薬食審 2月22日に第二部会 CAR-T「キムリア」の副作用や前処置に使う医薬品が議題に
公開日時 2019/02/12 03:51
厚生労働省は、2月22日に新薬の承認の可否などを検討する薬食審・医薬品第二部会を開催する。部会では、承認されれば国内初のCAR-T細胞医療となるノバルティスファーマの「キムリア」の副作用、前処置に使う医薬品が議題に上る。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽アクテムラ点滴静注用80mg、同200mg、同400mg(トシリズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「サイトカイン放出症候群」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。迅速審査品目。
対象疾患のサイトカイン放出症候群は、CAR-T療法でよく見られる副作用の1つ。過剰な免疫反応に伴い、細胞から多量のサイトカインが放出され、血中のサイトカイン濃度が高度に上昇することが原因で起こるが、同剤は、血中のサイトカインの上昇を抑えることが期待される。症状の多くは、発熱や筋肉痛などの軽度から中等度のインフルエンザ様のものだが、一部の患者では、重度の低血圧、頻脈、呼吸困難などが誘発され、死亡することもある。
▽デュピクセント皮下注300mgシリンジ(一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「気管支喘息」を対象疾患とした新効能・新用量・その他の医薬品。
同剤は、慢性的な炎症で中心的な役割を果たしているとされるIL-4、IL-13のシグナル伝達を阻害する作用を持つ。サノフィの発表によると、コントロール不良の気管支喘息に対する治療薬としての位置づけ。現行の効能・効果は「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」。
▽スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL(リサンキズマブ(遺伝子組換え)、アッヴィ):「尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
同剤は、炎症に関わるIL-23を阻害する作用を持つ。アッヴィの発表によると、既存治療で効果不十分なケースに対し、12週間に1回の皮下注射で用いる。
▽テリルジー100エリプタ14吸入用、同30吸入用(フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロールトリフェニル酢酸塩/ウメクリジニウム臭化物、グラクソ・スミスクライン):「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」を対象疾患とする新医療用配合剤。
吸入ステロイド(ICS)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤。1日1回投与。
▽スマイラフ錠50mg、同錠100mg(ペフィシチニブ臭化水素酸塩、アステラス製薬):「関節リウマチ」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
アステラスが創製した経口JAK阻害薬。同社の発表によると、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の治療薬として承認申請した。種々の炎症性サイトカインによる細胞内シグナル伝達を阻害することで、関節リウマチにおいて関節の炎症や破壊を引き起こす細胞の活性化や増殖を抑制する作用を持つ。
▽ビクタルビ配合錠(ビクテグラビルナトリウム/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸、ギリアド・サイエンシズ):「HIV-1感染症」を 対象疾患とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。
ギリアドの発表によると、新規のインテグラーゼ阻害薬ビクテグラビル50mg、核酸系逆転写酵素阻害薬のエムトリシタビン200mgとテノホビル アラフェナミド25 mgを配合したもの。1日1回投与。
▽ラビピュール筋注用(乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン、グラクソ・スミスクライン):「狂犬病」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
現在、狂犬病ワクチンを製造販売しているのはKMバイオロジクス(販売:アステラス製薬)のみ。
▽リサイオ点滴静注液100mg(チオテパ、大日本住友製薬):「自家造血幹細胞移植の前治療」を対象とする新有効成分含有医薬品。
小児がんの治療には、抗がん剤や放射線照射を極量まで増やす骨髄破壊的な前治療を行って難治がんを根絶した後に、正常な造血幹細胞を経静脈的に輸注して造血能の再構築を図る「造血幹細胞移植」(HSCT)という治療法があり、チオテパはこの「前治療」に用いる。もともと、同剤はDNA合成阻害作用を持つ抗腫瘍性アルキル化剤で、かつてテスパミン注射液の名称で販売していた。09年に販売を中止したが、海外で造血幹細胞移植の前治療薬として承認されてから、日本でも使えるよう関連学会から要望が出されていた。
学会の要望を受け、厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議は医療上の必要性が高いと判断、同省が行った開発企業の公募に大日本住友が申し出で、治験を実施した。
▽リツキサン点滴静注100mg、同500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「慢性リンパ性白血病」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
抗CD20モノクローナル抗体。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議の検討結果を受けて、厚労省から開発要請されたもの。同剤は、全薬工業と中外製薬が共同販売している。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽フルダラ静注用50mg(フルダラビンリン酸エステル、サノフィ)
▽注射用エンドキサン100mg、同500mg(シクロホスファミド水和物、塩野義製薬)
▽ベプシド注100mg(エトポシド、ブリストル・マイヤーズスクイブ)
▽ラステット注100mg/5mL(同、日本化薬)
▽エトポシド点滴静注液100mg「サンド」(同、サンド)
▽エトポシド点滴静注液100mg「タイヨー」(同、武田テバファーマ)
▽エトポシド点滴静注液100mg「SN」(同、シオノケミカル)
▽キロサイドN注400mg、同1g(シタラビン、日本新薬)
▽シタラビン点滴静注液400mg「テバ」、同1g「テバ」(同、武田テバファーマ)
▽トレアキシン点滴静注用25mg、同100mg(ベンダムスチン塩酸塩、シンバイオ製薬)
:いずれも「腫瘍特異的T細胞輸注療法の前処置」が対象疾患。迅速審査品目。
いずれもキムリアの申請に伴うもの。培養したCAR-T細胞を患者の体内に戻す際に、前処置として投与される。リンパ球中に過剰な免疫反応を抑制する働きをもつ制御性T細胞が多く存在するとCAR-T細胞の働きを抑えてしまうため、前もってリンパ球を減らすために投与する。
▽点滴静注用ホスカビル注24 mg/mL(ホスカルネットナトリウム水和物、クリニジェン):「ヒトヘルペスウイルス6脳炎」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。迅速審査品目。
日本造血細胞移植学会による造血幹細胞移植後ヒトヘルペスウイルス6脳炎の治療薬としての開発要望を受け、厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議が検討、医学・薬学上公知であるとして公知申請が妥当と判断したもの。学会の要望によると、脳炎を発症した20~30%の患者は脳炎により死亡し、生存者のうち約半数は記憶障害やてんかん等の後遺症が認められたと報告がある。日本にはこの適応症を持った治療薬がない。
▽リウマトレックスカプセル2mg(メトトレキサート、ファイザー):「尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。迅速審査品目。
追加する適応症は、日本皮膚科学会からの要望を受け、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が検討、医学・薬学上公知であるとして公知申請が妥当と判断したもの。