20年度診療報酬改定 「改定率」めぐる攻防 改定率0.55%以上の大幅引き上げで待望論
公開日時 2019/12/05 04:52
厚労省が12月4日の中医協総会に薬価調査結果(平均乖離率約8%)を示したことで、2020年度診療報酬改定をめぐる論議は「改定率」をめぐる攻防に突入した。診療報酬本体の改定財源は市場実勢価格に基づく薬価引下げ分がベースとなる。加えて、市場拡大再算定や薬価制度抜本改革の影響分を加味した薬価財源が診療報酬本体の引き上げに充当される。今回、薬価の乖離率が明らかになったことで、与党内や医療関係団体からは追加的な財源確保への期待感が急速に高まっており、前回改定率0.55%を大幅に上回る水準を狙う声が一気に高まりだした。一部には「1%近く」まで持ち込みたいとの待望論も浮上してきた。
次期改定をめぐって診療側の日本医師会は前回改定率0.55%を大幅に上回る引上げを強く求めている。これに対し支払側は、ネットマイナスを加藤勝信厚労相に要請しており、対立軸は明確と言える。財務省も現時点で2%半ば以上のマイナス改定を打ち出し、薬価改定財源を全て診療報酬本体に振り替えることは容認しない。前回改定では社会保障費の自然増1300億円を圧縮した。よって今回も全体でマイナス改定になる流れは変わっていない。
今回公表された薬価調査の平均乖離率約8%は、前回18年度改定時の乖離率9.1%より1.1ポイント圧縮している。前回18年度改定時は、薬価と市場実勢価との乖離による通常改定(▲1.29%)、市場拡大再算定(▲0.05%)、市場拡大再算定の特例(▲0.02%)で国費ベース1500億円程度の財源を捻出した。20年度改定は、これに到底及ばないものの、市場拡大再算定などの追加分を合わせると、1000億円程度の財源は確保できるのではないかとの見方が浮上している。とは言え、診療報酬本体への全額振り替えは望めない。このため診療報酬本体の改定率は、社会保障費の伸びの抑制分があるにせよ、前回改定の0.55%を上回る水準を前提に、1%に迫る大幅引き上げまで到達できるかどうかが焦点となりそうだ。
◎12月6日に国民医療を守るための総決起大会を開催
日本医師会の横倉義武会長は、「前回(本体改定率0.55%)を大幅に上回り、さらに働き方改革が実現できるような改定率の確保」を政府側に強く求める姿勢を鮮明にする。急激な高齢化が進む一方で、地方都市を人口減少が襲い、労働生産性の低下とともに経済基盤を揺るがす-。社会構造や社会システムが大きく変化する中で、地域医療もまた大きな変革が求められている。横倉会長は、「医療従事者に適切な手当てを行うことで、社会保障が充実し、経済の好循環が達成できる。医療従事者だけが取り残されることのないようにしなければならない」と訴えており、「働き方改革を実現できる改定率の確保」を求める方針だ。12月6日には都内で日本医師会や日本薬剤師会など医療関係40団体で組織する国民医療を守るための総決起大会が予定されており、多数の与党議員を前に気勢をあげることになる。