、ただ謝りに来たというのは、気持ちはわかるし仕事だろうが、時間の無駄。効率的な仕組みとしていただきたい」と述べた。

このほか、共同開発についての情報については、日本ジェネリック製薬協会加盟会社はインタビューフォームに記載していることも指摘された。「先発系企業では加盟されていないので書いていない。国としてルールとして入れていくべきだ」(寺島委員)との声もあがった。

◎安定確保医薬品 年内にも選定 優先順位付けがカギに

安定確保医薬品をめぐっては骨子案で、①対象疾患が重篤であること、②代替薬または代替療法がないこと、③多くの患者が服用していること―を現時点のイメージとしている。各学会に領域ごとに選定を求めたところ、58学会から551品目(成分)が候補とされている。同省はまずは学会からの声を拾い上げる考えで、今後これを絞り込む優先順位付けが重要になるが、医学・薬学の専門家で構成される作業会合を設置し、今年度末を目途に選定を行う。

検討会では、「500品目のリスクを企業がAからEまで評価したうえで細かい対応策、そうした重みづけをしたらどうか」(坂巻弘之委員・神奈川県立保健福祉大教授)、「総合的に評価して優先順位が説明できるような、透明性をもってランク付けすることが必要だ」(安倍委員・日本薬剤師会)との声や、米国など諸外国の例を踏まえた検討を求める声などがあがった。

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