日本整形外科学会 整形外科医のキャンサーボード参加は約5割
公開日時 2018/09/07 03:50
がん患者の治療方針などを診療科や職種の枠組みを越えて話し合う「キャンサーボード」に、整形外科医が参加している医療機関は約5割に上る―。日本整形外科学会が9月6日に開いた会見で発表した。国民の半数が生涯のうちにがんに罹患するリスクがあるとされるなか、がんが影響し移動能力が低下した状態を指す「がんロコモ」の解決に向け、一丸となって取り組む考えだ。金沢大学整形外科の土屋弘行教授は、「がんとがん以外の痛みを識別し、正しい診断と適切な治療に導くのが整形外科医の役割だ」と強調した。
調査は、全国の整形外科研修施設1423施設を対象に、インターネットと郵送で回答を得た。調査期間は18年3月~4月。その結果、キャンサーボードに整形外科医が参加したのは全体の48.8%だった。がん診療拠点病院に絞ると58.5%に上った。
調査結果ではこのほか、骨転移に対する手術について、がん診療拠点病院の87.5%が「自施設の整形外科が対応している」と答えた。また、整形外科が骨転移診療に関わってほしいという他診療科や施設からの要望があると答えたのは78.1%に上った。
◎金沢大・土屋教授 「がんロコモ」の解決に整形外科医の役割強調
講演した土屋教授は、国民の多数ががんに罹患するなか、「整形外科医も積極的にがん診療に貢献していかないといけない」と訴えた。特に「がんとロコモティブシンドローム」の解決に大きな役割があるとして事例を紹介した。
このうち乳がんと診断された82歳の女性患者は、右大腿部痛があったためオピオイドを投与していたが、整形外科を受診した結果、原因は腰部脊柱管狭窄症による神経症状と診断されたという。土屋教授は、「原因となる神経根に対してブロック治療を行った結果、痛みは改善し、オピオイドは減量でき、放射線治療も回避できた」と意義を強調した。