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アステラス製薬の岡村直樹代表取締役社長CEOは4月25日、決算会見に臨み、4月からスタートした新組織体制の意義について、「アジャイルで機能横断的なオペレーションをさらに強化し、プロジェクトやブランドといったアセットを迅速かつ効率的に推進する」と意気込んだ。新たな体制は、研究・開発を統合した「VALUE Creation」と、コマーシャル部門とメディカル部門の独立性を担保して統合した「VALUE Delivery」を患者軸でつなぐイメージ。岡村社長CEOは、「地域や機能をベースにするのではなく、“患者軸”に沿って、研究の初期段階から発売、ライフサイクルマネジメントに至るまでの活動を一気通貫で進める」と強調した。
◎「業界をリードするカスタマーエンゲージメントを通じて患者さんに価値を届ける」
岡村社長CEOは4月からの新体制について、「研究部門、開発部門とPrimary Focusリードの部門を統合した“VALUE Creation”を実現する部門が患者さんのために価値を作るイノベーションエンジンとしての役割を果たす」と説明した。一方、コマーシャル部門とメディカルアフェアーズ部門の統合については、それぞれの独立性を維持したうえで、顧客に対して“VALUE Delivery”を行うと述べ、「業界をリードするカスタマーエンゲージメントを通じて患者さんに価値を届けることを目指す」と強調した。また、コーポレートや製造などの各種専門機能が“VALUE Creation”と“VALUE Delivery”と緊密に連携して、患者軸に沿った活動を支援するという。
◎「本当ならクロスファンクションで一緒にやるべきこと」 なかなか機能の壁を破れなかった
岡村社長CEOは同社が価値”を創造し、届けるために、「これまで地域軸、その後は機能軸を強化してきた」と説明。一方で、機能強化を進めるなかで、「機能と機能の間にサイロができてしまい、本当だったらオーバーラップしてクロスファンクショナルなチームで一緒にやるべきこと、一緒に決断して行くべきことが、なかなか機能の壁を破れなかったという実態があると私は思っている」と課題認識を表明した。
今回の組織改編は、「価値を作る人たち(イノベーションエンジン)と、実際に作られた価値をお客様、特に患者様にお届けするカスタマーエンゲージメントを担当する人たちにわけ、しかもこれに出来事軸を加えた」と説明した。“出来事軸”としては、ブランド、技術、プロジェクトをあげ、「これを第一の管理の軸にして、アジャイルに回していこうと思っている」と説明した。この“出来事軸”は「患者軸」と呼び、ペイシェントアクセスとして共有しているとした。
研究開発とプライマリフォーカスリードの部門を統合した“VALUE Creation”については、「研究の人たち、開発の人たち、戦略を練る人たち、Primary Focusの戦略を練る人たちは、一つの組織の中にいた方が余計なコンフリクトが起きないと考えて、研究開発担当役員(CRDO)傘下の機能と定義した」と説明した。
◎25年3月期決算「売上収益、コア営業利益は、アステラス発足以来、過去最高を達成」
同社の2025年3月期(24年度)決算は売上高が前年同期比19.2%増の1兆9123億2300万円、コア営業利益は20.5%増の3924億円だった。岡村社長CEOは、「売上収益、コア営業利益は、アステラス発足以来、過去最高を達成した」と語った。いずれも通期予想を上回る結果となったと強調した。
パドセブなど5品目の重点戦略製品の売上高が前期比110%増の3364億円と倍増したことが売上を牽引。「これらの製品群は収益性が高いため、売上収益への貢献のみならず、連結全体の利益成長を大きく牽引した」と強調した。イクスタンジも米国を中心にすべてのマーケットで売上が拡大。前期比22%増の9123億円に伸びたが、「米国売上の約半分を共同販促費用として費用計上するため、売上成長のすべてが利益貢献に直結したわけではない」と説明した。
販管費についてはSMT(Sustainable Margin Transformation)について目標としていた400億円のコスト最適化を達成。販管費率は前期から3.1%ポイント改善した。デジタルおよびAI活用による全社的な業務効率化で約60億円、グローバル組織改革の進展150億円などの効率化を進めた。岡村社長CEOは、「SMTから捻出したリソースの一部を重点戦略製品やPrimary Focusといった成長投資へ振り分けることができた。SMTは将来への投資の源泉であり、25年度以降も継続して取り組む」と強調。27年度には、年額1200~1500億円の削減を期待しているとして、「引き続き各施策を推進し、規律ある費用管理を徹底する」と述べた。
◎25年度 重点戦略品の売上高40%増の4700億円に拡大で成長見込む コア営業利益に関税影響織り込む
26年3月期(25年度)通期業績は売上高前年同期比0.9%増の1兆9300億円、コア営業利益は5%増の4100億円を見込む。販管費はSMTを通じたコスト最適化により、一定の水準を維持する考え。
重点戦略製品の売上高は40%増の4700億円と大幅な伸長を見込む。パドセブは22%増の2000億円、IZERVAYは80%増の1050億円、ビロイは228%増の400億円などを売り上げる計画だ。IZERVAYは24年11月、米国で一部変更承認申請を承認できないという審査完了報告通知(CRL)を受領。この影響で、米国での新規患者シェアは24年12月に一時的に50%台前半まで落ち込んだが、その後添付文書一部変更に関する承認を取得したことでシェアが回復。今年2月時点では新規患者のシェアは60%という。岡村社長は、「25年度はまだ始まったばかりだが、3月に続き4月の成長基調の兆候が確認できており、今後の力強い成長に向けて良好なスタートが切れていると考えている」と強調。24年度は先行投資フェーズとの見方を示し、25年度は「本格的な利益貢献フェーズへの移行を見込んでいる」と期待を寄せた。
岡村社長CEOは、「23年度の重点戦略製品による利益貢献は限定的だったが、24年度から本格的な利益貢献が開始した。今後は急速な成長が見込まれ、25年度以降は重点戦略製品の売上拡大がダイレクトに利益拡大利益成長に貢献していくことを期待している」と力を込めた。
なお、25年度のコア営業利益には、潜在的な事業リスクを勘案し、関税の影響なども一定程度織り込んだ。ただ、岡村社長は「本件(関税)は非常に不確定で、かつ不確実なので影響を本当の意味で見通すのは、現時点では非常に難しい」と述べるにとどめ、具体的な数値などは明らかにしなかった。
◎タンパク質分解誘導剤「ASP3082」 Primary Focusから初のPoC達成
パイプラインについて、KRAS G12D変異体を標的とするタンパク質分解誘導剤「ASP3082」について膵腺がんの第1相臨床試験の二次/三次治療のデータに基づき、PoCを達成したことを紹介。「Primary Focusから初めてのPoCであり、極めて重要なマイルストーンを達成できたことを大変嬉しく思っている」と強調した。今後は、非小細胞肺がんの二次治療以降(単剤)について25年度前半にPoCの見極めを予定するほか、大腸がんの二次治療以降(単剤、セツキシマブ併用)も、25年度後半にPoCの見極めを予定しているとした。
【連結業績 (前期比) 25年度予想予想(前期比)】
売上高 1兆9123億2300万円(19.2%増)1兆9300億円(0.9%増)
営業利益 410億3900万円(60.8%増) 1600億円(289.9%増)
親会社帰属当期利益 507億4700万円(197.7%増) 1300億円(156.2%増)
【グローバル主要製品売上(前期実績)25年度予想、億円】
XTANDI 9123 (7505)8680
PADCEV 1641 (854)2000
IZERVAY 583 (121) 1050
VEOZAH 338 (73)500
VYLOY 122 (-) 400
XOSPATA 680 (551)750
ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ 1700 (1981)1340
プログラフ 2010 (2031)1860
【国内主要製品売上(前期実績)25年度予想、億円】
イクスタンジ 579 (567)600
パドセブ 126 (85)270
ビロイ 52 (-) 140
ゾスパタ 47 (44) 60
エベレンゾ 16 (21)―
ベタニス 246(274)240
プログラフ(グラセプター含む) 212(295)180
スーグラファミリー 264(279)240
うち、スージャヌ 105(110)―
ビーリンサイト 134(112)―
イベニティ 579(488)―
シムジア 94(100)―