エーザイ消化器事業と味の素製薬が統合 16年4月に新会社設立 国内最大の消化器スペシャリティファーマへ
公開日時 2015/10/16 03:52
エーザイと味の素は10月15日、エーザイの消化器疾患領域事業と、味の素100%子会社で消化器領域を強みとする味の素製薬が統合し、新会社「EAファーマ株式会社」を設立する契約を締結したと発表した。新会社は2016年4月に設立する。MR数は約500人、売上は14年度実績で800億円以上。新会社の株式はエーザイが60%、味の素が40%を保有し、エーザイの連結子会社となる。研究開発から販売まで消化器疾患に特化した国内最大のスペシャリティファーマを設立することで、同領域のアンメットニーズに応え、新薬を継続的・効率的に創出することを目指す。
エーザイの内藤晴夫社長(写真右)は同日、都内で会見し、現在の厳しい市場環境下において、製薬企業では営業や研究開発など全ての部門で生産性を向上させることが重要課題になっていると指摘した。その上で、「(生産性向上の)ひとつの解答がスペシャリティファーマを生み出すことにある」と述べ、今回の事業統合、新会社設立に至ったと説明した。また、グローバルに製薬産業を見ても、「幅広い領域を手掛けることは褒め言葉でもなんでもなく、『何をやっているのか』という感じになっている」との認識も示した。
味の素の西井孝明社長(写真左)は会見で、「味の素製薬の資産、ノウハウを新統合会社につなぎ、『国内最大の消化器スペシャリティファーマ』を実現することで社会への更なる貢献を具現化する」と述べ、これまで培ってきたリソースやノウハウをより一層活かせると判断したと説明した。両社は02年から骨粗しょう症治療薬アクトネルで販売提携しており、10年以上の信頼関係が新会社設立のベースにあるとも語った。
■MR約500人 消化器領域に集中
新会社のMR数は約500人になる。内藤社長は「全員を消化器領域に集中する」とし、「非常なパワーを発揮し、製品売上にアップサイドのシナジーが期待できる。(販売製品も増えることから)幅広いソリューションの提供も期待できる」と述べ、消化器領域における営業力の量と質に自信を見せた。
■「リストラとの想念全くない」
エーザイは消化器疾患領域事業を分割し、味の素製薬が同事業を承継・統合する。そして新会社を設立する。新会社の資本金は46億5000万円、代表取締役社長に清水初・現エーザイ代表執行役が、取締役会長に長町隆・現味の素製薬社長が就任する予定。
エーザイは消化器疾患領域事業の営業部門、研究開発部門、管理部門などから約180人を出向させる。このうち営業部門所属が約150人だが、MR数は開示していない。会見ではエーザイに対し、人員削減策の一環ではないのかとの質問が出たが、内藤社長は「領域集中によるあらゆる効率化、生産性アップのためのビジネスの選択を行った。リストラとの想念は全くない。よく理解賜りたい」と強調した。
エーザイは新会社に製品、開発品も移管するが、提携品については提携先との調整を経て順次、可能な限り移管する方針。現時点ではPPIパリエットなどが移管製品となり、移管製品の14年度売上は計約400億円となる。味の素製薬の14年度売上は432億円のため、単純合算すると新会社の売上は832億円となる。これに今後、提携品の売上が加わる。
■長期品多くても収益確保に自信 17年度以降に新製品寄与
両社は新会社設立による意義について、▽販売製品の統合で、上部・下部消化管および肝臓、すい臓を網羅的にカバーできる▽継続的な新薬創出に向けた開発パイプラインの拡充につながる▽各部門・分野での統合シナジーの創出と競争力強化――の3点を挙げた。
新会社の製品ラインナップは、食道・胃・十二指腸に対する医薬品としてパリエット、胃炎・胃潰瘍治療薬セルベックス(エーザイ)など、肝臓・すい臓関係では肝疾患用分岐鎖アミノ酸製剤リーバクト(味の素製薬)、肝不全用成分栄養剤へパンED(味の素製薬)、小腸・大腸関係では経口腸管洗浄剤ニフレック、モビプレップ(味の素製薬)――があり、リーバクトとモビプレップはトップシェア製品。また、成分栄養剤エレンタール(味の素製薬)もある。
ただ、消化器疾患のカバー範囲は広いものの、長期収載品が多い。この点についてエーザイの林秀樹・代表執行役は会見で、「パリエットは利益率が高く、特許が切れていても十分利益を生み出せる」としたほか、現在フェーズ3(P3)の開発プロジェクトを17~19年に毎年上市する計画であることから、「17年以降に新製品が寄与する。中長期的には十分収益があげられる」と語った。
開発品は、P3に▽パリエットの難治性逆流性食道炎の維持療法の適応追加▽潰瘍性大腸炎で開発中の経口薬AJM300▽慢性便秘で開発中のAJG533――が、P2/3段階に慢性便秘で開発中のMOVICOL――がある。提携先のある製品・開発品は、提携先との調整・了解を得て、新会社のパイプラインに含めていく。
統合シナジーについては、営業面や研究開発面などのほか、事業開発でも「国内最大の消化器スペシャリティファーマと一緒に仕事をしようとの動きが、官民問わず出てくると期待している」(内藤社長)としている。