JCRファーマ・芦田会長兼社長、新工場で技術開発強化 「治療法がない世界を変える」次なる成長に意欲
公開日時 2025/04/09 04:49
JCRファーマの芦田信代表取締役会長兼社長は4月7日、神戸市にある原薬工場内でメディア説明会を開き、「今後の50年に向けて希少疾患を一番のターゲットにしながらも、全ての人々にとって治療薬のない世界を変えていきたい」と意欲を示した。創業50周年を振り返りコメントしたもの。原薬工場の隣接地には総額約250億円を投じた製剤工場の建設が進められており、2027年の稼働を目指している。同社ではこの10年で従業員数が2倍以上に増加しており、芦田社長は、「若い社員が希望を持ち、治療法のない疾病に画期的な治療薬を生み出すことを期待している」と前を見据えた。
◎原薬工場、感染症パンデミック時に備えた生産体制
メディア説明会が行われた原薬工場は、神戸市西区の神戸サイエンスパークセンター(KSPC)内にある。21年にアストラゼネカから新型コロナウイルスワクチンの原液製造を受託し、厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」の一環で建設された。29年度末までは感染症パンデミック発生時に迅速にワクチンを生産できる体制を維持しつつ、通常時は同社の希少疾患治療薬などの研究開発・製造を担う。現在は同社の独自技術J-Brain Cargoを用いた治験原薬の製造が行われている。
原薬製造において同社は、使い捨てのバックやチューブなどを用いたシングルユーステクノロジーを採用。品目切り替え時のタイムロスを最小限に抑え、少量多品種の医薬品開発に柔軟に対応する。見学会では、原薬工場がグローバルGMPに準拠し、フロアを分け独立させた品質試験に対応可能な施設のデザインやウイルス等を含む排水を熱で不活化させる環境配慮型の設備なども紹介された。一方、27年に稼働予定の製剤工場は、原薬工場と同様、平時には同社が一貫して行うバイオ医薬品の研究から開発、製造までを担う。有事にはワクチン受託生産体制に切り替える計画だ。
◎24年度は赤字見通し、ライセンス契約遅れなどが影響
メディア説明会で伊藤洋・上席執行役員・経営戦略本部長は24年度業績について、18年ぶりの赤字決算になると見通した。年度内に締結を見込んでいたライセンス契約が未締結だったことに加えて、アストラゼネカから受託したワクチン原薬をはじめ安定供給の観点から多めに確保した原材料が使用期限を迎え、廃棄損に計上したことなどをあげた。一方で、「ライセンス契約は今年度の早い時期の締結見込み」と伊藤本部長は話し、今期は黒字転換できると予測した。さらに、「国内の製品の安定した製品売上を研究開発の資金を支える基盤とし、パイプラインにある医薬品の国内外への導出、J-Brain CargoおよびJ-Brain Cargoを応用した遺伝子治療などの独自技術を国内外の製薬会社に導出していくことで、利益を拡大し会社の成長を図っていきたい」と語った。
◎小児希少疾患への挑戦「非効率でも応えていく」
創業以来、売上の20〜35%を研究投資に充ててきたという芦田会長兼社長は、小児の希少疾患という研究開発コストの高さに言及。「ビジネスとしては非効率だが、苦しんでいる子どもたちや患者さん、ご家族の思いに応えたいという一心で取り組んできた」と強調した。