20年度診療報酬改定で号砲 財務省「本体マイナス」を主張 日医「賃金動向に応じた引上げ」求める
公開日時 2019/11/05 03:52
2020年度診療報酬改定をめぐる政府内調整の号砲が鳴った。財務省主計局は11月1日の財政制度等審議会財政度分科会に、2020年度予算編成の焦点となる診療報酬改定について「本体マイナス」で臨む姿勢を鮮明にした。これに対し日本医師会の横倉義武会長は即日、緊急会見を開き、「診療報酬本体は賃金の動向に応じた引上げが必要だ」と真っ向から反発した。財務省は次期診療報酬改定の改革メニューのうち、「調剤報酬の構造転換」に照準を合わせて、大幅な報酬体系の見直しを求めている。調剤料の引下げなどにより、対物業務から対人業務中心へとシフトすることなどを予算編成過程で厚労省に強く求める考えだ。調剤報酬の見直しは中医協でも議論を開始しているが、財務省からも一石を投じる格好となった。
◎財務省主計局 2007年度起点の賃金・物価動向「医療費がこれを上回る高い水準」
2019年度の診療報酬総額に当たる国民医療費は予算ベースで約46兆円。財務省主計局は、過去10年間で国民医療費は平均2.4%/年で増加していると指摘。高齢化などの要因は平均1.1%/年として、「残り半分程度は人口増減や高齢化の影響とは関係のない要素」と指摘した。そのうえで、2007年度を起点とした賃金・物価動向を示し、医療費がこれを上回る高い水準だと指摘。「国民負担の抑制や制度の持続可能性の観点から、診療報酬本体のマイナス改定により、これを是正していく必要がある」と結論付けた。
◎日本医師会「18年度の診療報酬本体の水準は賃金・物価より低い」と真っ向対立
一方、日本医師会は安倍政権スタート時の2012年度を起点とした賃金・物価動向を示し、「2018年度の診療報酬本体の水準は賃金や物価よりも低い」と指摘した。横倉会長は、「財政審の資料は相変わらず恣意的だ」と断じた。そのうえで、「医療費を考えるときに、目先の問題と社会保障の継続性の両方のバランスを考えないといけない」との考えを表明。「診療報酬本体は、医療に携わる方の給与費が基本。本体を下げるということは給与を下げるということだ」との見解を示した。
加えて、西村経済再生相が経団連に継続的な基本給のベースアップ(ベア)を求めたことを引き合いに、「約200万人の医療関係者を置いてきぼりにするのか。社会が給料を上げないといけないという風潮にあるなかで、それに反するのはとんでもない」と釘を刺した。さらに、社会保障財源の充実が雇用をはじめ、経済の好循環を生むと強調。「特に、医療従事者の比率が高い主に地方では、経済活性化によって経済成長を促し、地方創生の多大な貢献につながる」と理解を求めた。
◎次期改定の焦点は「調剤報酬」
2020年度診療報酬改定で焦点となるのが、調剤報酬の見直しだ。財務省は、医科、歯科、調剤の財源配分にも問題意識を示した。そのうえで、処方箋1枚当たりの単価の増加で、薬剤費を除く調剤医療費の伸びが大きいと指摘した。薬剤師・薬局の職能が、「対物業務から対人業務中心へシフト」するなかで、「調剤報酬の構造転換」を求めた。「全体として水準を下げつつ、調剤報酬全体の在り方について見直しを行っていくべき」と提言した。
特に対物業務の象徴的存在である、「調剤料に依存した収益構造は依然として継続している」と指摘。「剤数や日数に比例した算定方法を適正化し、大胆に縮減すべき」とした。
◎日医・横倉会長 病院薬剤師の評価「医療費財源の総枠が決まった先の議論」
病院薬剤師の評価についても議論になるなかで、日医の横倉会長は、「病院薬剤師はもっと頑張ってもらう必要ある。財源が医科の診療費から出ている。本来は薬剤師の給料であり、大きく言えば調剤技術料の中に含めるべきという考えはある」と表明。一方でこの点については、「これからの議論。まずは医療費財源の総枠が決まった先の議論となってくる」と見通し、「12月の中旬までは一生懸命協力して、その先はどうなるか」と含みを持たせた。11月にも医療経済実態調査の結果も公表されるなかで、「医療経済実態調査で経営状況を踏まえて考えていくべきだ。一部に大きな利益が動いているのであれば議論の対象だろうが、今の時点で大幅に変えるべきだとは言えない」とも述べた。