ファイザー 次の買収の標的はGSKか?:米通信社
公開日時 2015/05/26 03:50
米ファイザーの買収の標的は、昨年買収を試みたアストラゼネカ(AZ)と同じ英国のグラクソ・スミスクライン(GSK)だとの観測がアナリスト筋から出ている。同社は昨年、170億ドルで英・AZの買収を試みたが、AZ側からの拒否や、英政府の強い反対意見を受け、買収を断念した経緯がある。米ブルームバーグ通信が5月20日付で、ドイツ銀行(Deutche Bank)のアナリストが投資家向けの文書で明らかにしたと報じた。
ドイツ銀行(ニューヨーク市)のGregg Gilbert氏は、ファイザーがGSKを買収すれば収益は大幅に上昇するとしている。その上で、「合併はバランスシート改善への道を開き、税金面でもメリットが見込める」と分析した。
ファイザーは、合併のシナージー効果による業績拡大のほかにも、AZの買収を試みたのと同様、本社を英国に置くことで、税金面でのメリット、いわゆるタックス・インバージョン(節税)も見込んでいるとされている。なお、米国政府は昨年、節税のための本社移転について規制強化を図っている。
ファイザーは米最大の製薬企業だが、イアン・リード(Ian Reed) CEOは、従来から、同社の拡大のためにM&Aを視野に入れており、昨年にはGSKに買収オファーをしている。Gilbert氏は、ファイザーが現在も、その意欲をまだ持続しているとの見方を示す。
「ファイザーは目に見える形でバランスシートを改善させ、価値を創造することを急いでいる。ファイザー、GSKの合併については、過去にもメディアが報じているが、我々はそのテーマについて再検討している」と話している。同氏らは、ファイザーの1株当たりの買収価格を想定し、合併オファー後の株価のシミュレーションなどを行っている模様だ。
これに対し、Citi Group(ロンドン市)のアナリスト、Andrew Baum氏は、買収は困難との見方を示すひとりだ。「ファイザーが多額の買収金をつぎ込んだとしても、GSKは英国にとって大きなインフラだ。英国で最大の製薬企業ということもあり、英国政府はGSKをAZよりも独立した上場会社として価値が高いと見ている。そのため、強い抵抗を示すと見ている」と話し、買収は困難と見方を示している。
GSKのアンドリュー・ウィティー(Andrew Witty)CEOは、株価の低迷、業績の伸びの鈍化、中国での賄賂問題などで株主から圧力をかけられているとされている。
ファイザーは、2月にジェネリック医薬品注射剤を得意とするHospiraを170億ドルで買収、合意に至ったことを発表している。この買収は、ファイザーのエスタブリッシュ部門の強化が狙い。GSKの買収により、ワクチン部門やコンシューマーヘルス部門の強化を視野に入れていると思われる。今後の両社の動きに目が離せなくなりそうだ。