弘前大学・奥村氏「第Xa因子阻害剤・アピキサバンは高齢者、腎機能低下例には第一選択薬」
公開日時 2014/03/25 03:50
弘前大学医学部附属病院循環器内科・呼吸器内科・腎臓内科の奥村謙教授は、第Ⅹa因子阻害剤・アピキサバン(製品名:エリキュース)について腎排泄率の低さなどを特徴に挙げ、弘前脳卒中・リハビリテーションセンターでは「75歳以上の高齢者、腎機能低下例には第一選択薬として使っている」と述べた。3月24日、ブリストル・マイヤーズ/ファイザー主催のプレスセミナーで講演する中で自身の考えを明らかにした。一方で、脳梗塞の二次(再発)予防については、エビデンスの豊富さや剤型などから、リバーロキサバンを選択しているとし、腎機能や年齢など患者背景に応じて薬剤を選択しているとした。
奥村氏は、新規抗凝固薬が臨床現場に登場してから、ダビガトランエテキシラート(製品名:プラザキサ)は3年、リバーロキサバン(製品名:イグザレルト)は2年、アピキサバンは1年の臨床経験がないと指摘。特にアピキサバンについては、「3月に長期処方があけたばかりということで、90例程度と使用経験が非常に少ない」と前置きした上で、「新規抗凝固薬で脳卒中が発症してしまったという印象はない」と新規抗凝固薬の有効性を強調。同センターでは、これまでワルファリンの適応となっていた非弁膜症性心房細動患者に対して、新規抗凝固薬が第一選択薬としてとって代わるとした。
同センターでは脳梗塞の二次予防の症例が多く、現時点ではリバーロキサバンを選択しているケースが多い。その理由として、奥村氏は同剤の臨床第3相試験「ROCKET AF」、日本人を対象とした「J-ROCKET AF」では半数以上の症例が脳卒中の既往があったことを挙げ、二次予防のエビデンスが最も豊富な薬剤であると説明した。さらに、剤型が服用しやすいことも理由に挙げ、「脳卒中の既往がある人や高齢者はどうしてもカプセルが飲みにくい。リバーロキサバンは小さいので飲みやすいし、粉砕しても飲みやすい」と述べた。
ただし、高齢者や超高齢者、腎機能低下例については出血リスクが増加するとのデータがあることから、リバーロキサバンの投与に際し「やや躊躇するところがあった」と説明。腎機能低下例、高齢者のエビデンスが最も豊富で、出血リスクの少ないアピキサバンが臨床現場に登場したことで、「超高齢者、腎機能低下例ではアピキサバンを選択している」と述べた。
ダビガトランについては、同剤の臨床第3相試験「RE-LY」で、高用量(150mg1日2回)が虚血性脳卒中を含む脳卒中発症抑制効果を示したことから、「強力な脳梗塞予防効果がある。比較的若い患者で確実な脳梗塞予防効果という意味ではダビガトラン150mg1日2回はより良い薬ではないか」との考えを示した。
今後、エドキサバンを含め新規抗凝固薬が4剤になることが見込まれるが、「どの薬剤もワルファリンに比べ、一次予防、二次予防ともに有効」とした上で、「高齢者でもなく、比較的腎機能が良い患者に対しては、どの新規抗凝固薬でも良いのではないか。1日1回、2回などを考え、どの薬剤を選択するか」と述べた。
一方で、新規抗凝固薬を投与しても有効性が十分に得られず、脳梗塞を発症した例については、患者が服用を中止したケースを数例経験していると説明。多くの新規抗凝固薬の半減期が12時間程度であることから、服用中止により、治療効果が得られていないケースがあるとした。その理由として、「患者さん自身がその重要性が分かっていなくて止められた場合と、整形外科領域で何らかの手術をするということで中止してしまった」ケースを挙げた。その上で、「きちんと服用を継続している患者では、発生頻度が低いのではないか」と述べ、安易な服用中止をしないよう注意を呼びかけた。
【訂正】見出しの薬剤名に誤りがありました。お詫びして訂正します(2014年3月25日8時53分)