Special Report/米国アバスチン乳がん適応撤回のインパクト(上) (3/4)
公開日時 2012/03/05 04:01
内臓転移がある患者には積極的に投与していきたい
国立病院機構大阪医療センター 外科・乳腺外科
増田慎三氏
国内の臨床第2相試験(P2)は、非盲検非対照試験ではあったが、PFSは12.9カ月(95%信頼区間[CI]:11.1-18.2)で、米国の迅速承認の根拠となったE2100試験を上回る結果だった。
進行再発乳がんの一次治療として、12カ月というPFSを得られる薬剤はほかにない。したがって今回、PMDAが、FDAや欧州の審査機関の判断を参考にしながらも、独自で評価し、承認したことには意義があると考えている。
またグローバルの臨床第3相試験(P3)ではいずれも、OSに有意差はみられなかったが、治療開始から1~2年におけるKaplan-Meierカーブはベバシズマブ群が一貫して上方にある。予後が1~2年という生命予後に直面している患者のOSを必ず延ばすことができると解釈できる。
実臨床では、パクリタキセル+ベバスツズマブ併用療法は、化学療法を必要とする段階での第一選択として処方しており、迅速かつ持続的な効果が得られる(安定した)治療方法だと感じている。重篤な副作用はまれである。病勢の進行が緩やかな患者には不要かも知れないが、内臓転移があるような患者には積極的に投与していきたい。ただし、脳転移を有する場合には、病巣出血などの合併症の危険性もあり、投与前にスクリーニングすることも考慮すべきである。今後、適切な投与時期や併用薬など、最適の投与法についての検討が、我が国に与えられた重要な使命である。