FDA(食品医薬品局)修正法において規定された安全性情報関連のラベル変更についての最終ガイダンス「安全性ラベル変更‐連邦食品・医薬品および化粧品法505項(o)(4)の施行」(Safety Labelling Changes- Implementation of Section 505(o)(4) of the Federal Food, Drug and Cosmetic Act:FDAAA)が作成されたが、同ガイダンスをめぐり、FDAと製薬企業の考え方の相違が浮き彫りになっている。
同最終ガイダンスは、FDAAAのもとで求められる明示権限をいかに行使するかを説明している。FDAは、必要があれば、医薬品もしくは生物製剤のラベルに記載さるべき「新規安全性情報」が必要と認識した場合には、一定のラベル変更を命令できる。2007年の法律では、FDAにラベル変更をタイムリーに可能にするために罰金を科すことなどの権限を与えていた。今日まで、FDAは、11品目8件のラベル変更を命じている。
2011年4月のガイダンス案では、FDAは、新規の安全性情報をどう評価するか、安全性情報関連ラベルの変更の必要性について個々の医薬品企業(スポンサー)や当該薬剤と同一クラスの薬剤を発売している複数の医薬品企業にどう伝達するか、また、ラベル変更についての協議や同変更についての情報開示をどう行うかなどを説明した。
ガイダンス案についての意見で、医薬品業界団体や個々の企業は、FDAが、FDAAAに基づく変更を承認するまえに同一クラス内の薬剤すべてについてラベル変更するかどうか、また、FDAが企業に対して他の影響を受ける製品やラベルについての提案などを伝えるかどうかを含め、あるクラスの製品にまたがるラベル変更をどう取り扱うかに関して明確化を求めた。
最終ガイダンスは、企業からの意見で求められた詳細な点には言及しなかったようだが、企業が一層の明確化を求めた、クラス全体のラベル変更については対応した。また、最終ガイダンスは、個々の企業とFDAの間の製品のクラスにおけるラベル変更についての意見の相違をどのように扱うかについても言及した。
同ガイダンスは、同一クラスのラベルの決定は、全ての補足資料や反論などの検討が終了するまでは行わないとするガイダンス案の段階での見解を繰り返した。FDAは、「もし、個々の製品についての異なる表現を裏付ける正当化され科学的合理性がない限り」、同日付けで、一定のクラスの全製品共通してラベル変更を実施する考えである。
しかしながら、最終ガイダンスは、もし、1社以上の企業が、一定のクラスの薬剤についてFDAの改定案に同意しなかった場合、どうなるかについて詳細な点に踏み込んだ。
企業が改定案に同意できなかった場合、関係企業すべてにその事実を伝達、当該企業とは改定案につき協議期間を30日として、協議を開始、改定案の再検討や代替案の検討などを行う。その間、FDAは企業が受け入れられるようにラベル変更の表記などを提案するが、最終的に企業と同意できなかった場合、FDAは必要な変更を企業に命ずることが出来るなどの内容が含まれている。
一方、FDAは、医薬品業界が明確化を求めていた「何が新規安全性情報を構成するのか」という問題に対しては、その「新規安全性情報」という法律用語が、同法に基づくラベル変更が承認されるときに決定されるという点で、大きな裁量権を与えていることを示唆している。
しかし、FDAはガイダンス案でも示したように、連邦食品・医薬品および化粧品法における「新規安全性情報」の定義については、臨床試験、副作用報告、承認後試験、ピアレビューのある学術誌、市販後のリスク発見・分析システム、あるいはFDAが適切とした科学的データなどに由来するものとしている。
その情報は、当該薬が承認後、もしくはリスク評価・緩和戦略(REMS)が要件とされた後などで、FDAが認知した重大なリスクあるいは想定外の重大なリスクが関与していなければならない。
最終ガイダンスでは、「新規安全性情報の法律的定義については、FDAが医薬品のラベルにおいて重大なリスクについての情報を追加すべきと決定したときに、追加することを申請者に求めることが出来るよう幅広く考えるというのがFDAの見解である」と記述されている。
一方、FDAは、FDAAAの適用外のラベルにおいてすでに記載されているリスク情報のマイナーな改定の例を示している。
「細胞障害性化学療法剤のラベルにおける、既知のリスクである好中球減少症の情報の更新あるいは糖尿病治療薬による既知の低血糖のリスクについての情報の更新は、今回の法律で変更を求められるものでない」としている。