バイエル PAH治療薬イロプロストを承認申請 初の吸入型肺血管拡張剤
公開日時 2014/12/26 03:50
バイエル薬品は12月25日、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の適応でイロプロスト(一般名)を日本で承認申請したと発表した。承認されれば国内初の吸入型肺血管拡張剤となる。国外では2003年以降発売されており、長期の有効性と安全性が確認されている。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が取り上げ、バイエルは同省から2010年に開発要請を受けていた。
申請は、多施設共同、非盲検、非対照で行われた国内第3相臨床試験に基づく。対象は、PAH 特異的治療薬に未治療、もしくはエンドセリン受容体拮抗薬(ERA) またはホスホジエステラーゼ5(PDE5) 阻害薬のいずれか1剤あるいはERA とPDE5 阻害薬の2 剤で既に治療されているPAH 患者で、イロプロストの有効性、安全性などを評価した。有効性主要評価項目である12週における肺血管抵抗(PVR)のベースラインからの変化量が改善したほか、副次評価項目である6分間歩行距離についても全般的に改善傾向が認められた。また、安全性、忍容性についても良好な結果が得られているという。
イロプロストは、バイエルヘルスケアが開発した合成プロスタサイクリン誘導体。専用の吸入器を用い、エアロゾル化した薬剤を直接肺血管に到達させることができる。全身への酸素供給が改善され、心臓への負担が減ることから、心臓がより効果的に機能し、呼吸がしやすくなる。吸入器はポケットサイズのバッテリー式で携帯が可能となっている。
同社は2014年4月から慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)治療薬としてアデムパス錠(一般名:リオシグアト)を発売しており、同月にPAHの適応追加申請も行っている。
PAHは、血管収縮により肺動脈圧が大きく上昇し、心不全や死に至る可能性がある進行性の疾患。患者数は100万人あたり15~52人の希少疾患で、死亡率は、診断から1年で15%、3年で32%と報告されている。予後不良の難治性疾患で、新たな治療選択肢が望まれている。