APAC HTAは「公正な薬価、医療資源の配分、新薬へのアクセス向上」の重要性に合意
公開日時 2025/04/25 04:49

日本製薬工業協会(製薬協)の上野裕明会長は4月23日、アジア製薬団体連携会議(APAC)後の記者会見で、「アジア諸国が経済力を増す中で、患者さんに国内外の革新的新薬を届けることも可能になっているが、患者アクセスの点の面で共通の課題がある。そういった背景の中でUHCの議論が非常に盛り上がった」と話した。22日に東京で開催したAPACでは、「アジアにおける真のUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の実現」のセッションが設けられた。テーマの一つとなったHTAをめぐっては、公正な薬価設定、医療資源の効率的な配分、新薬へのアクセス向上につながることを意識する重要性を認識することが合意された。
◎aUHCセッション HTAの活用や民間医療保険の役割、基金設立をテーマに議論
aUHCセッションで議論されたテーマのうち、HTAの活用では各国における導入状況の差異や共通課題を各国間で共有。出席した各国の製薬団体からは、HTAが薬価抑制に用いられることが課題になっているとの声があがった。このため、「公正な薬価設定、医療資源の効率的な配分、新薬へのアクセス向上につながることを意識する重要性」について認識する重要性が合意された。
民間医療保険の役割では「高齢化、新薬・医療技術の進歩に伴う医療費高騰への対応策としての活用が考えられる。一方、公平な医療アクセス確保に向けた民間医療保険の役割と責任を明確にすることが重要」であることに合意された。また、革新的医薬品へのアクセスにおける財政的支援を目的とした基金設立の可能性と課題についてもテーマにあげ、「基金設立の目的と意義を明確にする」必要性を指摘。基金の運営体制、資金調達方法、対象となる医薬品・医療技術の選定基準について台湾の事例を参考に、他のアジア諸国 における基金設立の可能性と課題について議論を深めた。
aUHCセッションは、これまで日本を中心としたタスクフォースとして設置されていたが、24年にエキスパートワーキンググループ(EWG)となり、今回からセッションとして各国製薬団体がメンバーとして加わった。
このほかのセッションでは、創薬研究の新モダリティとして注目されるマイクロバイオーム研究について創薬応用への可能性を考えていく中で、「従来とは異なる視点での規制策定やガイドライン作成のアプローチ方法を考える」との合意に至った。E-labelingセッションでは、APAC地域でのE-labeling実装を「より多くの製品、市場で加速させる」とした上で、国際標準規格であるFHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)の導入を検討し、「FHIR e-labelingとデジタルヘルスプラットフォームとの相互運用性を確保し、活用していくため議論を進めていく」と結論付けた。
APACは「革新的な医薬品をアジアの人々に速やかに届ける」というミッション実現に向けて、国際製薬団体連合(IFPMA)加盟のアジアの研究開発型製薬団体、規制当局、アカデミアが参加する国際会議。ベトナムの製薬団体「ファーマ・グループ・ベトナム」が新規メンバーとなることも了承された。