バイエル薬品・グート社長 経口抗凝固薬イグザレルト 4月中の発売開始見込む
公開日時 2012/04/06 04:01
バイエル薬品のセバスチャン・グート社長は4月5日、東京都内で開いた2011年業績会見で、経口抗凝固薬イグザレルト(一般名:リバーロキサバン)を4月に、滲出型加齢黄斑変性用薬VEGF Trap-Eye(アフリベルセプト)を今年中に、それぞれ上市できることを期待していると語った。イグザレルトは1月に承認を取得し、薬価収載手続きの段階にある。グート社長は、これら2つの新薬は同社の成長を加速させるとし、同社がこれまで目標として掲げていた売上2000億円(薬価ベース)を「最速で2013年に達成できる」との見通しを示した。
バイエル薬品の11年売上は1913億円(同)で、前年比5.5%増だった。高脂血症治療薬ゼチーア、抗がん剤ネクサバール、高リン血症治療薬ホスレノール、月経困難症用薬ヤーズ――といった「フォーカス製品」がそれぞれ2ケタ成長した。特にホスレノールは高リン血症治療薬領域で売上ナンバー1という。これらの新薬群の成長などにより、同社売上に占める長期収載品比率は、07年の85%が11年には53%に縮小。そしてイグザレルトとVEGF Trap-Eyeの登場で今後2~3年中に長期収載品比率は4割を下回るとしている。
◎イノベーション重視に組織再編 同社指定の長期収載品はMRディテールなし
イグザレルトなどの上市を見込んで同社はこれまでにMRを増員し、4月1日時点のMR数は約1350人(新卒入社除く)。12年の新卒入社者はMR採用が115人で、内訳は男性43人、女性72人と女性の採用比率を高めた。なお、11年のMR採用は105人、13年は60人の採用を計画している。
また、イグザレルトなどの上市を成功させるため組織を1月1日付で再編した。具体的には▽循環器領域(主要製品:イグザレルト、ゼチーア、ホスレノール、肺高血圧症用薬リオシグアト(一般名、P3段階))▽腫瘍・血液領域(ネクサバール、コージネイト、抗がん剤レゴラフェニブ(一般名、P3段階))▽婦人科・皮膚科領域(ヤ ーズ)▽眼科領域(VEGF Trap-Eye(11年6月に申請))▽ラジオロジー&インターベンショナル――の各事業部を設け、長期収載品を手掛ける事業推進本部も置いた。各事業部のMR数の内訳は非開示。
このうち事業推進本部では特約店営業やeディテールを行い、「MRのリソースをかけずにプロモーションする」(グート社長)。ただ、同本部で手掛ける長期収載品は同社指定のものだけで、例えば同社で最も売上のある高血圧・狭心症治療薬アダラートは循環器領域事業部が扱い、売上2番手の造影剤イオパミロンはラジオロジー&インターベンショナル事業部が扱う。事業推進本部で扱う長期収載品には例えば糖尿病治療薬グルコバイが入るようだ。
グート社長は、同社指定の長期収載品にMRリソースを投じないことについて、「新薬や強力なパイプラインからイノベーションビジネスにフォーカスして大丈夫と判断した。思い切った舵取りをしても良いと判断した」と述べた。なお、同社が12年に予定しているP2とP3のプロジェクト数は26件ある。
【11年の製品売上(薬価ベース)】
高血圧症・狭心症用薬アダラート 310億3000万円(7.2%減)
造影剤イオパミロン 263億4200万円(4.2%減)
高脂血症用薬ゼチーア(バイエル分) 253億1300万円(23.8%増)
高リン血症用薬ホスレノール 193億9800万円(43.0%増)
腎/肝細胞がん用薬ネクサバール 159億2900万円(9.7%増)
血友病用薬コージネイトFS 96億7800万円(7.8%増)
血栓予防用薬バイアスピリン 79億3700万円(0.1%減)
食後過血糖用薬グルコバイ(バイエル分) 60億100万円(21.5%減)
MRI用造影剤マグネビスト 56億7000万円(8.6%減)
多発性硬化症用薬ベタフェロン 53億6500万円(1.6%増)
MRI用肝臓造影剤EOB・プリモビスト 35億200万円(10.3%増)
月経困難症用薬ヤーズ 31億3700万円(939.3%増)
乳がん用薬タスオミン 28億6300万円(9.0%増)