大塚ホールディングスは5月14日、2014年3月期(13年度)業績を発表し、日本市場の医療関連事業の売上は3729億円、前期比6.0%増だった。主力の抗精神病薬エビリファイをはじめ、10年以降に発売した新薬6製品が好調で、業績をけん引した。
大塚HDの医療関連事業の業績は、エビリファイなどを手掛ける大塚製薬、主に抗がん剤をラインナップしている大鵬薬品、臨床栄養などを扱う大塚製薬工場で構成されるが、いずれの事業も増収だった。
エビリファイは13年6月にうつ病・うつ状態の適応追加を取得。13年度の国内売上は、期初計画の360億円には届かなかったものの、前期比20.4%増となる344億円だった。14年度は前期比16%増を計画する。同社は、国内におけるエビリファイのジェネリック登場時期を17年以降と見ており、これまで以上に同薬の価値最大化に取り組み売上拡大を図るとしている。
同社が成長ドライバーと見込む新薬群のうち、抗てんかん薬イーケプラや水利尿薬サムスカは、適応拡大や剤型追加により期初計画を上回る売上となった。イーケプラは、13年5月に小児適応を取得し、8月にドライシロップも発売。これらを受けて13年度売上は158億円と前期比51.3%増だった。サムスカも6月に低用量製剤を発売したほか、9月に肝硬変による体液貯留の適応拡大を行い、売上210億円、64.8%増と大きく売り上げを伸ばした。14年3月には多発性嚢胞腎の適応を取得しており、14年度も37.3%増を計画する。
がん領域も堅調に推移した。OD錠の剤型を追加した抗がん剤ティーエスワンは、ジェネリックが登場したものの売上374億円、前期比1.1%増と微増。13年2月に胃がんと非小細胞肺がんの適応を追加したアブラキサンも伸長し、売上88億円、138.2%増だった。14年度にはグローバル展開で大型化を期待する抗がん剤ロンサーフ配合錠の国内発売を予定している。
◎武田薬品とのボノプラザン共同販促 次期成長ドライバーに
大塚HDの樋口達夫社長は同日の決算会見で、国内医薬品事業の成長ドライバーとして、サムスカやイーケプラなど新製品群の売上最大化に加え、武田薬品が現在申請している酸関連疾患治療薬ボノプラザン(開発コード:TAK-438)の共同販促事業を挙げた。ボノプラザンについては、「消化器領域は大塚にとってCNS、循環器、がんと共に注力分野の1つであり、各領域でバランスよく展開していける」と述べた。ムコスタがジェネリックの影響を受けていることから、ボノプラザンを手掛けることで消化器領域でのプレゼンスを高める狙いがあるものと思われる。
◎北米で伸長のエビリファイ 15年にもジェネリックが登場
大塚HDの連結業績のうち、医薬関連事業の13年度売上は1兆351億円となり、初めて1兆円を突破した。米国でのエビリファイの売上が4555億円、前期比35.6%増と大幅に伸長したことが大きい。現地通貨ベースでも10.7%増で二桁増収だった。
エビリファイは全世界で5757億円を売り上げ、世界医薬品売上ランクで7位に入った。同社は米国での好調な推移について、13年1月に10%弱、さらに6月に5%程度の値上げを行ったことに加え、ジェネリックシェアが拡大する市場にあっても処方量が増加したと説明している。ただ、海外では15年にもジェネリックが登場する見通しになっている。今後の戦略については、中期計画の中で明らかにする意向だ。
なお、同社は14年度より決算期を3月期から12月期に変更するため、14年度計画については4月~12月の9か月間のものになる。13年4月~12月の参考値との比較では、医療関連事業の連結売上高は5.1%増を計画している。
大塚ホールディングス13年度業績
【13年度連結業績(前年同期比) 14年度通期(4-12月)予想】
売上高 1兆4527億5900万円(19.3%増) 1兆2000億円
営業利益 1987億200万円(17.1%増) 1900億円
経常利益 2152億3500万円(16.7%増) 1950億円
純利益 1509億8900万円(23.3%増) 1300億円
【13年度米国製品売上高(前年度実績)億円、14年度予想 前期比%】
エビリファイ 4555(3361)5.1%増
【13年度国内売上高(前年度実績)億円、14年度予想 前期比%】
エビリファイ 344(286) 16%増
プレタール 368(401) 25.2%減
ムコスタ 188(205) 26.2%減
ティーエスワン 374(370) 18.3%減
ユーエフティ 95(112) 20%減
ユーゼル 119(132) 7.6%減
バップフォー 47(56) 7.9%減
アミノレバンEN 55(57) 7.0%減
メプチン 49(52) 10.3%減
プロテカジン 50(59) 12.5%減
アロキシ 110(100) 7.1%増
アブラキサン 88(37) 30.8%増
イーケプラ 158(105) 39.1%増
サムスカ 210(128) 37.3%増
スプリセル共同事業※ 261(120) 0.0%
ゾシンおよびタゾシン(原薬供給)145(124) 13.4%増
診断薬 126(88) 6.7%増
臨床栄養 916(888) 5.8%減
※BMSと大塚製薬の共同販促、製造販売はBMS
エビリファイ、プレタール、ムコスタは日本の売上高。
その他では一部海外売り上げも含む。
14年度予想の前期比は13年度4‐12月参考値と14年度4‐12月計画値から算出した