自民党調査会・田村会長 病院・介護施設が経営悪化「前回の報酬改定が十分機能していない」危機感表明
公開日時 2025/04/15 04:52

自民党社会保障制度調査会(田村憲久会長)は4月14日、厚労省から医療・介護・障害福祉分野の経営状況と賃上げ状況について報告を受けた。2000年の介護保険制度創設後、初の介護職員数の減少が認められたほか、病院・介護老人福祉施設とも、近年の物価高騰に伴う事業利益の悪化が顕著になった。特に、病院は費用の50%超を占める人件費増に加え、人件費以外も軒並み事業収益の増加率(+10.3%)を上回る伸びで推移していた。田村憲久会長は会議冒頭の挨拶で、「前回の報酬改定が十分に機能していない」と危機感をあらわにしながら、「骨太の基本方針に向かってどのような文言を入れていくのか議論させていただきたい」と強調した。
この日の調査会に厚労省は、医療・介護・障害福祉分野の賃上げ状況を報告。2024年度の賃上げ状況をみると、全産業平均5.1%に対し、医療は2.74%、介護は4.6%。また、賃金賞与込み給与の対前年変化率は、全産業平均の104.6%に対し、看護職員は102.4%、介護職員は101.0%と、それぞれ下回っていた。一方、医療・介護分野の有効求人倍率が高止まりしているのに対し、介護職員の数は2000年の制度創設後初めて減少したことが分かった。
病院の2018年~2023年の収支構造の変化をみると、事業収益の10.3%増に対し、事業費用は14.7%増で、特に費用の半分を占める人件費が10.7%増となり事業利益の悪化を招いている状況が報告された。
◎田村調査会長「人件費を上げるために院長が給料を下げざるを得ないという話を聞く」
田村憲久会長は、「人件費を上げるために、例えば院長が給料を下げざるを得ないというような状況を各地でお聞きをする」と述べ、「急激な賃金、物価の高騰に十分に対応できるような報酬改定の内容になっていないというのが現状だ」との認識を表明した。また、「補正予算など対応させていただいているが、まだまだ十分に行き渡っていない」とも指摘した。
◎衛藤介護委員長「骨太と年末の予算編成に向けて議論になるが、それで間に合うのか」
一方、自民党社会保障制度調査会介護保険委員会の衛藤晟一委員長は、米・トランプ関税に対する経済対策として「一次給付金でやるのか、あるいは消費税減税でやるのか、という問題が起こっている」と述べながら、「消費税をカットするとなると社会保障費を5%削ることになる。そうすると15兆円ぐらいは出さなければならない。また国債発行となったら、おそらくもう前向きにいかないだろう」と警鐘を鳴らした。その上で衛藤委員長は、「骨太と年末の予算編成に向けてという議論になると思うが、それで間に合うのか。本気で議論しないと(地域医療、病院、介護施設は)潰れるのではないか思っている」と警鐘を鳴らした。
◎社会保障関係費の財政フレームのあり方に注目「骨太の基本方針に向かって議論」
物価高騰など社会経済情勢の急激な変化に加え、トランプ関税に伴う中期的な税収悪化など、社会保障関係費の財政フレームのあり方をめぐり注目が集まっている。「骨太方針2024」では、2025年度から2027年度までの3年間について「これまでの歳出改革努力を継続する」と明記している。2013年以降の歳出改革路線を継承する流れで、社会保障関係費は、「実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる」との方針を堅持したものだ。
調査会後に記者団の取材に応じた田村憲久調査会長は、「高齢者が伸びる範囲で抑えるっていうのはもうすでに穴が開いている」と疑義を唱える。ただし、骨太方針2024で、「日本経済が新たなステージに入りつつある中で、経済・物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程において検討する」との文言が明記されていることを捉え、「やろうと思えばできる」と強調。これまでの財政フレームの慣習にとらわれない議論の必要性にも言及した。
田村会長は、この日の調査会について、「まずは現状を把握したところ」としながらも、「我々も分析させていただきながら、骨太の基本方針に向かってどのような文言を入れていくのかを議論したい」と強調した。