FDA 吸入炭疽病にraxibacumabを承認
公開日時 2012/12/20 04:00
米食品医薬品局(FDA)は12月14日、炭疽菌の胞子を吸入することで引き起こされる感染症である炭疽病の治療薬raxibacumabを承認した。
同剤は、大量かつ不可逆的な組織の障害や死をもたらす炭疽菌の毒性を中和するモノクローナル抗体。同剤は、炭疽病の治療だけでなく、代替薬がない場合か効果が不十分な場合の炭疽病の予防の適応も取得した。
炭疽菌は、その胞子は破壊しにくく、空中に容易に散布が可能なことからバイオテロリズムの道具として使用される恐れがある。
2001年9月米国で、放送局や一部連邦議会議員に対して、郵便で炭疽菌が送付され、5名の死亡者、10名以上の負傷者を生んだバイオテロ事件が発生し、米国社会を大きく揺るがし、炭疽菌について世界中の注目を集めた。同剤は、炭疽菌が非常に致死的な細菌であるために、ヒトでの有効性の検証は十分に出来ないとの観点から、ヒトでの臨床試験が倫理的問題や他の事情で実施できない場合に十分に管理された動物試験でのデータのみで薬剤の承認を認める「動物有効性ルール」(Animal Efficacy Rule)を活用することによって承認された初の抗体医薬となった。サル、ウサギなどの動物試験で有効性が示された。安全性については、326例の健常人対象に確認された。主な副作用は、発疹、四肢部疼痛、掻痒、眠気など。FDAは、同剤については、アンメットメディカルニーズが高いこと、十分な代替薬がないことを考慮、ファストトラック、優先審査、希少疾病薬の指定を行っていた。
FDA医薬品評価研究センター(CDER)のEdward Cox抗菌剤製品部長は、「炭疽菌によるバイオテロが発生した場合、抗生物質のほかに、raxibacumabが有用な治療法になる」と指摘したうえで、「抗生物質は、炭疽菌感染の予防と治療で承認されているが、同剤は、炭疽菌が産生した毒性を中和するという作用をもつ初めて承認された薬剤だ」とraxibacumabの新しい作用機序に期待感を示した。
同剤は、米ヒューマン・ゲノム・サイエンス(本社:メリーランド州ロックビル)と米保健福祉省(HHS)バイオメディカル先進研究・開発機関(Biomedical Advanced Research and Development Authority)との共同開発。