東京大大学院医学系研究科代謝栄養病態学の門脇孝教授は2月16日、ノボ ノルディスクファーマ主催の糖尿病プレスセミナーで、GLP-1受容体作動薬のビクトーザ(一般名:リラグルチド)について、糖尿病の発症初期から良い適応になるとの見解を示した。
ビクトーザは、1日1回投与のGLP-1アナログ製剤。臨床試験の結果から見える同剤の特性について門脇氏は▽HbA1Cの目標達成率が高い▽食後血糖を含めた血糖降下作用がある▽体重増加なく、HbA1cを低下させる▽単独療法では低血糖を起こしにくい――と説明。さらに、膵β細胞保護作用を示すことが動物実験などから明らかになっていることを説明し、「糖尿病の進行を阻止する可能性がある」と期待感を示した。
その上で、ビクトーザを用いるタイミングについては、「糖尿病の始まりから良い適応」との見解を表明。▽発症早期からの厳格なコントロールは心血管イベントの発症予防効果がある▽膵β細胞の保護効果があり、糖尿病の進展に伴うインスリンレベルの低下を防げる――の2点を理由に挙げた。ACCORD試験などこれまでのエビデンスから、低血糖や体重増加が心血管イベントの発症にきたす影響が大きいことも指摘。低血糖や体重増加が比較的みられない同剤の有用性を強調した。
同剤の投与対象については、「HbA1C<7.5%であれば、単剤で効果を示す可能性がある。HbA1C≧8.0%であれば、(現在保険適応がある)SU薬との併用を考慮する」と述べた。
一方、安全性については、動物実験で甲状腺がんの発現がみられているが、治験データについて「詳しいデータをフォローしたが、人において起こさないことを確認し、米国で承認されている」と説明した。また、膵炎については、糖尿病患者では非糖尿病患者よりも増加するとした上で、ビクトーザについては有意差を示すデータはないとした。
そのほか、消化器症状の発現頻度は、用量を漸増することで軽減することも紹介した。門脇氏は、「作用機序が明確」と同剤を評価し、この点が安全性の観点からも重要とした。その上で、「長期安全性については今後の課題」との見解も示した。
なお、ビクトーザ皮下注18mgは、1月20日に、厚労省より「食事療法、運動療法で十分な効果が得られない、あるいは食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア(SU剤)を使用して十分な効果が得られない2型糖尿病」を適応に、承認を受けている。