薬食審 がん免疫療法薬キイトルーダの「非小細胞肺がん」適応追加を審議、24日の部会で
公開日時 2016/11/21 03:51
厚労省の薬食審は今週後半に、新薬の承認の可否などを検討する医薬品部会を相次ぎ開催する。11月24日に第二部会を開き、新薬など7製品の承認可否を審議。この中にはMSDが申請しているがん免疫療法薬で抗PD-1抗体キイトルーダ点滴静注の効能・効果に「切除不能な進行又は再発の非小細胞肺がん」を追加することが含まれる。翌25日には第一部会を開き、塩野義が申請しているSNRIサインバルタカプセルの効能・効果に「変形性関節症」を追加することなど新薬など5製品の承認可否を審議する。
11月24日開催予定の医薬品第二部会
【審議予定品目とその内容】(カッコ内は成分名と申請企業名)
▽トレアキシン点滴静注用100mg(ベンダムスチン塩酸塩、シンバイオ製薬):「低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫」とする新効能・新用量医薬品。
現在、セカンドラインで使用できるが、今回、初回治療で使えるようにすることを審議する。
▽アーウィナーゼ筋注用10000(クリサンタスパーゼ、大原薬品):「急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」からの開発要請品目。
非大腸菌由来のアスパラギナーゼ製剤。大原によると、急性リンパ性白血病の最初の治療で用いる大腸菌由来アスパラギナーゼ製剤の投与後に、アレルギー反応が生じた際に用いる第二選択薬との位置づけ。アレルギー反応が出ると治療が続けられないが、海外では非大腸菌由来のアスパラキナーゼ製剤が標準的に用いられる。日本では未承認のため、医師が個人輸入するなどしていたという。
▽キイトルーダ点滴静注20mg、同100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「切除不能な進行又は再発の非小細胞肺がん」を追加する新効能・新用量医薬品。
がん免疫療法薬の抗PD-1抗体。同剤は「根治切除不能な悪性黒色腫」の効能・効果で9月に承認されたが、企業側が11月の薬価収載を見送った。類薬のオプジーボと同様、高額な薬価のまま患者数が急増することや、オプジーボの緊急的な薬価引下げの詳細が不明だったことが背景にある。
今回の部会でキイトルーダの非小細胞肺がんの適応追加の承認が了承されれば、年内に正式承認される見込み。そして、17年2月1日付で実施予定のオプジーボの緊急薬価下げ後の2~3月にキイトルーダが薬価収載される可能性が高い。キイトルーダは発売時から非小細胞肺がんの適応を持つことになる。
▽リアメット配合錠(アルテメテル/ルメファントリン、ノバルティスファーマ):「マラリア」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合薬。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」からの開発要請品目。
日本では未承認だが、熱帯病治療薬研究班に所属する医療機関にて使用されてきた。同研究班が厚労省に開発要望した。「合併症のない急性熱帯熱マラリア」の治療薬としてはWHOのガイドラインで第一選択薬に位置付けられている。
▽デシコビ配合錠LT、同配合錠HT(エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩、日本たばこ産業):「HIV-1感染症」を効能・効果とする新医療用配合薬。希少疾病用医薬品。
既存抗HIV薬ツルバダの配合成分のうち、HIVの増殖に関与する逆転写酵素を阻害する作用を持つテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)を、テノホビル アラフェナミド(TAF)に置き換えたもの。TAFは、創製したギリアド社が行った他の抗HIV薬と併用した臨床試験において、TDFの10分の1 以下の投与量でTDFと同程度の抗ウイルス効果を示した。
▽オテズラ錠10mg、同錠20mg、同錠30mg(アプレミラスト、セルジーン):「尋常性乾癬、関節症性乾癬」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
経口PDE4阻害剤。免疫細胞内のPDF4を阻害して環状アデノシン一 リン酸(cAMP)を上昇させて炎症性及び抗炎症性メディエーターのネットワークを調節することで、 乾癬の症状を改善すると考えられている。
▽イラリス皮下注用150mg(カナキヌマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「家族性地中海熱、TNF受容体関連周期性症候群、メバロン酸キナーゼ欠損症/高IgD症候群」を追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
これら疾患では、炎症性サイトカインのインターロイキン(IL)-1βの過剰産生を原因に、慢性的な炎症反応や進行性の組織障害を引き起こす。同剤は、IL-1βと特異的に結合することで、炎症を抑える。
【報告予定品目とその内容】(カッコ内は成分名と申請社名)
報告品目は、PMDAの審査の段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断された製品。
▽ヴァクセムヒブ水性懸濁注(沈降ヘモフィルスb型ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体)、武田薬品):「インフルエンザ菌b型による感染症」の筋肉内注射を認めることを報告する。現在は皮下注射で承認されている。
■第一部会 サインバルタの「変形関節症」適応追加、多発性硬化症薬テクフィデラなど審議
11月25日開催予定の医薬品第一部会
【審議予定品目とその内容】(カッコ内は成分名と申請企業名)
▽サインバルタカプセル20mg、同カプセル30mg(デュロキセチン塩酸塩、塩野義製薬):「変形性関節症」を追加する新効能医薬品。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)。承認されれば、疼痛関係の適応症では、線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛に続く3つ目となる。
▽テクフィデラカプセル120mg、同カプセル240mg(フマル酸ジメチル、バイオジェン・ジャパン):「多発性硬化症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
抗酸化応答経路の活性化および抗炎症作用に基づく神経保護作用を持つ経口カプセル剤。
▽リンゼス錠0.25mg(リナクロチド、アステラス製薬):「便秘型過敏性腸症候群」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
グアニル酸シクラーゼC受容体作動薬。腸粘膜上皮細胞に発現しているグアニル酸シクラーゼ受容体に局所的に結合し、同受容体を活性化することで腸管分泌及び腸管輸送能を促進し、加えて内臓痛覚過敏を改善する。
▽ヤーズフレックス配合錠(ドロスピレノン/エチニルエストラジオール ベータデクス、バイエル薬品):「子宮内膜症、月経困難症」の新効能・新用量・剤形追加を審議する。
▽セララ錠25mg、同錠50mg(エプレレノン、ファイザー):「慢性心不全」を追加する新効能・新用量医薬品。
選択的アルドステロンブロッカー。承認されれば、「高血圧症」に次ぐ適応取得となる。
【報告予定品目とその内容】(カッコ内は成分名と申請社名)
報告品目は、PMDAの審査の段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断された製品。
▽リキスミア皮下注300μg(リキシセナチド、サノフィ):効能・効果を「2型糖尿病」とすることを報告する。
▽ヒューマログ注カート、同注ミリオペン(インスリン リスプロ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー):持続型インスリン製剤と併用する必要があるが、今回、単独で使用できるようにすることを報告する。
▽献血グロベニン-I静注用500mg、同静注用2500mg、同静注用5000mg(ポリエチレングレコール処理人免疫グロブリンG、日本製薬):「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の維持療法」との新効能・新用量を追加することを報告する。