薬食審・第一部会 塩野義の小児AD/HD治療薬など9製品審議、承認了承
公開日時 2019/02/22 03:52
厚生労働省の薬食審医薬品第一部会は2月21日、新薬として9製品の承認の可否を審議し、いずれも承認することを了承した。この中には、塩野義製薬が小児のAD/HD治療薬として承認申請したビバンセカプセル(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)がある。覚醒剤原料を用いているため厳格な流通管理を義務付ける。また、使用実態下における乱用・依存性の評価が下るまでの間は「他のAD/HD治療薬が効果不十分な場合にのみ使用」とし、セカンドラインの位置づけとなった。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ビバンセカプセル20mg、同30mg(リスデキサンフェタミンメシル酸塩、塩野義製薬):「小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
6歳~17歳の患者が対象となる。シナプスに存在する受容体を介して、ドパミンとノルアドレナリンの遊離促進・再取り込み阻害作用を有する中枢刺激薬。神経伝達物質の働きを強めることにより、AD/HDの諸症状を改善すると考えられている。
同剤は、新たに社外委員会を組織し、適正使用管理システムを構築して流通量などを一元管理すること、医療機関や薬局に管理システムへの登録を義務づける。また卸売販売業者に対しては、登録施設以外への納入を禁止する。
これら流通管理の遵守に同意し、AD/HDの治療に精通し、薬物依存を含む同剤のリスク等を十分に管理できる医療機関・薬局のみで扱われるようにすることを承認条件とした。また、「使用実態下における乱用・依存性に関する評価が行われるまでの間は、他の治療薬が効果不十分な場合にのみ使用されるような必要な措置を講じる」ことも承認条件となった。
▽ピリヴィジェン10%点滴静注5g/50mL、同10g/100mL、同20g/200mL(pH4処理酸性人免疫グロブリン、CSLベーリング):「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の筋力低下の改善」「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
▽ハイゼントラ20%皮下注1g/5mL、同2g/10mL、同4g/20mL(pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)、CSLベーリング):「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」の効能・効果を追加する新効能医薬品。再審査期間4年。
対象疾患は国の指定難病の1つ。2か月以上にわたり、四肢の筋力低下やしびれ感をきたす。左右対称性に腕が上がらなくなる、握力が低下して物をうまくつかめなくなるなどの症状がある。国内の患者は約4600人。
ピリヴィジェンでは、筋力低下の改善と、運動機能低下の進行抑制の2つの効能・効果をもつが、ハイゼントラの効能・効果は運動機能低下の進行抑制のみ。基本的には、ピリヴィジェン点滴静注により筋力低下を改善したあと、同剤を続けるか、ハイゼントラ皮下注に切り替えるかの選択ができるようになる。人免疫グロブリンの皮下注製剤は初めて。
海外では18年8月現在、この適応症では、ピリヴィジェンは米国や欧州など36の国または地域で承認済。同じくハイゼントラは7の国または地域で承認済。
▽アセレンド注100μg(亜セレン酸ナトリウム、藤本製薬):「低セレン血症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を経て開発公募品目となり、藤本製薬が開発した。現在まで、セレンの補充を目的とするセレン製剤は承認されておらず、施設ごとの倫理委員会に使用許諾を得たうえで、病院や患者が薬剤費を負担して使用するという状況が続いていたという。
同疾患は、微量元素のセレンが欠乏することでおこる疾患で、視力障害や知覚障害、心筋障害などを主な症状とする。重篤な場合は、不整脈で死に至ることもある。厚労省によると、国内の患者は19万人と推定されている。
海外では、亜セレン酸ナトリウム注射剤は18年10月現在、セレン欠乏症の適応で欧州など17か国で承認済。
▽フォシーガ錠5mg、同10mg(ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、アストラゼネカ):「1型糖尿病」の効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間4年。
同剤はSGLT2阻害薬で、すでに2型糖尿病治療薬として販売されている。SGLT2阻害薬の1型糖尿病適応は、アステラス製薬のスーグラ錠が18年12月に承認を取得。同剤が承認されれば2製品目となる。
海外では18年12月時点で、1型糖尿病に対してはいずれの国・地域でも承認されていない。
▽レブコビ筋注2.4 mg(エラペグアデマーゼ(遺伝子組換え)、帝人ファーマ):「アデノシンデアミナーゼ欠損症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症は、遺伝子変異が原因で酵素のADAの産生できなくなることで、血液中のリンパ球が減少し、感染症を発症しやすくなる指定難病。重症免疫不全や成長障害などを引き起こす。同剤はADAの活性を補い、代謝異常を改善するとされる。承認されれば日本で初めての治療薬となる。
治療の第一選択は造血幹細胞移植だが、困難な場合は酵素補充療法が選択となる。英シグマタウ社が創製し、帝人が同剤を国内独占的開発・販売契約を締結。帝人ファーマが開発してきた。海外では2018年10月に米国で承認済。
▽ロスーゼット配合錠LD、同HD(エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム、MSD):「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」を効能・効果とする新医療用配合剤。再審査期間4年。
小腸からコレステロールの吸収を阻害するゼチーア錠の有効成分であるエゼチミブと、コレステロールの生合成を阻害するロスバスタチンカルシウムの配合剤。MSDは18年にエゼチミブとアトルバスタチンカルシウムを配合したアトーゼットの承認を取得、同年4月に発売し、バイエル薬品と共同販売している。ロスーゼットも両社の契約により、承認されれば共同販売となる。2018年11月現在、海外承認はない。
▽オノアクト点滴静注用50mg、同150mg(ランジオロール塩酸塩、小野薬品):「生命に危険がある心室細動、血行動態不安定な心室頻拍の不整脈で難治性かつ緊急を要する場合」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
主に心臓に多く存在するβ1受容体を選択的に遮断する交感神経緊張の緩和作用により、電気的除細動などで不整脈を停止後、心室細動などの再発を抑制することが期待される。海外では開発されていない。
▽ビンダケルカプセル20mg(タファミジスメグルミン、ファイザー):「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
対象疾患は、トランスサイレチンと呼ばれる4つのサブユニット(四量体)からなる輸送タンパク質の不安定化によって引き起こされる進行性の希少疾病で、タンパク質の凝集、アミロイド線維を形成し、心臓内に沈着した結果、心不全が起こる。「先駆け審査指定制度」の対象品目で、2018年11月に承認申請していた。承認されれば、国内初の治療薬となる。2018年12月現在、この適応症で承認している国・地域はない。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽イノラス配合経腸用液(一般名なし、イーエヌ大塚製薬):経管または経口による栄養補給に用いる類似処方医療用配合剤。再審査期間なし。
高齢者で体格が小さいといった維持エネルギー量が低い患者で栄養管理がしやすいように、1000kcal以上の他の経腸栄養剤より低い1日900kcalの投与でビタミンや微量元素の摂取推奨量や目安量を充足できるように設計された。国内外の栄養学的知見を踏まえ、カルニチン、コリンも配合した。
効能・効果の「一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する」は、他の栄養剤と同様。経管または経口で投与する。
▽ラフェンタテープ1.38mg、同2.75mg、同5.5mg、同8.25mg、同11mg(フェンタニル、日本臓器製薬):「非オピオイド鎮痛剤及び弱オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛(ただし、他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る)」を効能・効果とする対象とする新剤形医薬品。