リピトールのASCOT試験でクレストールのhsCRP研究の疑問拡大
公開日時 2010/12/07 04:00
アストラゼネカは、今年2月に高脂血症薬クレストールについて、JUPITER試験を根拠とし、hsCRP(高感度C反応性タンパク)の高い患者が、心疾患・脳卒中リスクの高い患者として、50歳以上の男性および60歳以上の女性、喫煙・LDLコレステロール・高血圧・心疾患の家族歴を持つ患者と並んで、リスクファクターに加えられ、そのリスクをもつ患者に対する心疾患・脳卒中の予防の適応を取得した。しかし、リピトールのASCOT試験結果の分析でhsCRPの有用性を検証した結果、hsCRPとの関連性は示されず、JUPITER試験を否定する結果となった。このほど開催されたAHA(米国心臓協会)の学会で報告された。
hsCRPの有用性については、承認時にも疑問視する見方もあった。しかし、ノースウェスターン大学のDonald Lloyed-Jones氏は、AHAの報告はスタチン治療でのCRPの臨床的有用性に新たなエビデンスを加えることになったと肯定的にとらえている。
JUPITER試験の報告発表時、クレストールの2008年の売上は16億8000万ドルで、2009年売上は21億ドルと25%増を示し、2010年は第1四半期のみで13億ドルを売り上げた。しかし、メルクのVytorinが2008年のENHANCE試験のネガティブなデータ発表の影響を受け売上減少しているので、新規承認の影響の程度は不明確だ。調査会社Decision Resourceは、効能追加の影響は一桁成長率に留まり、ASCOT試験のデータも最小限の影響に留まると見ている。
2011年発表の全米コレステロール・プログラム成人治療パネル(NCEPATP)の新著量ガイドラインの勧告でhsCRPの位置づけがどうなるか待たれるところだ。
(The Pink Sheet 11月29日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから