治験と臨床研究の統一でシンポ 厚労、文科、経産の担当官と医療関係者が意見交換
公開日時 2010/09/08 04:00
「治験と臨床研究の統一は可能か」と題したシンポジウムが9月7日、慶応大三田キャンパスで開かれた。このシンポは千葉大、京大、慶応大が共同で開催したもの。適応外使用や未承認薬問題が叫ばれる中で、研究者主導の臨床研究とGCP基準に基づく治験とのシステム的な統合を求める声があがっている。シンポジウムでは、米FDAのように研究者主導の臨床研究の結果を薬事承認に使用できる「日本版IND(Investigational New Drug)」の設置などが提起された。ただ、法的裏づけや人材育成、被験者保護を含む倫理面での整備などを求める意見も多く、この問題におけるハードルの高さも明るみとなった。
シンポの開催趣旨を説明した京大医学研究科薬剤疫学分野の川上浩司教授は、研究者主導の臨床研究が現在の制度では承認データとして使えないことをあげながら、研究者主導の臨床研究を薬事法で規定された治験と制度的に統合する議論について、まずは関係者間でのコンセンサスを得る必要があると指摘した。
これを受けて基調講演に臨んだ先端医療振興財団の井村裕夫理事長は、適応外使用のエビデンス集積を目的とした介入研究の多くが研究者主導で行われていることに触れ、法律的な裏づけを得た上で、承認データとして活用できる道を開く考えを示した。具体的な方策として「日本版IND」の実現可能性に触れ、▽PMDAへの申請は研究者主導に限る、▽非臨床試験の要件を考え直す、▽探索型臨床試験のIND(マイクロドーズ試験)、▽倫理感や研究結果の公表の具体的方策――を検討課題にあげた。
このほかシンポでは、厚労、文科、経産、PMDAの担当官のほか、医療関係者や法曹関係者などがそれぞれの立場から見解を述べた。
◎井村理事長 日本版IND「方向として、これが正しいと思う」
シンポ終了後に記者会見に臨んだ井村理事長は、「現在の臨床研究では国際的な評価も得られない。そのためには日本版INDの構築が必要」と強調。そのための条件として、PMDAの強化や臨床研究を行う人材の育成が求められるとの見解を示した。また実施の方向については、「一定の期間が必要」としながらも、「方向としては、これが正しいと思う」と述べた。