自民党・岸田政調会長 第2次補正予算に「収入減の医療機関・薬局の経営支援」を明記 安倍首相に手渡し
公開日時 2020/05/22 04:53
自民党の岸田文雄政調会長は5月21日、2020年度第2次補正予算編成に向けた自民党提言を安倍晋三首相に手渡した。提言では、「新型コロナウイルス感染症の事態の長期化、コロナ対応や受診控えなどで収入が減少している医療機関や薬局が診療を継続できるよう経営支援を行う」ことを明記した。医薬品関連では、日本医療研究開発機構(AMED)の資金などを充実し、治療法・治療薬の開発支援やワクチンの早期実用化に向けた取り組みを強化することなどを盛り込んだ。このほか医薬品の原料(原薬、中間体)など「医療物資をはじめ重要資材について国内外におけるサプライチェーンの再構築」についても明記した。
新型コロナ感染拡大は、病院経営を直撃した。新型コロナ患者を受け入れる医療機関では、ほかの患者がベッドを使用できずに空床が発生し、病床稼働率の低下を余儀なくされた。実際、日本病院会などの調査によると、医業利益率はマイナス11.8%まで減少、全国医学部長病院長会議の試算では大学病院は20年度末に約5000億円にのぼると推計している。診療所でも、耳鼻科、小児科などの診療科では受診抑制が響く。こうした状況を受け、日本医師会は、半年間で7兆5000億円の予算措置を求めている(
関連記事)。
◎新型コロナ対応の医療従事者への手当検討も
提言では、経営支援に加え、「現場でコロナ患者に対応する医療従事者を応援する手当を検討すること」も明記した。新型コロナ以外の疾患についての地域医療の継続も求められるなかで、中等症患者などを受け入れる“コロナ専門病院”を設置することの必要性を指摘する声もあがる。提言では、「これまでの感染拡大のデータ等をしっかりと検証しつつ、重点医療機関の設置促進など地域における役割分担、コロナ対応に向けた救急医療や小児・周産期医療の体制整備等を推進するとともに、宿泊療養施設の確保に引き続き取り組むこと」とした。
◎検査体制の「強化」 抗原検査の活用を推進
感染拡大防止に向け、検査体制の「強化」が求められる。約30分間で検査結果が判明する抗原検査が5月13日に承認、即日保険適用された。唾液を検体として用いるPCR検査の活用や抗体検査などに期待が寄せられている。こうしたなかで、「PCR検査体制の拡充し、迅速・簡便な検査方法の導入を進めるとともに、抗原検査の活用を推進すること」や、「抗体検査を活用した感染の実態把握、感染拡大防止システムの開発等を進める」とした。その際、検査の精度管理に留意することとしている。
◎日本医療研究開発機構(AMED)の資金充実 治療薬等の開発支援を後押し
医薬品関連では、「一人でも多くを救命するために、日本医療研究開発機構(AMED)の資金などを充実し、検査法、治療法・治療薬の開発支援に引き続き取り組む」ことを明記。ワクチンの早期実用化に向け、研究開発の加速化、承認審査の迅速化、生産体制の整備、国際連携の強化等に取り組み、一刻も早く国民にワクチンを供給するとした。また、今秋以降に想定される第2波、第3波に向けて、インフルエンザの流行期と重なることを踏まえて、インフルエンザ薬・ワクチンの備蓄などを含めた医薬品・医療機器/備品等の確保を図ることとした。
◎医薬品の原料など医療物資の国内外でのサプライチェーン再構築を
このほか、新しい生活様式に対応したビジネスモデルとして、「医療物資をはじめ重要資材について国内外におけるサプライチェーンの再構築」について、多様な領域の専門家を結集して検討を行うとともに、先駆的取り組みに支援を行うことを盛り込んだ。マスクや防護具に加え、医薬品では原料や中間体の輸入を中国などに頼っており、国内生産の重要性も指摘されている。こうしたなかで、1か所に頼らないサプライチェーンの再考ということも求められそうだ。
感染拡大防止と経済活動を両立させる観点から、「新しい生活様式」の確立、さらにはこれに合致した「新たなビジネスモデル」構築も求められるところ。「リモートワーク、テレワークを可能とする対面原則の緩和」を盛り込んでおり、製薬業界もビジネスモデルの転換を強く求められることとなりそうだ。