規制改革推進会議 糖尿病の重症予防などで遠隔診療 18年度診療報酬上の評価拡充など答申
公開日時 2017/05/24 03:50
政府の規制改革推進会議(議長=大田弘子・政策研究大学院大教授)は5月23日、医療ICTを活用した遠隔診療について2018年度診療報酬での評価拡充などを含む第一次答申を取りまとめ、安倍晋三首相に手渡した。SNSや画像、電子メールなどのICTを活用し、糖尿病など生活習慣病患者の重症化予防を行った場合などで診療報酬上の適切な評価を行うことを求めた。離島・へき地に限定されず、初診時でも遠隔診療が可能であることなどを周知する通知の発出も求めた。そのほか、社会保障関連では、新医薬品の14日間処方制限の緩和や社会保険診療支払基金の見直しなど40項目を答申した。
2018年度診療報酬改定で論点の一つとなっている遠隔診療について、規制改革推進会議も踏み込んだ内容の答申を行った。すべて遠隔で行う禁煙外来や1回の診療で完結する疾患などで、医師の判断で遠隔診療が行えると想定した。
◎SNSや画像、電子メールなどICTを活用
糖尿病については、スマホアプリやメールなどのICTを活用した介入と、血圧や血糖などの遠隔モニタリング、対面診療を組み合わせた治療を行うことで、疾患の進行を食い止め、重症化を抑制するなどの報告がある。日本医師会は対面診療が原則であると主張しているが、規制改革推進会議では、「対面診療と遠隔診療を単に比較するのではなく、より効果的・効率的な医療の提供を可能にする」観点からの議論を求めた。
◎14日間処方制限、社会保険診療報酬支払基金の見直しも
新医薬品の14日間処方の見直しについては、2015年に中医協で議論され、見直ししないことが決まった。しかし、規制改革推進会議では「改めて議論すべき」とし、18年度改定に向け、今年度中に検討し、結論を得ることを求めた。今回改革案には、昨年ゼロベースでの見直しを迫った社会保険診療報酬支払基金についても、改めて改革の必要性を指摘。ICTを最大限活用した改善計画の作成・実施、コンピュータチェックに適したレセプト形式への見直し、支部の集約化、審査の一元化を盛り込んだ。
大田座長は、「今残っている規制は構造的に難しいものばかりで、すぐに撤廃する、すぐに改憲するというわけにはいかない。省庁を改革の土俵に載せ、私たちが改革の方向性を示す。これに沿って具体的な中身を詰めていくものがほとんどだ。今回の答申はこれからの詰めこそが必要だ。これからもしつこく粘り強く取り組んでいく」と述べた。新医薬品に適用される、いわゆる“14日間ルール”についても、「14日という根拠がないということを提示しているのに、それに対する回答がなされていない。今後もフォローアップが極めて重要で、十分に満たされていない場合は再度議題に取り上げて検討する」と述べた。
医療・介護・保育ワーキング・グループの林いづみ座長は、「通知をまとめる際には行政で具体的な詰めをするが、ワーキングで議論していたものと変質するものが多々ある。通知が出される前に検討・結論する段階でしっかりとフォローアップしていくことが常に必要だ」との考えを表明。患者申出療養も2016年4月に施行されて以降、現在までに4件の実施にとどまっているとし、「これでは患者のニーズに応じた組み合わせができていないのではないか。専門性の高い保険収載ができるようなものしか組み合わせられないという問題が残っている」と指摘した。
◎安倍首相「規制改革は一丁目一番地」
安倍首相は、「規制改革が一丁目一番地であることに変わりはない。AI(人工知能)が社会を変え、高齢化が猛スピードで進む中で、旧来の仕組みにとらわれず、柔軟な規制や制度を見直すことこそが強い経済を創る」と述べた。同会議からの答申は昨年9月に発足後、はじめて。