米食品医薬品局(FDA)は、新たな関節リウマチ薬の開発ガイダンスを作成した。「関節リウマチ:治療医薬品の開発」(Rheumatoid Arthritis: Developing Drug Products for Treatment)と題するガンダンス案は、1999年に制定されたガイダンスに代わるものとなる。新規ガイダンス案では、用量選択、有効性エンドポイント、プラセボと比較対照実薬の使用法、薬剤と自動注射器のような医療機器との併用製品などについてのFDAの現在の考え方を示している。
1999年に策定された現行ガイダンスは、臨床奏効における有効性の閾値や身体的機能の改善を示す十分なエンドポイントと同じように、用量設定試験および用量設定試験の適切なエンドポイントに重点を置いている。新規ガイダンス案では、試験期間には柔軟性を持たせているが、12週間以上続く試験については、プラセボではなく実薬を使用することを明確にしている。
しかし、1999年ガイダンスが発行されて以降、RAの治療現場は9剤のDMARDs(疾患修飾薬)が承認されるなど大きな転換期を迎えた。同ガイダンスが発行される以前は、Amgen/Immunex(現ファイザー)のEmbrel(エタネルセプト)が、唯一の生物製剤のDMARDだった。(別表参照)
RAの治療法の進化が新規ガイダンスを必要としたといえる。FDAは、新ガイダンス案を発表した5月31日付けの官報で、「FDAの現在の考え方は、1999年ガイダンスが発行されて以来の臨床開発プログラムや多数の有効な治療法が利用できるために標準治療が変化してきたことに影響を受けている」と述べた。さらに、「RA治療薬の開発は、RA治療<装備一式>、GCPおよび治療目的の現状を反映して進化してきた」と付け加えた。
新規ガイダンス案は、非臨床試験、若年性特発性関節症、バイオシミラーについては対象としていない。新規ガイダンス案は、用量設定試験、広範囲の用量設定、薬物動態学的および薬力学的考察に基づいた用量レジメンの重要性を強調している。また、用量設定試験がフェーズIIIで用いられるエンドポイントとは別の有効性エンドポイントを求めていることを示唆している。
同ガイダンス案は、「変化に敏感なエンドポイントを使用することは、用量反応の評価においてより良い識別能力を与えくれる」と述べている。
FDAは、アメリカリウマチ学会(ACR)の奏効率基準は、患者の関節の圧痛点および関節腫脹の数が少なくとも20%、50%あるいは70%改善されたとしているが、臨床的エンドポイントは(圧痛と腫脹に)二分されている。しかし、FDAは、このエンドポイントが二分されているため、用量反応の評価には最適でない可能性があり、また、患者の小集団では、リスポンダーの比率を使うことは信頼性がないと話している。
新規ガイダンス案は、変化に対してより敏感であり、かつ用量反応評価を目的として、ACRリスポンダーインデックスに対するより良いオプションを提供する可能性のある他のエンドポイントや連続的変数を示唆している。これらは疾患活動性スコア28(DAS28)などを含んでいる。
FDAは、試験を通して、複数のエンドポイントでの用量反応を評価することが重要と話している。「エンドポイントは、用量の相違がより良く把握できるように治療プラトーになりそうな時(たとえば、2週間から8週間)の前の時点で評価されなければならない。遅い時点での評価(たとえば12週間)は、慢性的使用での臨床的効果を推定するのに有益な可能性がある」としている。
RAにおける販売承認取得を確実にするには、基本的に臨床的奏功と身体機能に関する有効性を示す必要がある。構造的破壊の進行や臨床的寛解など患者にとって重要な他の部分における有効性を示すことは、当該薬剤の特徴や臨床現場での使用の特徴を提供することが出来る。
臨床的奏功について、ガイダンス案では、「ACR20の奏功基準は、RA疾患活動性の減少を示す尺度として今後も受容すべきである」と指摘、「加えて、ACR50およびACR70のような高いレベルの奏功、ならびにDAS28で2.6以下のような低疾患活動性の尺度は、臨床奏功の分野で有効性を裏付けるエビデンスとして用いられる」と述べている。Health Assessment Questionnaire-Disability Index(HAQ-DI:健康評価質問票による機能障害指数)が、身体機能改善の状態を示すために用いられる。
FDAは、プラセボ対照試験での12週間のデータは「臨床奏功および身体機能の分野では、有効性のエビデンスを示すために一般的に受け入れられる」としている。1999年のガイダンスでは、適応症により、試験期間を6か月から5年の範囲を示唆していた。
FDAは、治療環境の変化が12週間を超えるプラセボ対照試験を受け入れられないものにしていると指摘する。
「いくつかの領域における有効性の評価は、長期の比較臨床試験を必要とするかも知れない。しかし、有効なRA治療法が利用でき、早期に疾患活動性を管理できる早期のかつ確立した治療法へとパラダイムシフトしている状況は、長期(たとえば12週間を超えて)にわたり患者にプラセボや有効でない治療法に曝露することを制限する合理性をもたらしてきた。従って、12週以上の試験では疾患活動性を持つ患者がレスキュー・トリートメントへ逃れるように対照群として実薬を入れるべき」としている。
しかし、安全性について、12週では長期安全性評価には不十分として、FDAは、ICHガイドラインで推奨されているよりも大きな規模かつ長期の市販前安全性データベースを求める可能性がある。
ガイダンス案は、「この(FDAの)要求は、これらデータの解釈を容易にするために実薬群を伴った新規化合物について少なくとも1年分の比較安全性データを含める可能性がある」としている。また、短期安全性データは当該製品が新規化合物でない場合に考慮されうることを付け加えている。
<別表>1999年以降に承認されたRA治療薬のDMARDs
製品名(一般名)、製薬企業、作用機序、承認年の順。
*Remicade(インフリキシマブ)、セントコア、TNFα阻害剤、1999年
*Kineret(anakinra)、アムジェン、IL-1受容体拮抗剤、2001年
*Humira(アダリムマブ)、アボット、TNFα阻害剤、2002年
*Orencia(アバタセプト)、ブリストルマイヤーズスクイブ、T細胞活性化阻害薬、2005年
*Rituxan(リツキシマブ)、ジェネンテク/バイオジェン、坑CD20陽性B細胞depletor、2006年
*Simponi(ゴリムマブ)、セントコア、TNFα阻害剤、2009年
*Cimzia(セルトリズマブ)、UCB、TNFα阻害剤、2009年
*Actemra(トシリズマブ)、ジェネンテク/ロシュ、IL-6受容体阻害剤、2010年
*Xelianz(トファシチニブ)、ファイザー、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤、2012年
The Pink Sheet 6月10日号