英NICE SMA治療薬ヌシネルセンを推奨に変更
公開日時 2019/05/28 03:50
英国立医療技術評価機構(NICE)は5月15日、バイオジェン社のアンチセンス核酸医薬品である脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬Spinraza(ヌシネルセン)について、非推奨から推奨に変更したとのガイダンス案を公表した。2018年8月に発表した評価コンサルテーション報告書(Appraisal Consultation Document)ではSMAの治療薬として推奨していなかったが、当該企業が価格を引き下げため、このたび変更となった。
今回のガイダンス案で対象となる患者は、最も重篤とされる小児期に発症するSMAタイプ1。最終ガイダンスは来月公表予定。タイプIIおよびIIIについては、最終ガイダンス発行後に作成する。
NICEは昨年8月の評価コンサルテーション報告書において、ヌシネルセンは長期的な効果が不確定なことや価格が高いことにより、同剤の費用対効果はNHS(英国民保健サービス)のリソースを使用するには見合わないとして非推奨としていた。今回、NICEはバイオジェン社が価格の引き下げに同意、同価格によって費用対効果に見合うとして推奨を決めた。
昨年8月の報告書によると、同剤のNHSリスト薬価は、12㎎1バイアルが7万5000ポンド(1042万5000円、1ポンド=139円換算)。同剤の用法用量は、髄腔内注射で初回投与後、14日目、28日目、63日目、その後は4か月ごとの投与となる。リスト薬価によると年薬剤費は、初年度45万ポンド、翌年以降22万5000ポンドとなる。
今回のNHSとバイオジェンとの価格の合意では、割引額は未公表。今回の合意では、一定の時間を区切ったうえでNHS資金による同剤の使用を認め、その間、有効性についてのデータをさらに収集する。
NICEのMeidert Boysen医療技術評価センター(CHTE)長は、SMA患者にヌシネルセンを推奨できることは喜びとしたうえで、「NICEの評価委員会は、ヌシネルセンが患者にとって重要な一定範囲のアウトカムを改善したことを示したことは承知している。しかし、長期ベネフィットをめぐりかなり不確実性があることも分かった」と指摘した。一方、「本日の発表は、企業が適正な柔軟性を示すことでNHSおよび患者にとって費用対効果のある方法で、患者に重要な治療法を提供できたことを示すものとなった」と企業の対応を評価した。
英国では小児および成人の約600人から1200人がSMAに罹患していると推定されている。