スズケン・浅野専務 医療施設のソリューション開発・提案強化 選ばれる卸目指す 共同購買対応も視野
公開日時 2016/11/21 03:50
スズケンの浅野茂取締役・専務執行役員は11月18日、兵庫県に竣工したメーカー物流・卸物流複合型の新物流センターの見学会で、医療施設の課題に対し「お得意様(医療施設)にソリューションを提供する。(私たちが)選ばれる仕組みをどう提供するのかが(今後の)役割ではないか」と述べ、必要な支援策の開発・提案を強化する中で選ばれる卸を目指す姿勢を強調した。メーカーから卸、卸から医療施設・患者までの一気通貫のサプライチェーン構築を進める中で、十分に対応できていなかった医療機関・患者に対する課題解決の支援策の開発・提案に取り組むことで、新たなビジネスを生み出す考え。病院のチェーン化なとで発足が予想される共同購買組織等に対し、購買製品の管理などの支援も視野に入れる。
新物流センターは、同社グループを挙げて取り組んできたメーカー物流と卸物流、医薬品等専用輸送のターミナル機能を持つ複合型施設で10月28日に竣工。全ての機能を1つに集約したのは日本で初めて。サプライチェーンを短縮化することで物流に発生するコストを削減。また、特に厳格な管理が必要なスペシャリティ薬は、メーカー出荷から納入まで、より一貫した管理が可能になり、差別化を図る。
浅野専務は、同社が構築に取り組んできたサプライチェーンを強化するには、「お得意様(医療施設)が困っていることに対し、解決するものをしっかり提案すること」が必要だとし、「第2ステージ」と位置づけた。その具体策の一つは、11月に発表したスペシャリティ薬の施設在庫管理のITサービスであり、医療施設で課題となっている廃棄コストの削減に応える。
さらに同社は、医療施設のグループ化・チェーン化への対応を重要課題に挙げ、新たな提供機能、ビジネスモデルの確立が必要だとしている。浅野専務は「病院グループや地域包括ケアでGPO(共同購買組織)が登場するか、まだ分からないが、皆さん自身が仕入れのための物流センターを構築するのは社会的コストとして無駄であれば、こういうインフラ(新物流センター)をどうぞお使いくださいという発想の提案はできると思っている」と述べた。
浅野専務は、「売るモノが変わる、買い方が変わる。エリアの医療の提供の仕方が変わる。これは卸売事業のビジネスモデルを大きく変えてしまうことだと思っている。このような中で、私どもは『環境変化への備えはできているのか』『他の卸、異業種に勝てるのか』という問題提起を社内でしている」と話し、新ビジネスへの取り組みを加速させる姿勢を示した。
新物流センター 2017年1月から順次稼働
新物流センター(写真:スズケン提供)は地上4階建て(延床面積6万8377m2)で、メーカー物流の「エス・ディ・ロジ六甲物流センター」(1、2階)と、卸物流の「スズケン西神物流センター」(3、4階)、ターミナル機能(1階)からなる。関西、中部、中国、四国、九州を広域にカバーする西日本の物流拠点として、2017に年1月から順次稼働する。六甲センターの一部は小野薬品と契約し、1月には各卸に出荷される予定。また外資系メーカーが5月から出荷を始める見通しという。西神センターは4月に稼働する計画となっている。
また、同センターは東日本大震災の反省を踏まえて強化したBCP対応も特徴の一つ。地震、津波、水害を考慮し立地を選定したのに加え、免震装置、医薬品温度管理のため3日以上稼働できる自家発電装置を導入した。浅野専務は、「卸だけのBCP対応ではない。メーカーさんの拠点から得意様までの間のBCP対応をするのが私たちの使命。トラックのターミナル機能を持ったことで、西日本エリアにあるメーカー物流のモノを、災害時にここに一気に集めて、行政・自衛隊とタイアップして災害拠点病院に届ける体制もできる」と、複合型センターのメリットを強調。今後、自治体、メーカーと災害時の体制を詰める意向を表明した。