ポリファーマシー（多剤併用）の改善に向けて介入している薬剤師は２割―。日本保険薬局協会(NPhA)の薬局・薬剤師機能拡大委員会は８月26日、会員各社の管理薬剤師約3000人を対象にオンラインで実施した調査結果を公表した。改正医薬品医療機器等法（薬機法）の法案で義務に位置付けられる服用期間を通じた服薬状況の把握や指導については約半数の薬局で取り組んでいた。しかし、在宅医療や入退院時の、他医療機関との連携について、「実施していない」との回答が４割超でトップとなり、課題も浮かびあがった。地域包括ケアシステムのなかで、地域の医薬品情報を担うことが薬剤師に期待されるなかで、薬剤師が地域へ一歩踏み出すことが必要と言えそうだ。

調査はNPhA会員薬局の管理薬剤師を対象に、2019年７月２～19日までオンラインで実施した。回答数は3445薬局。

◎他医療機関との連携「実施していない」が４割

患者の高齢化に伴うポリファーマシーや残薬などが、地域医療の現場で表面化してきている。本誌Monthlyミクス２月号で医師600人を対象としたアンケート調査からも、同様の薬剤をめぐる課題が浮かび上がっていた。しかし、NPhAが実施した調査結果からは、疑義紹介やトレーシングレポートの活用などに薬剤師が「積極的に介入している」との回答は3.4％（116件）にとどまる。さらに、薬剤師が「あまり介入していない」（39.3％）、「介入していない」（40.7％）を合わせると、８割という結果になった。ポリファーマシーの改善に向けて薬剤師が介入しても、服用調剤調整支援料を算定できなかった薬局が69.4％にのぼることもわかった。

一方で、在宅医療や入退院時をはじめとする他の医療機関との連携については、「実施していない」がトップで43.9％。「コメディカル（看護師、ケアマネ、ヘルパーなど）に文書などで情報提供を行う」（28.9％）、「サービス担当者会議へ参画」（24.9％）などが次いだ。「地域や医療機関独自の医療情報ネットワークなどで情報共有」（14.7％）、「訪問診療へ同行する」（9.6％）、「退院時共同指導へ参加」（5.6％）と低率だった。

◎服用期間中のフォローアップは半数が実施　高齢者やかかりつけ指導料算定患者などに

調剤時のみだけでなく、服用期間を通じた服薬状況の把握や指導を「定期的に行っている」と回答した管理薬剤師は5.8％（201件）、「必要に応じて行っている」が42.9％（1477件）で、半数に迫った。「行ったことがある」が27.8％（956件）、「行っていない」が23.5％（811件）だった。実施対象は、「高齢者」（41.2％）、「かかりつけ薬剤師指導料の算定患者」（40.7％）、「処方変更があった患者」（40.4％）、「吸入器デバイスなどの使用患者」（18.4％）などとなった。服薬状況の確認・指導は「電話」が84.1％で大多数を占めた。

厚労省は、2016年度調剤報酬改定以降、臨時国会で成立見込みの改正薬機法まで一貫して、薬剤師の職能として調剤時だけでなく、その後の服薬状況の一元管理を求めている。薬剤師が、「調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務」が法制化される。さらに、「患者の薬剤の使用に関する情報を他医療提供施設の医師等に提供する」ことも努力義務として明記される見通し。薬剤師が地域包括ケアシステムのなかで、いわば医薬品情報のハブとしての機能を担うことで、高齢化に伴って複雑化する医薬品の課題を解決する姿を描く。しかし、今回の調査結果を照らし合わせてみる限り、現実との乖離も明るみになった格好だ。

◎医師の負担軽減へ　残薬調整や服薬指導など

調査結果ではこのほか、医師の負担軽減に向けた薬剤師へのタスクシフティングについて尋ねたところ、「残薬調整や剤型変更などの疑義照会を省略」（69.8％）、「服薬指導（処方薬の説明や運動食事などの生活指導の時間軽減）」（64.0％）、「服用薬の一元管理」（57.7％）などの回答があがった。