変革期だからこそ「考えるMRになろう!」
メンバーの個性や自主性を尊重
MR-1コンテストで優秀賞を受賞したサノフィの岩堀充利さん。昨年8月に営業所長に昇進し、いまはチームの大黒柱としてMRの牽引役を買って出る。チーム員とは毎月1回、プライベートを含めて相談に乗る機会を設けている。常にチーム員一人ひとりの個性や主体性を重んじ、「まずやってみよう!」と声かけする姿勢に、岩堀さんの人柄を感じた。MRを取り巻く環境が変化する中で、MRの働き方もきっと変わると熱く語る姿に次世代MRの進むべき方向性を垣間見た。(インタビュアー ミクス編集長 沼田佳之)
――MR-1コンテストに出場した感想から聞かせてください。日々の活動の変化などお聞かせください。
岩堀氏 率直に申し上げて、コンテストが終わった直後は悔しかった。ナンバー1の最優秀賞を取れなかったことは、いまも後悔している。ただ、コンテストの結果がミクスOnlineに掲載されると、大勢の先輩、同僚、後輩から“おめでとう”と声をかけて頂いた。本当に嬉しかった。全然知らない競合他社のMRさんから声をかけて頂くこともあった。いまは、コンテストに参加して良かったと心から言える。
何事も自分から一歩踏み込んで行動していく大切さは、確実に自分の視野を広げた。行動し、踏み込んでいく大切さを学ぶことができた。非常に貴重な経験だった。
――岩堀さんは営業所長としてご活躍していますが、その中で心掛けていることは何ですか。
岩堀氏 現場でMRをしていた時に良い経験を積ませて頂いた。当時の上司の方針があって、自分のやりたいことを自分でプランニングし、取り組むことを日々実践させていただいた。その主体性が本当に重要だと自身の経験で痛感した。営業所長になってからも、この考え方を踏襲し、メンバーの個性や自主性を尊重しながら、日々の声かけを行っている。
弊社はコーチングに力をいれている。コーチングを意識しながら、自社製品を届けるために、医師に、どんな提案ができるか日々格闘している。
――チームのMRさんから悩み事を相談されることも多いのでしょうね。どうアドバイスをしていますか。
岩堀氏 まず好きなことをやってみなさいと、声掛けしている。営業所長になって8か月程度がすぎた。当初は、メンバーからは「どうしましょうか?」と相談を受けることが多かったが、最近は、「こうしたいのですが、いいですか?」と提案されることが多くなってきた。これはとても嬉しいことだ。わたしも、「やろう!」と応じ、後は具体的に何時やるか、どう進めるかなどの相談が中心になってきた。その意味でチームの成長を感じるようになった。
――チームとして取り組んだ成功談などお聞かせください。
岩堀氏 活動ベースで言うと、チームのメンバーとは「1on 1」として、毎月1時間の相談タイムをとっている。そこでは仕事以外のプライベートを含めて相談に乗っている。ここは聞き役に徹し、MRの方から話してもらうことに注力している。そこで決めたことについては、MRが会議の席で自身の進捗状況として報告してもらうようにしている。徐々にではあるが、新薬の新規採用や処方の獲得などの報告も増えている。施設攻略などについて目に見える成果もあがってきている。
――日々の業務に悩むMRさんも多いかと思うが、その時のアドバイスは?
岩堀氏 MR不要論までとはいかないが、将来の不安について相談されることもある。私から明らかに言えることは、いまの仕事のやり方が将来にわたり変わってくると伝えることがある。あくまで私個人の見解だが。このほかAI(人工知能)やITなども進歩している。ここが進むことになるならばMR側も意識改革しなければいけないと認識している。
もっと広いテリトリーで活躍したい
――今回のMR-1コンテストでは3年後の自分の姿をプレゼンして頂いた。改めて、いまこのテーマで話をするならば、チームのMRにどう話しますか。
岩堀氏 3年後の自分というと、もっと広いテリトリーでこの仕事を続けていきたいと考えている。自社製品を通じ、患者さんにもっと貢献したいと思う。地域包括ケアなどネットワーク型の医療がもっと進んでくるだろう。対顧客のうち医療者に対しては、これまでは処方医に重きを置いてきたが、特定認定看護師などが医師の指導のもとで処方に影響をもたらすようなこともある。ほかにも薬剤師をはじめ医療スタッフへの情報提供はより重要になってくると思う。アプローチする先をより広げていかないといけないと考えている。
一方、医療者同士をつなぐというところはMRにとって仕事の醍醐味になると思う。ただ、そこにAIやITなどのツールをうまく使いこなすことが求められるだろう。対顧客のニーズを探り、そこをFace to Faceでやるか、ツールを使うべきかを見極め、それを実行していくことが今後のMR活動の中で重要になる。まさにMRができる仕事がもっと広がりを持つと伝えてあげたい。
――いまチャネルの話がでましたね。チャネルの活用について現状認識は如何ですか。
岩堀氏 今まさに、そこに取り組んでいる。私の経験だが、メールをうまく活用して医師とのリレーションを高めた経験がある。医師の信頼度をアップできた。
一例をご紹介すると、自社製品の中で、フォローアップが必要な薬剤がある。医師と面談したその直後に、看護師に同じ情報提供し、そのフィードバックを医師にメールを通じ報告する活動が高く評価された。医師は、そのスピード感を評価し、その結果、処方への安心感につながったという経験がある。
――地域医療に対してチームで目標を立てて、実行し、成功した事例はありますか。
岩堀氏 少しある。病院の院長クラスは常に経営を考えている。そういう医師に紹介率など病院の収益に関係する話題を提供し、連携先の医療機関について話し込みを行うことも一考だ。ディスカッションを通じ、自社製品の処方につなげることにもなる。
昨年はある地区の病院長クラスに集まって頂き、医師同士でディスカッションできる機会を設けた。新病棟立ち上げの計画もあったので、これに絡めた企画(講演会)を行った。参加した医師もそれぞれ専門が異なるため、お互いの意見交換を通じ、地域医療や連携について理解を深めることができたと思う。医師側の評価も高かった。こうした取り組みは今後増えると思う。
もっと考えるMRになるべき!
――MR活動の生産性が低いとの指摘もあります。従来型のMR活動から転換できるのでしょうか。
岩堀氏 SOV(シェア・オブ・ボイス)ベースの営業は一定の期間を経て無くなっていくだろう。今後はスペシャリティー領域の新薬が数多く上市される中で、MRが提供する情報もより専門的で深いものになるだろう。
ますます外的環境は変化するだろう。もっと考えるMRになるべきだ。インプットを高めることが重要。いまの若いMRはデジタルに長けている。医師のTwitterなどを通じてヒントを得ることもある。これだけで全てを論ずるわけではないが、コーチングを通じて主体性の発揮できるMRを育てたいと思う。
――所長として、どんなMRに育って欲しいですか。
岩堀氏 新しいことにどんどん臆せずチャレンジして欲しい。業界環境が大きく変わる中で、ちょっと尻込みすると、半年遅れることになる。まずやってみる!ということを意識して欲しい。わたしも背中を押す。チャレンジする、踏み込む勇気を全面に出して欲しい。
――最後に全国のMRさんにメッセージをお願いします。
日本の健康に貢献するという視点も大切に
岩堀氏 患者さんに貢献できる仕事というのは、数ある職業の中で一定の分類になる。健康に少しでも寄与しているという誇りを持つべきだ。そこは医師や看護師、薬剤師から聞き取ることが個人として仕事の熱量になっていくのではないかと思う。これを蓄えることで経験になり、自信になる。これが日本の健康に貢献することになれるのではないだろうか。
――ありがとうございました。
岩堀充利さん:2004年4月入社、大阪エリアでMRをスタートし、3年後に本社に異動し、MRの教育研修を担当する。この経験を踏まえ、藤田保健衛生大学、関西医科大学など大学病院担当を経験。その後、チームリーダーとして大阪市北区、中央区を任され、その時点でMR-1コンテストに応募した。昨年8月1日付で営業所長を拝命。現在は埼玉県北部(深谷市、熊谷市、行田市、久喜市、春日部市、越谷市、三郷市、草加市)等の病院、診療所、保険薬局を5人のメンバーで担当している。