AZ日本法人 18年に3つの新薬、3つの適応追加 クレストール特許切れ影響の吸収見込む
公開日時 2018/04/17 03:51
アストラゼネカ日本法人のステファン・ヴォックスストラム社長は4月16日、東京支社で1月の社長就任後初めての記者会見にのぞみ、2018年は3つの新製品の発売、3製品での適応追加の取得、コンパニオン診断システムの承認取得支援――を実現すると表明した。同社では“3+3+1”戦略と呼んでいる。17年9月と12月に最主力品の高脂血症治療薬クレストールに後発品が参入し、18年は日本法人全体でのマイナス成長が予想されるが、ヴォックスストラム社長は会見後、本誌取材に、「業績予測は言えないが、クレストールの減収影響を相殺するため、3つの新薬の発売と、3つの適応追加の取得に取り組む」と語った。
クレストールが特許切れし、19年には喘息治療薬シムビコートの特許切れを控える。一方で、がん領域などのスペシャルティ新薬が増える。MR数の見通しについてヴォックスストラム社長は会見で、「21年に向けて少なくとも8つの新製品を上市することを目標にしている。全ての社員が、この目標に向けて必要ということだけは今、言える」と述べた。MR数のあり方は新製品の上市計画通りに進むかどうかによる、と解釈できそうだ。
■卵巣がん、重症喘息、ステージ3非小細胞肺がんの新薬発売へ
17年の日本法人の売上は22億ドル、前年比1%増だった。肺がん治療薬タグリッソと糖尿病薬フォシーガの売上増がプラス成長に寄与したという。具体的な製品売上は非開示。ヴォックスストラム社長は抗潰瘍薬ネキシウム、シムビコート、タグリッソ、フォシーガで、それぞれ「数量シェアで1位になった」とも説明した。主要領域のオンコロジー、循環器・代謝/消化器、呼吸器の売上構成比は薬価ベースでそれぞれ30%、51%、16%だった。
18年は企業成長に向けて、“3+3+1”戦略を進める。発売を計画している3製品は、▽再発卵巣がんに用いる世界初のPARP阻害薬リムパーザ(4月18日に薬価収載予定)▽重症喘息に用いるヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤ファセンラ(同)▽承認されればステージ3非小細胞肺がんにおける初のがん免疫療法となる抗PD-L1抗体イミフィンジ(申請中)――。イミフィンジは今年下半期の発売を予定している。
承認取得を見込む3つの適応追加は、▽タグリッソの1次治療▽リムパーザのBRCA変異陽性乳がん▽ネキシウムの小児の用法用量追加(1月に承認取得)――となる。タグリッソが1次治療の適応を追加すると、「これまでの3倍の患者さんの治療に貢献できる」(同社長)。リムパーザの乳がん適応については、「BRCA検査によって同定された遺伝性乳がん患者さんに対する世界初の治療薬になる」「やっと出てくる初の治療法だ」(同社長)と期待感を示した。
“3+3+1”の“1”の部分のコンパニオン診断システムは、リムパーザの乳がん患者への適応判定を補助するもので、BRCA変異の特定を行うもの。日本では3月29日に承認された。同システムは米ミリアド社が開発・製造販売しているが、グローバルで業務提携しているAZは、日本で選任製造販売業者としてミリアドの承認取得を支援した。
■「成果主義という文化をもっている」、係争中のMR労働問題で所見
ヴォックスストラム社長は会見後の本誌取材に、係争中の労働問題の受け止めについて、「コメントは控えたい」と話したが、「いま言えることとしては、当社には成果主義という文化を持っている。年齢、在籍期間、性別に関係なく、社内で公平な機会が与えられることが重要だと思っている」と所見を述べた。
係争中の案件のうち2件は、16年に導入したMR評価の新制度が発端。これは年功をやめ、職務に見合った成果で評価することを柱としている。提訴した複数のMRは、十分な説明がないまま成績下位者に適用されるPIP(=業務改善計画)の対象になり、就業規則にない降格や減給を受けたと主張している。ヴォックスストラム社長は成果主義の考え方は継続する姿勢を示した格好だ。