第一三共 19年3月期決算 オルメテックの特許切れ響く 国内売上高は前年比167億円減収
公開日時 2019/04/26 03:51
第一三共は4月25日、2019年3月期決算で国内売上高が前年同期比167億円減収の5233億円だったと発表した。抗凝固薬・リクシアナが国内シェアトップに立つなど伸長したが、ARB・オルメテックの特許切れの影響を吸収しきれなかった。同日、都内で記者会見に臨んだ眞鍋淳代表取締役社長兼COOは、「こういう時代なので、特許が切れれば後発品に置き換わるのは当然と受け入れざるを得ない。僕らができるのはSOC(スタンダードオブケア)を変革する新薬を作ることしかない」と述べた。同日の決算会見では、アストラゼネカ社と大型戦略提携を結んだばかりの抗がん剤・DS-8201が国内でも19年度下半期に申請し、早ければ20年度中に上市できるとの見通しも発表。同社が2025年ビジョンとして掲げる“がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業”に舵を切ったことを鮮明に印象付けた。
◎リクシアナが大幅伸長 DOAC市場のマーケットリーダーに成長
同社の2019年3月期連結決算の売上高は、対前年同期比305億円減収の9297億円。国内売上高では、リクシアナが43.2%伸長し、売上高649億円となるなど、売上高を牽引した。国内では18年度第4四半期にシェア33.2%を獲得し、DOAC(直接経口抗凝固薬)市場のマーケットリーダーに立った。経皮的冠動脈形成術(PCI)を受ける患者など様々な臨床的背景の患者を対象に大規模臨床研究を実施。得られたリアルワールドデータを基に拡充した科学的知見を武器にシェア拡大を目指す。売上高も19年度には770億円を見込み、同社のトップ製品に成長させたい考えだ。
一方で、オルメテックは297億円減(対前年同期比66.7%減)の売上高149億円となったほか、PPI・ネキシウムも83億円減(売上高:783億円)、イナビルが71億円減(182億円)、ロキソニンが60億円減(305億円)となるなど、これまで同社の屋台骨を支えてきた生活習慣病治療薬の減収が業績にも響いた。営業利益は74億円増の837億円、純利益は331億円増の934億円。
◎旧第一製薬の本社、現在の東京支店のビル売却 人員削減は「予定なし」
2019年度には売上高9400億円、営業利益は1000億円を見込む。DS-8201の研究開発投資が膨らみ、研究開発費は2250億円。一方で、ノンコア資産の売却などで販管費・一般管理費の圧縮を目指す。同社は同日、旧第一製薬の本社で現在、同社東京支店の社屋である日本橋ビルを売却することを発表したが、こうした“資産スリム化”をさらに推進する考え。ただ、MR数など人員削減については、「予定はない」と明言し、MR数は維持する考えも示した。
◎DS-8201 国内で20年度中の上市目指す
一方で、2019年には肝入りで進めてきたオンコロジー領域が臨床段階へ近づく。DS-8201はHER2に対する抗体薬物複合体(ADC)。T-DM1既治療のHER2陽性乳がん患者を対象とした臨床試験はP3実施中のほか、乳がん、胃がん、大腸がん、肺がんなどで複数の臨床試験が実施されている。米国では19年度上半期、日本では19年度下半期の申請を目指す。米国では早ければ19年度中、国内でも20年度中の上市も視野に入る。
また、がん治療ウィルス「DS-1647(G47△)」 が膠芽腫患者を対象としたP2で有効性が確認され、早期中止となったことを紹介。19年度上半期に国内で承認申請を予定する。なお、同剤は先駆け審査指定品目。このほか、「DS-3201」が再発・難治性末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)を対象に先駆け審査指定制度の対象品目となったことも紹介した。
◎リクシアナに期待 眞鍋社長
眞鍋社長は19年度の見通しについて、「がんが貢献するまでではないので、それまでのベースビジネスとして、やはりリクシアナに一番期待している」と述べた。「非常に厳しい状況だが現状持っている」とした。国内では末梢性神経障害性疼痛治療薬・タリージェを19年4月に上市。高血圧治療薬・ミネブロも5月の上市を予定する。真鍋社長は、「導入品を含めて検討する」とも述べた。国内市場については後発品市場浸透の影響が大きいが、「厳しい市場なので高い伸びは期待できないが、日本市場は屋台骨だ」と強調した。一方で、今後のコア領域として、がんのほか、希少疾患や免疫疾患をあげ、「多様なニーズに応えいきたい」と、ノンオンコロジー領域での革新的新薬創出にも意欲をみせた。
【18年度連結業績 (前年同期比) 19年度予想(前年同期比)】
売上高 9297億円(3.2%減) 9400億円(1.1%増)
営業利益 837億円(9.7%増) 1000億円(19.5%増)
親会社帰属純利益 934億円(55.0%増) 720億円(22.9%減)
【18年度のグローバル主要製品全世界売上高(前年同期実績) 19年度予想、億円】
エドキサバン 1177(771)1490
オルメサルタン 1059(1497)880
プラスグレル 232(328)非開示
【18年度の国内主要製品売上高(前年同期実績) 19年度予想、億円】
ネキシウム 783(865)760
リクシアナ 649(453)770
メマリー 502(486)520
ロキソニン 305(365)260
プラリア 274(232)310
テネリア 253(263)260
イナビル 182(253)210
オルメテック 149(446)80
ランマーク 164(154)170
エフィエント 139(128)150
レザルタス 155(168)130
ユリーフ 103(111)30
オムニパーク 120(140)100
カナリア 92(27)120
ビムパット 66(26)100
第一三共エスファ品 555(467)非開示
ワクチン事業 415(419)非開示