東和薬品・吉田社長 コロナ影響で「MR業務を見直す必要」
公開日時 2020/05/15 04:50
東和薬品の吉田逸郎社長は5月14日、20年度3月期決算会見後に電話会議システムで本誌取材に応じ、「新型コロナウイルスは非常に大きなインパクトがあった。サプライチェーン、MR業務のやり方を見直さないといけない」と強調した。特にMR活動は、「地域単位で医療機関の役割や機能分化が進む。MRは現場が必要とする情報を提供していかないといけない」と述べた。一方、サプライチェーンについては、「1社で対応するには限界がある」との認識を示し、業界や国をあげて、法や体制整備も含めた対応をする必要があると指摘した。同社は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大に伴い、原薬輸入先のインドがロックダウンされたことなどから、一部の製品について出荷調整をせざるを得ないなど対応に迫られていた。
◎「今までのような情報提供活動では不十分」
吉田社長は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務やMRの外勤自粛を経験したことで、「非常に大きなインパクトがあり、活動内容を見直す必要が浮き彫りになった」と述べた。MRの情報提供活動については、「今までのような情報提供活動では不十分」と指摘する。国の掲げる後発医薬品数量シェア80%達成後のビジネスを考えていたとしながらも、今回の感染拡大が市場環境の変化のスピードを速めており、より早く対応する必要が出てきたとの認識だ。吉田社長は、国が2025年に向けて構築を目指している地域包括ケアシステムを見据え、「何ができるのか考えていかないといけない」と述べ、情報提供活動の変革を推し進める必要性を強調した。
◎原薬供給問題に危機感を表明
一方、原薬供給の問題に触れ、「今回で安定供給の問題点がわかった、これが続くと大きな問題になる」と危機感を表明し、対応策に乗り出す方針を示した。また、昨年末に発表したスペインのペンサ・インベストメンツ社(ペンサ社)について吉田社長は、「コロナがなければ、買収してからどんな位置づけでやるか決めないといけない時期だった」と強調。「製剤的な技術は評価を得ている。少し長いスパンでいくと欧州で東和の製品を紹介していきたい」と述べ、ペンサ社を足掛かりにした事業展開に期待感を表明した。
◎中期計画の売上目標2年連続で達成 20年度はペンサの連結で35%増収を予想
東和の19年度連結業績は、売上1103億8400万円(前年同期比5%増)、営業利益161億4300万円(同1.1%増)で、増収増益だった。原価率は54.1%で、生産部門における効率化などで、19年10月の薬価改定を見込んだ通期計画を1.8ポイント下回る結果となった。17年度追補品のミカルディスファミリーのGE、セイブルGE、オルメテックOD錠GEなど、近年の追補品が業績に寄与した。
東和では、18年5月に発表した18年度~20年度の3か年の中期経営計画のなかで、最終20年度の売上目標を「1000億円達成」としていたが、前年度に引き続き2年連続で計画を達成した。内藤泰史営業本部長は、「2期連続の1000億達成は、ジェネリックの市場の伸びに沿ったかたちで活動できたことが影響。基本的な活動が評価されたと考えている」と強調した。
20年度の売上高は、20年3月に買収手続きを完了させた、スペイン医薬品大手のエステベグループ傘下のペンサ・インベストメンツ社が連結対象となるため、前年度比35.9%増の1500億円を見込む。営業利益143億円(11.4%減)、原価率59.1%(48.3ポイント増)の計画。吉田社長は、「欧州で東和の製品を紹介していく、品質を紹介していく足掛かりになる」と述べ、期待感を示した。
20年6月追補の新製品としては、ゼチーアGEやザイザルGEなど10成分22品目の上市を計画。初年度の売上は約32億円を見込んでいる。