中外 開発中の肺がん治療薬オナルツズマブ 国際共同P3 の1つで有効性示せず
公開日時 2014/03/05 03:50
中外製薬は3月3日、非小細胞肺がん治療薬として開発中の抗METヒト化モノクローナル抗体のオナルツズマブ(開発コード:RG3638)について、日本も参加する国際共同フェーズ3(P3)の1つであるMETLung試験の中間解析の結果、独立評価委員会から試験中止の推奨を受けたと発表した。戦略的アライアンスを組むロシュのリリースに基づく発表で、臨床的に有用な効果が認められなかったと説明している。現段階では試験の中止は決まっていないとしている。
中止が推奨された試験は、治療歴があるMET陽性進行性非小細胞肺がん患者を対象に、日本を含む世界約30カ国で実施されたもの。オナルツズマブとエルロチニブ(製品名:タルセバ)の併用療法について、エルロチニブ単独投与との比較で有効性と安全性を検証した。予め計画された中間解析において、有害事象は両群で概ね同等だったが、主要評価項目である全生存期間の延長が認められなかった。詳細な結果は近く開催される医学会で発表する予定。
ロシュ最高医学責任者兼グローバル開発責任者のSandra Horning氏は、肺がんは致死性の高いがん腫と指摘したうえで、「新たな治療選択肢が必要とされているため、これらの結果は残念」とコメント。ただ、ロシュグループとしては「引き続きこれらの肺がん患者さんを支援するために注力し、本疾患に対する複数の治験薬について研究を続けていく」としている。オナルツズマブは、グローバルでは肺がん以外でのがん腫でも治験が行われている。
なお、オナルツズマブで進行中の国内治験はこのほか▽EGFR遺伝子変異陽性およびMET陽性の非小細胞肺がん患者への一次療法(国内P2)、▽EGFR遺伝子変異陽性およびMET陽性の切除不能ⅢB期/Ⅳ期非小細胞肺がん患者への一次療法(国際共同P3)――がある。同社によると、EGFR陽性患者の多い日本で先行してP2を開始していたところ、後に国際共同P3も実施が決まったという。国際共同P3は13年12月に開始し、17年4月の終了を目指している。
METは細胞表面に発現する蛋白質で、肝細胞増殖因子(HGF)がMETと結合するとMET蛋白質の二量体化が起こり、がん細胞の増殖や分化を引き起こすとされる。同社によると、MET受容体を標的とした抗体医薬は同社以外でも開発中であるが、発売に至った成分はないという。