薬食審・第一部会 新薬5製品を審議、承認了承 初の高脂血症治療用配合薬など
公開日時 2017/08/02 03:52
厚労省の薬食審・医薬品第一部会は8月1日、新薬5製品の承認の可否を審議し、全て承認を了承した。この中にはMSDが申請した高脂血症治療薬ゼチーアと、同じく高脂血症治療薬アトルバスタチンとの配合薬がある。いずれもLDL-C低下薬で、LDL-C低下薬2成分を組み合わせた配合薬は、承認されれば国内初となる。この配合剤と新有効成分含有医薬品は9月、適応追加は8月の正式承認が見込まれる。
【審議品目とその内容】(カッコ内は一般名と申請企業名)
▽アトーゼット配合錠LD、同HD(エゼチミブ/アトルバスタチン、MSD):「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」を効能・効果とする新医療用配合剤。再審査期間は4年。
エゼチミブは小腸コレステロールトランスポーター阻害薬で、MSDとバイエル薬品がゼチーア錠の製品名で販売している。この薬剤は、その成分と、HMG-CoA還元酵素阻害薬のアトルバスタチンを配合した製剤で、承認されれば、LDL-C低下薬を2成分組み合わせた配合剤は日本で初めて。MSDとバイエル薬品は同剤の共同販売契約を締結している。
原則として、両剤の併用で安定している患者からの切り替え、アトルバスタチンカルシウムで効果不十分な場合に切り替えて使用される製剤と位置付けている。海外では両成分の配合剤は欧州を含む37の国・地域で承認済。
▽リュープリンSR注射用キット11.25mg(リュープロレリン酢酸塩、武田薬品):「球脊髄性筋萎縮症の進行抑制」の効能・効果を追加する新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
承認されれば、「球脊髄性筋萎縮症」(以下、SBMA)に対する初の薬物治療が提供できるようになる。現在は病状の進行に応じた運動療法とともに、誤嚥予防などの生活指導が行われているのみ。
球脊髄性筋萎縮症は、男性だけに発症する遺伝性疾患で、脳の一部や脊髄の運動神経細胞の障害により、手足などの筋肉が萎縮する指定難病。通常30~60歳頃に発症し、10~15年かけて四肢近位部の筋力低下、筋萎縮、球麻痺が進行して、末期には車いすや寝たきりの生活となる。2014年度に特定疾患医療受給証の交付を受けた件数は1223件。
同剤は黄体形成ホルモン放出ホルモン誘導体で、現在の効能・効果は「前立腺がん」「閉経前乳がん」。海外では、SBMAに対する開発は行われていない。
▽献血ノンスロン500注射用、同1500注射用(乾燥濃縮人アンチトロンビンIII、日本製薬):「アンチトロンビンIII低下を伴う門脈血栓症」の効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。
アンチトロンビンIIIは肝臓で合成される凝固制御因子で、血液凝固系のセリンプロテアーゼ活性を阻害する。肝硬変などの肝疾患によりアンチトロンビンIIIの産生が低下すると、血液凝固線溶系のインバランスにより凝固亢進状態となり門脈血栓を生じるが、同剤投与により凝固亢進状態が抑制され、線溶系の二次的な作用により門脈血栓が消失すると考えられている。
門脈血栓症患者は、肝硬変などの重篤な肝機能障害を合併することが多い。重篤な肝機能障害患者では血小板や凝固因子減少による出血傾向があることからダナパロイドナトリウム、ヘパリン製剤、ビタミンK拮抗薬は原則禁忌となっているが、ノンスロンは重篤な肝機能障害の合併患者でも使えることが特徴のひとつとなる。
現行の効能・効果は「先天性アンチトロンビンIII欠乏に基づく血栓形成傾向」「アンチトロンビンIII低下を伴う汎発性血管内凝固症候群(DIC)」。海外では、今回効能追加する「アンチトロンビンIII低下を伴う門脈血栓症」の開発は行われていない。
▽レボレード錠12.5mg、同25mg(エルトロンボパグ オラミン、ノバルティスファーマ):「再生不良性貧血」の効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
トロンボポエチン受容体作動薬。巨核球及び骨髄前駆細胞に存在するトロンボポエチン受容体との相互作用を介して巨核球及び骨髄前駆細胞の増殖・分化を促進させる。
既存治療で効果不十分な再生不良性貧血患者や、抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン(以下、ATG)及びシクロスポリン(CsA)の併用(ATG/CsA)療法の適応となるATG未治療の再生不良性貧血患者に対する新たな治療選択肢となる。
類薬には抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンのサイモグロブリン点滴静注用などがある。海外では17年6月現在、免疫抑制療法抵抗性の重症再生不良性貧血に対して欧米30か国以上で承認済だが、ATG未治療の再生不良性貧血に対して承認している国はない。
▽ビザミル静注(フルテメタモル(18F)、日本メジフィジックス):「アルツハイマー型認知症が疑われる認知機能障害を有する患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
放射性医薬品。PET検査で用い、アルツハイマー型認知症の診断的評価を補助する。
フルテメタモルを医療機関で合成するための医療機器として、放射性医薬品合成設備の「FASTlab」(GEヘルスケア・ジャパン)があるが、この医療機器を使用できる設備がない医療機関でもフルテメタモルを用いたPET検査を実施できるようにするため、同剤が開発された。
同様の作用機序の薬剤に、16年12月に承認されたアミヴィッド静注(富士フイルムRIファーマ)がある。海外では17年3月現在、同様の効能・効果で欧米など33か国で承認済。
ユーシービーの抗てんかん薬ビムパット 単剤療法を承認へ
【報告品目とその内容】(カッコ内は一般名と申請企業名)
報告品目は、PMDAの審査段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断されたもの。
▽ビムパット錠50mg、同100mg(ラコサミド、ユーシービージャパン):「てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余(2024年7月3日まで)。
現行の効能・効果である「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」を改め、単剤療法を認める。海外で単剤療法は、欧米等43か国で承認済(2017年1月現在)。
▽ネオーラル内用液10%、同10mgカプセル、同25mgカプセル、同50mgカプセル(シクロスポリン、ノバルティスファーマ):現行の効能・効果である「再生不良性貧血(重症)」から、「重症」を削除し、全般に使えるよう認める新効能医薬品。再審査期間なし。
同省によると、国内外のガイドラインでは、一定以上の血小板減少症や汎血球減少症等が認められる患者には、重症度などによらず、同剤は標準的な治療薬とされ、今回、非重症患者を対象とした国内臨床試験で、有効性、安全性が確認できたことから、承認事項の一部変更申請がなされた。海外では、再生不良性貧血に対し同剤を承認している国・地域は韓国、台湾(2017年6月現在)。
▽オビソート注射用0.1g(アセチルコリン塩化物、第一三共):「冠動脈造検査時の冠攣縮薬物誘発試験における冠攣縮の誘発」を効能・効果に追加する新投与経路医薬品。再審査期間なし。
冠動脈内に注入して用いる。同効能では米英独仏加豪での承認はないが、国内外の教科書、ガイドラインの記載状況、国内使用実態を踏まえ、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を経て公知申請された。そのため既に保険適用されている。
現行の効能・効果である「麻酔後の腸管麻痺、消化管機能低下のみられる急性胃拡張」では筋肉内注射。「円形脱毛症」では皮内注射で用いる。
サインバルタの再審査期間を2年延長 2020年1月まで うつの小児用法・用量設定に向け
医薬品第一部会は同日、SNRIのサインバルタカプセル(デュロキセチン、塩野義製薬)の再審査期間について、小児の用法・用量を設定するための試験の実施期間を踏まえ、2年延長して2020年1月19日までとすることを了承した。同省担当官によると、試験の内容、期間などの計画から2年の延長が適切と判断したとしている。
同省は小児適応の開発促進のため、小児の用量設定等のための臨床試験を計画する場合、再審査期間を10年を超えない範囲で延長できるとの運用をしている。今回、サインバルタの再審査期間は10年となる。