田辺三菱製薬は11月１日、2017年３月期第２四半期（４～９月）決算を発表し、国内医療用医薬品売上は1519億円、前年同期比3.2％増だった。16年度薬価改定で約６％の薬価引き下げを受けて80億円の減収要因となったが、抗リウマチ薬シンポニーの伸長のほか、DPP-4阻害薬テネリアなど重点品も堅調に伸ばし、増収を確保した。国内医療用薬売上の２割超を占める最主力品で、バイオシミラーが参入しているリウマチなど自己免疫疾患に用いるレミケードが1.9％減（６億円減）にとどまったことも、増収確保の要因のひとつといえる。

国内医療用薬の通期計画は3130億円（前年度比1.6％増）と設定した。上期の好調により、期初計画から122億円上方修正した数値となる。

シンポニーは４月から、ヤンセンとの共同販売のスキームを共同販促に変更し、流通を田辺三菱に一本化した。抗リウマチ薬市場は近年、競争が激しく、情報提供対象病院に両社共同でプロモーションできるようにした方が患者貢献や製品価値の最大化につながるとの判断が背景にある。

シンポニーの上期売上は121億円で、決算上は前年同期実績（61億円、田辺三菱売上分）からほぼ倍増となった。単にヤンセンの売上が今期の上期に上乗せされただけにも見えるが、田辺三菱によると、共同販促の相乗効果が出ており、前年同期のヤンセンの売上（具体的な売上は非開示）を加味すると、今期上期のシンポニーは実質20％強の成長になるとしている。

■シンポニーとレミケードで市場シェア39％

田辺三菱では、関節リウマチに対して皮下注製剤のシンポニーと静注製剤のレミケードで治療提案できる強みがある。自己免疫疾患におけるバイオ医薬品の市場シェア（金額ベース）は、両剤合計で39％とトップで、今後も両剤合計でシェアナンバー１を堅持する方針。

両剤の通期計画は、レミケードは期初計画から38億円増となる664億円、シンポニーも21億円増の254億円と設定した。レミケードの上方修正について道関滋・営業企画部長は同日開いた決算会見で、関節リウマチ適応は競合新薬を中心とした競争激化で減収が見込まれるが、炎症性腸疾患（クローン病、潰瘍性大腸炎など）や乾癬の適応での伸長が期待できることから、上方修正したと説明した。

■連結業績を国内医薬がけん引

上期の連結業績は、売上2041億円（前年同期比1.0％増）、親会社帰属純利益362億円（1.6％増）――だった。国内医薬の好調によって、薬価改定や為替の円高影響などを吸収した。これまで業績を支えた海外ロイヤリティ収入は385億円と11億円増にとどまった。円高の影響が大きく、ヤンセンに導出したSGLT2阻害薬インヴォカナや、同剤とメトホルミンとの配合剤インヴォカメットは90億円と９億円減。一方で、ノバルティスに導出した多発性硬化症治療薬ジレニアは数量が伸びて275億円と17億円増だった。

【16年度中間期連結業績（前年同期比）　16年度予想（前年同期比）】
売上高    2041億1500万円（1.0％増）　4140億円（2.8％減）　（修正前4065億円）
営業利益　478億1600万円（3.0％減）　840億円（2.7％増）　（修正前755億円）
親会社帰属純利益　362億9700万円（1.6％増）　640億円（7.9％増）　（修正前570億円）
＊16年度から国際財務報告基準（IFRS）で開示

【16年度中間期の主要製品国内売上高（前年同期実績）　16年度予想、億円】
レミケード　338（345）664　（修正前625）
シンポニー　121（61）254　（修正前233）
タリオン　74（64）191　（修正前173）
テネリア　80（66）174
レクサプロ　55（43）125　（修正前126）
セレジスト　64（73）123　（修正前122）
メインテート　61（69）114　（修正前107）
クレメジン　39（48）74　（修正前73）
デパス　32（37）62
ウルソ　32（44）60　（修正前67）
ラジカット　30（34）59　（修正前57）
ワクチン計　165（144）376　（修正前336）
インフルエンザ　25（27）120　（修正前111）
テトラビック　50（36）97　（修正前85）
ミールビック　32（25）57　（修正前40）
水痘ワクチン　28（33）55
田辺製薬販売取扱品　68（66）144　（修正前142）
ロイヤリティ収入等　385（374）741　（修正前779）
ジレニア　ロイヤリティ　275（258）非開示
インヴォカナ　ロイヤリティ　90（99）非開示