薬食審・第二部会 新薬など7製品を審議、承認了承 キイトルーダに「非小細胞肺がん」適応追加へ
公開日時 2016/11/25 03:52
厚労省の薬食審医薬品第二部会は11月24日、新薬など7製品の承認の可否について審議し、全ての承認を了承した。この中には、がん免疫療法薬の抗PD-1抗体キイトルーダに「PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の効能追加があり、一定要件を満たす場合は化学療法歴のない患者にも使えることが含まれている。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請社名)
▽トレアキシン点滴静注用25mg、同100mg(ベンダムスチン塩酸塩、シンバイオ製薬):「低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(2020年10月26日まで)。
これまでの効能・効果から「再発又は難治性」を削除する。これにより、これまでのセカンドラインでの使用から、今回、初回治療から使えるようにする。初回治療での用法・用量は、リツキシマブ(遺伝子組換え)と併用して、ベンダムスチン塩酸塩を90mg/㎡(体表面積)を1日1回1時間かけて点滴静注する。投与を2日間連日行い、26日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。
国内外の診療ガイドラインや教科書では、同剤とリツキシマブの併用投与は未治療の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫(B-NHL)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)の患者に対する治療選択肢のひとつに位置づけられている。海外では、未治療の低悪性度B-NHLの効能・効果で15の国・地域で、未治療のMCLでは2カ国で承認済(16年8月時点)。
▽アーウィナーゼ筋注用10000(クリサンタスパーゼ、大原薬品):「急性白血病(慢性白血病の急性転化例を含む)、悪性リンパ腫。ただし、L-アスパラギナーゼ製剤に過敏症を示した場合に限る」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」からの開発要請品目。
非大腸菌由来のアスパラギナーゼ製剤。急性リンパ性白血病の最初の治療で用いる大腸菌由来アスパラギナーゼ製剤の投与後に、過敏症が生じた際に用いる第二選択薬との位置づけ。過敏症の既往歴のある患者に対して、海外では非大腸菌由来のアスパラキナーゼ製剤が標準的に用いられる。海外では急性リンパ性白血病及び悪性リンパ腫の効能・効果で18の国・地域で承認済(16年8月時点)
▽キイトルーダ点滴静注20mg、同100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間5年10カ月。
がん免疫療法薬で、PD-1に対するヒト化モノクローナル抗体。今回の追加適応の用法・用量は、「1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する」というもの。類薬のオプジーボと異なり、キイトルーダは固定用量で用いることになる。
キイトルーダはPD-L1検査を必須とし、▽白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法歴のある患者▽化学療法歴のない患者――のいずれにも使える。化学療法歴のある患者では、腫瘍組織においてPD-L1を発現した腫瘍細胞が占める割合が1%以上の進行・再発の非小細胞肺がん(以下、NSCLC)患者に使える。化学療法歴のない患者では、▽上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子変異陰性▽未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子陰性▽腫瘍組織においてPD-L1を発現した腫瘍細胞が占める割合が50%以上――を満たす進行・再発のNSCLC患者に使える。これらは添付文書に記載される見通し。
PD-L1検査に用いるコンパニオン診断薬は現在審査中。この点について厚労省の担当官は部会終了後に、「キイトルーダが実際に使えるようになる時にはコンパニオン診断薬も使えるよう、(審査などを)進めている」と説明した。
キイトルーダは「根治切除不能な悪性黒色腫」の効能・効果で9月に承認されたが、企業側が11月の薬価収載を見送った。類薬のオプジーボと同様、高額な薬価のまま患者数が急増することや、オプジーボの緊急的な薬価引き下げの詳細が不明だったことが背景にある。キイトルーダは未発売のまま、年内にも今回の追加適応を取得する見込み。そして17年2月1日付で実施するオプジーボの緊急薬価引き下げ後の2~3月にキイトルーダが薬価収載される可能性が高く、この頃までにコンパニオン診断薬も承認される可能性が高そうだ。
なお、キイトルーダは海外で、化学療法歴のあるPD-L1陽性のNSCLCの効能・効果で米国・EUなど48の国・地域で承認済(16年8月時点)。化学療法歴のないPD-L1陽性のNSCLCの効能・効果では米国で承認済(16年11月時点)。
▽リアメット配合錠(アルテメテル/ルメファントリン、ノバルティスファーマ):「マラリア」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合薬。再審査期間8年。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」からの開発要請品目。
これまで熱帯病治療薬研究班に所属する医療機関にて使用されてきたが、同研究班が厚労省に開発要望した。国内のマラリア発症例は年間約50例と極めて少ないため、海外臨床試験成績、日本人の健康被験者を対象とした薬物動態試験成績などに基づき承認申請した。ただ、「合併症のない急性熱帯熱マラリア」の治療薬としてWHOのガイドラインで第一選択薬に位置付けられ、国内ガイドラインにも記載があり個人輸入での使用実態もあることから、同配合錠は日本でも第一選択薬になり得るとしている。海外では米国・欧州を含む60以上の国・地域で承認済(15年12月現在)。
▽デシコビ配合錠LT、同配合錠HT(エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩、日本たばこ産業):「HIV-1感染症」を効能・効果とする新医療用配合薬。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(2026年6月16日まで)
既存抗HIV薬ツルバダの配合成分のうち、HIVの増殖に関与する逆転写酵素を阻害する作用を持つテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)を、テノホビル アラフェナミド(TAF)に置き換えたもの。日本たばこの発表によると、TAFは、創製したギリアド社が行った他の抗HIV薬と併用した臨床試験において、TDFの10分の1 以下の投与量でTDFと同程度の抗ウイルス効果を示した。
エムトリシタビンとTAFの配合量は、LTが200mg、10mg、HTが200mg、25mg。リトナビルまたはコビシスタットと併用する場合はLT、リトナビルまたはコビシスタットと非併用の場合はHTを用い、いずれも1日1回1錠。海外では14年4月、欧州でLT、HTど同一容量の配合錠が、米国ではHTと同一容量の配合錠がそれぞれ承認済。
▽オテズラ錠10mg、同錠20mg、同錠30mg(アプレミラスト、セルジーン):「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
免疫細胞に発現するPDF4を阻害することで、細胞内の環状アデノシン一 リン酸(cAMP)の分解を抑制し、その結果、病態に関わる炎症性サイトカインの産生を調整し、効果を発揮すると考えられている経口PDE4阻害剤。局所療法で不十分な乾癬に対する全身療法の選択肢の一つとして、シクロスポリン、エトレチナートと同様の位置付けで使用される薬剤だとしている。1日目に朝のみ10mgから始め、2日目以降決められた用量漸増スケジュールに従い1日2回朝夕に投与、6日目は以降は30mgを1日2回朝夕に投与。海外では、米国では関節症乾癬及び局面型乾癬に関する効能・効果で14年3月及び9月、欧州では両効能・効果で15年1月に承認され、15年12月現在、36カ国で承認済。
▽イラリス皮下注用150mg(カナキヌマブ遺伝子組換え、ノバルティスファーマ):「既存治療で効果不十分な家族性地中海熱、TNF受容体関連周期性症候群、高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
家族性地中海熱に対しては、コルヒチンが承認されているが、約1割の患者で抵抗性又は不耐容で、これら患者の治療法は確立していなかった。また、高IgD症候群に対しては初めての治療薬となる。
これら疾患では、炎症性サイトカインのインターロイキン(IL)-1βの過剰産生を原因に、慢性的な炎症反応や進行性の組織障害を引き起こす。同剤は、IL-1βと特異的に結合することで、炎症を抑える。海外では米国で16年9月に承認済、欧州では審査中という。
【報告品目とその内容】(カッコ内は成分名と申請社名)
報告品目は、PMDAの審査の段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断された製品。
▽ヴァクセムヒブ水性懸濁注(沈降ヘモフィルスb型ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体)、武田薬品):「インフルエンザ菌b型による感染症の予防」において筋肉内注射を追加する。再審査期間は残余(2024年1月21日まで)。
現在は皮下注射で承認されているが、筋肉内注射の方が局所反応が起こりにくいという。
適応追加の公知申請了承
部会では、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で公知申請が妥当とされた適応の追加について、2製品の公知申請することを了承した。特例により保険適用となった。
▽タミフルドライシロップ3%(オセルタミビルリン酸塩、中外製薬):予定適応「A型またはB型インフルエンザウイルス感染症(新生児、乳児)」
▽ベリナートP静注用500(乾燥濃縮人C1-インアクチベーター、CSLベーリング):予定適応「遺伝性血管性浮腫の急性発作及び処置前における短期予防」