ひだクリニック・肥田院長 統合失調症薬の持効性注射剤 再発リスク低下と患者の生活時間増やす可能性
公開日時 2013/10/31 03:50
「ひだクリニック」(心療内科、内科、精神科、神経科 千葉県流山市)の肥田裕久院長は10月29日、東京都内でヤンセンファーマが開いた統合失調症薬のメディア向けセミナーで、数週間に1回投与の持効性注射剤(第二世代)について講演した。継続的な投薬が可能になることで再発リスクを抑える一方、患者も服薬管理に振りまわされにくくなることで生活時間を増やせる可能性があると指摘した。経口剤の処方は8割以上という背景には、患者が持効性製剤の存在を知らないケースも少なくなくない上、注射は嫌がるだろうと同製剤が選択肢に入っていない医師の存在もあると指摘。患者の状態に応じて選択できるよう医師、患者双方に情報提供し、薬剤選択ができる環境をつくる必要性を強調した。
肥田院長によると、服薬中断日数が長くなるほど再発(再燃)による再入院率が2割程度まで高まるが、実際、服薬習慣が乱れる患者は退院後半年で約4割に上るというデータもあり、再発を抑えるには服薬コンプライアンスが重要。しかし、患者が病識を持つことが難しく、経口薬の場合服用をいやがったり、家族や医師らによる服薬確認が、のんだ、のまないを巡るトラブルになってしまうケースもあるという。
その中で持効性注射剤は、2週~4週の一度の注射で効果が安定的に続くため、再発リスクを抑えることが可能になるほか、患者にとっても「服薬管理以外のセルフケアの支援や精神障害に伴う生活上の困難の支援に時間を使える」ようになる可能性があると指摘した。
持効性注射剤が合う患者像について、肥田院長の場合は「初診の全て患者に持効性注射剤を紹介する」とした上で、▽薬剤を整理したい▽副作用で悩んでいる▽服薬管理などを巡って家族関係に課題がある場合--が想定されるといい、全患者の3割強に使用しているという。持効性注射剤に切り替える場合は、半年くらいかけて他の薬剤を整理していく。
同院長は、治療目標は単に症状を抑えるのではなく、患者自身が思い描く生活に向け「再発防止や社会復帰がゴール」とすることを見据えながら、「同じ薬剤も多様な剤形があり、患者自身がそれを選べること、そしてこれなら続けられると患者自身が考え、選択すること」にあることを強調した。
ヤンセンが扱う第二世代抗精神病薬の持効性注射剤には2週間に1回投与のリスパダールコンスタ筋注用(リスペリドン)があり、13年9月には4週に1回投与のゼプリオン水懸筋注シリンジ(パリペリドン)が承認された。