武田薬品 iPS細胞由来のCAR-T細胞療法を開発へ 京大iPS研と創製
公開日時 2019/07/17 03:52
武田薬品は7月16日、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)との共同研究により創製したiPS細胞由来のCAR-T細胞療法(iCART)の研究成果を承継し、がんを対象に開発を始めると発表した。武田によると、両社の共同研究プログラム「T-CiRA」からの研究成果の承継は初めてで、武田はiCARTに関する全世界での開発・商業化権を持つ。武田は、対象とするがん種は明示していないが、臨床開発に向け準備を進め、2021年の first-in-human (FIH)試験実現を目指す。
T-CiRAでは、CiRAで作製した「再生医療用iPS細胞ストック」をもとにクローン化したiPS細胞を用い、患者に提供可能なiCARTを共同研究。非臨床試験では、細胞表面に発現しているCD19を標的とするiCARTが強い抗腫瘍効果を発揮することを明らかしたという。
患者自身から細胞を採取するのとは異なり、1種類のiPS細胞マスターセルバンクから均一な細胞製剤を大量生産する製法を開発する。それにより、現行のCAR-T療法よりも低価格で患者に提供できるようにしたい考え。武田は現時点では、21年以降の上市までのスケジュールは開示していない。今後、CiRAには開発の進捗や承認に対応したマイルストーンを支払う。
武田は現在、12のCAR-Tプログラムを開発中という。今回のiCARTの試験は21年までの実施を計画する5件のFIH試験の1つだとしている。
T-CiRAは、CiRAと武田との10年間の共同研究プログラム。15年に設立、16年から研究を本格的に始めた。武田薬品が200億円の提携費用を提供し、CiRAの山中伸弥所長の指揮のもとがん免疫療法、心不全、糖尿病、神経精神疾患、難治性筋疾患などのiPS細胞技術の臨床応用に向けて研究を進めている。