厚労省 後発医薬品使用促進事業で重点地域に東京、大阪など10都府県
公開日時 2018/01/22 03:52
厚生労働省が2018年度に実施する「後発医薬品使用促進対策」事業の実施10拠点が明らかになった。指定されたのは、東京都、神奈川県、大阪府、京都府、福岡県、愛知県、徳島県、高知県、広島県、山梨県-。後発品の使用率が低い地域や人口、処方量などを踏まえて重点地域が選ばれた。2017年9月の後発医薬品数量シェア(速報値)は65.8%まで伸長した。ただ同省は、後発品の使用率に都道府県間でバラつきがあることを認識しており、地域医師会・薬剤師会や保険者などを巻き込んで、一歩踏み込んだ普及啓発活動を進める考えだ。すでに東京都や神奈川県、大阪府では医師、薬剤師、保険者などを交えた研修会を企画するなど、具体的な取り組みも動き出している。
厚労省は「後発医薬品の使用促進対策費」の予算について、都道府県協議会などへの委託費1憶8000万円を含む、2憶1200万円を18年度予算案に計上した。後発医薬品の使用促進として、これまでにもジェネリックメーカーの工場視察などを通じ、品質に対する信頼性確保などの普及を進めてきたところ。この結果、医療従事者間の後発品に対する理解が深まってきたとの声は高まりつつあるものの、実際の使用率は地域ごとに乖離が存在している。
◎第3次医療費適正化計画の評価項目に
政府は18年4月から、第3次医療費適正化計画をスタートさせる。後発品の使用促進は施策の要に位置づけられる。加えて医療、介護、健康づくりなどに関する施策の運営権限と予算を47都道府県に委譲することにしており、保健ガバナンスが抜本的に強化される。具体的には、都道府県が健康づくりから疾病の重症化予防、医療、介護の各段階の施策に関するガバナンスを強める。予算執行から情報、人材などの自由度を高め、保険者や医療機関に対し、いわば司令塔の役割を担うことになる。また、同省は施策の遂行に必要なデータ(保健医療データプラットフォーム)などを提供する。
都道府県の保健ガバナンスという意味では、都道府県による後発品の使用促進や疾病の重症化予防などはアウトカム評価の指標ともなる。これらの成果を評価することで医療費適正化の着実な実施を求めると同時に、都道府県に対しては、地域住民へのインセンティブなどにもつなげる考え。具体的には、入院医療では地域医療構想に基づいた病院機能の分化・連携、外来では糖尿病の重症化予防や、重複投与・多剤併用の適正化、後発品の使用促進に取り組む。後発品の使用促進率も評価項目に位置付けられ、全国の都道府県の中でベンチマークされ、交付金などのインセンティブで評価されることになる。施策の実施に当たっては、保険者、後期高齢者医療広域連合、医療機関その他の関係者に対して必要な協力を求めることができるとされており、今回の事業もこうした取り組みの中に位置付けられる。
◎東京都 保険者、後期高齢者広域連合、医療機関巻き込んだ取り組みも
選定された10都府県は、2017年7月時点で都道府県別の後発医薬品使用率が最下位である徳島県(59.5%)、山梨県(62.3%)、高知県(63.5%)、東京都(64.4%)、大阪府(65.6%)などの地域に加え、全国平均を超えているものの人口や処方量などを踏まえ、福岡県なども重点地域に据えた。問題点を調査・分析し、①品質信頼性確保、②使用促進停滞機関への促進周知依頼、③医師と薬剤師の連携--による使用促進を見据える。
東京都では、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会など医療関係団体や、健康保険組合連合会、全国健康保険協会、国民健康保険中央会、東京都後期高齢者医療広域連合の各保険者が後援するイベントの開催も予定する。医師や薬剤師など医療者と保険者が一堂に会し、実際の取り組みなどで意見交換する。この問題について、一歩踏み込んだ議論を行うことで、後発品の使用促進への当事者意識を高める狙いが込められている。